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10.混乱

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気が重い夜がもうすぐやって来るーー。

ナナの言う通り逃げるべきか?悩んだ。

けど……。

あと2日の我慢だ。
何とかポンコツ殿下と向き合あおう。

契約書にもちろんサインなんてしない。

あ、でもサインして死んだらどうなるんだろう?

(公爵家に有利な内容に変更して、死ぬのもありなのかな?)

ふとそんな思いがよぎるも、やっぱりあの王家と一切の繋がりをもちたくない気持ちが強くなる。

(ふぅ……)

そろそろ殿下が来る時間だったが、侍従のダニエルが迎えに来た。

「……オルタナ公爵令嬢、殿下がお呼びです」

本当にダニエルが来ると碌なことがない……。

「……今日はこちらから出向くのね、分かったわ」

ダニエルに促され、久しぶりに部屋から出るのを許された。

私の後ろには護衛騎士も配置されており、まるで逃げることなんて出来ないからな、と言われているようだった。

しばらく歩くと、殿下の寝室に案内された。

(……自分の寝室でなさりたい、ということ?)

それならそれで構わないが、単に面倒だった。

「……聖女様もいらしております」

……聖女様?

ますます分からないが、何か意図があるのだろう。

「マリオット殿下、オルタナ公爵令嬢をお連れしました」

私は久しぶりに殿下の寝室を訪れた。

そこには、殿下の腕にぶら下がるようにして寄り添う聖女の姿もあった。

「……ご用件は何でしょう?」

聖女は何故かかなり際どいナイトウェアを身にまとっていた。

「マリオット様ぁ~。この人、相変わらず愛想の一つもないよぉ~」

ケラケラ笑う聖女様。
こんな品位の欠片もない女に馬鹿にされるのは屈辱だが今は耐えるしかない。

「仕方ない。何せ婚約破棄された身だからな……」

「でもぉ~。側妃になれるのにぃ~」

私はまたしても、見えないように拳を握りしめながら顔は冷静さを保っていた。

「そうだな、でもミアラのせっかくの好意を不意にしたいらしいからな」

「でも、こんな貧相で、根暗でブスとマリオットは寝ないといけないんでしょう?かわいそう……」

貧相で、根暗でブスって……!

(たかが平民に……!)

無事脱出したら間違いなくこの二人には倍……いやいや1万倍返ししなくては……!

「だから、今からこの女を仕方ないから抱かないといけない」

「本当に最悪ぅ~。こんな女を抱かないといけないなんて。マリオット様がぁ~かわいそう」

……ま、また言う?かわいそう?

「……殿下、それで何のご用でしょうか?聖女様もいらして……。私はお邪魔かと……」

「相変わらず面白味がないやつだな……。ミアラの願いだから仕方なしに呼んだまでだ。ミアラがどうしても君を抱いているところを実際見たいと……」

「……は、はぁ?」
私は想像の斜め上をいく展開に素っ頓狂な声をあげた。

「……もちろん、拒否できないよ?」

何でこうなるのか本当に意味が分からない……。

「だってぇ~。いくらこんな女を愛してないってマリオット様が言っても信じられなくて~。おまけに毎晩抱いてるでしょう?だから直接見たら愛してないかどうか分かるかなって~」

なんでこうなる?
私は後退りしながら、二人を睨みつける。

「せ~のっ!」

気持では逃げているつもりだった。

けれど……。

私は、ポンコツ殿下と聖女様に無理やりベッドに突き倒された。
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