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4 初恋と薬草
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私の初恋ーー。
その相手は、ロデムと名乗っていた。
私の師匠の一番弟子だ。
そのロデムが眼の前にいた。
偽名なことは分かっていた。
女性よりも柔らかなんじゃないかと思うブラウンヘアーに、意志の強そうな真っ黒の瞳が私を見つめている。
もう恥ずかしくて、恥ずかしくて……!
「お、おい!フィー!」
カイトがボーッとする私の肩を叩いた。
「ご、ごめん……。久しぶりだから、何だか恥ずかしくて……」
まさか初恋の相手だからとも言えないし……。
「大丈夫だ、ジョセフィーヌ。師匠も会いたがっていたよ。それに、今回カイトライトから話をもらって驚いた」
ですよね?
婚約者候補ですもんね。
おまけに、そんなに出来も良くない妹弟子の私……。
「婚約者を探してると聞いた。私でもその……大丈夫か?」
私の知るロデムは、いつもどことなく悲しげで、寂しそうで……。身分は高そうなのに、いつも謙虚で優しくて。
(女性なら惚れないわけないよね?)
「えーっと、あーっと。その……。よろしくお願いいたします?」
私がそう告げると、ロデムは安堵の笑みを浮かべた。
(あとでロデムの釣書、見直さなきゃだ……)
カイトからもらった用紙に詳細の記載があるはずだ。
そして、なぜかカイトは始終不機嫌そうな表情を浮かべて私たちを見つめていた。
「カイト?」
「……フィー、もしかしたらその『ロデム』が、以前話をしていた森の人物なのか?」
「……う、うん、そうなんだ。もうびっくりでしょう?だから、驚いちゃって……」
森で出会ったのは、異世界から来たと言う男性(後に薬草の師匠!)で、倒れていたのをお世話したのがきっかけで薬草のことを教えてもらうようになった。
師匠は元の世界では薬草の世界レベルの研究者だったんだって。
今いるこの世界の薬草にも興味津々らしく、毎日森の中の小屋(師匠曰く研究所)で研究している。
私は正直、薬草なんて興味がなかった。
伯爵家を継ぐ必要があるし、研究なんて女性には夢のまた夢ーー。
そう思っていたら、師匠からこう言われた。
『知識と経験は財産さ。将来役に立つかも知れないだろ?』
今までは伯爵領で薬草を売買したり、製品化したりしたことはなかったけど、師匠曰く製品化に向いた薬草がたくさんあるらしい。
領地経営にプラスになるならーーという邪な思いと、あの屋敷以外に自分の居場所が欲しかった私はいつしか時間を見つけては森に通うようになった。
そんなある日、師匠が見知らぬ男性と親しそうに話していた。
見た目の服装こそ簡素だったけど、洗練された所作を見れば高貴な身分なことは一目瞭然だった。
その青年はロデムと名乗った。
隣国から来たらしい。
何でも元々師匠が異世界から転移した先は隣国で、第一発見者がロデムだったのだそう。
隣国で師匠が処方した安眠薬が大ヒットし、利権関係で危険な立場に置かれるようになり、我が伯爵領に流れ着いたという。
(しかし、師匠。ある日いきなり姿をくらますなんて……。そりゃ、ロデムも必死に探す訳だ)
おまけに師匠は金のなる木。
ロデムは元々商会で働いていて、師匠のお世話をしながら、薬草を学び、その安眠薬の販売も任されていたらしい。
いきなり姿を消した師匠を探し回ってようやく見つけたため、しばらく小屋に住込ことになったらしい。
その日を境に3人での奇妙な交流が始まった。
私は師匠の身の回りのお世話をし、時間があると3人で森に出掛けては薬草を探し、研究をする。研究のための機材は商会が調達したり、師匠が自前で作ったりしながら何とかやり繰りする。
ロデムは商会の仕事をしつつ、師匠を監視しながら、師匠と新製品の開発を行っていた。
私はあまり関わらないほうが良いかな?と思いながらも、耳には彼らの会話が飛び込んでくる。
(安眠薬の次は、毛髪促進剤かあ……)
新製品は飲むタイプではなく、複数の薬草を濃縮したエキスを液体にし毛根に塗布するのだそう。
髪の毛が気になる方のモニターテストも始まっていた。
(薬草……何だか想像以上に面白いかも知れない……!)
ロデムの後を追えではないが、我が伯爵家にも何かヒット商品が作れないか?と考えるようになった。
そんな矢先に、私は王立学園に入学することになる。
もちろん、王立学園では薬草の勉強や研究などは行えないし、秘密裏にするしかなかった。
私自身、学園に入学しても従来通り師匠やロデムと交流できると思っていた。
「ロデム、ここ伯爵領なんだよね。で、隣国の商会の商品開発や、研究もしてるよね?」
「家賃でも払えと?」
「まさか!でも、伯爵家にも何か旨味が欲しくて……」
私は最大限の微笑みでお願いをしてみた。
「伯爵領で製品化するなら、絶対に顔のシミ取りの化粧品がいい!」
冗談半分で師匠にお願いした。
けれどーー。
王立学園と領地経営の勉強は思った以上にハードで、次第に足が遠のいてしまった。
とある日。
そんな私の様子を見に、ロデムが学園の門まで会いに来てくれたのだ。
門の外でロデムを見かけた私は、ロデムを私が乗っていた馬車に促した。
「わざわざ来てくれたの?ありがとう」
「なぁ、ジョセフィーヌ?最近、師匠が寂しがってるよ」
「……だよね。ごめんなさい。私も行きたいんだけど……」
と、学園のこと、領地経営のこと、そして扱いに困っている婚約者のことなどを包み隠さずに話した。
「……そうか。ジョセフィーヌはジョセフィーヌでたくさんのものを抱えているんだな。今まで気がつかなくて済まない」
ロデムのせいじゃないのにーー。
申し訳なさそうな表情をするロデムに、私は彼の誠実さと真摯さを感じた。
(ロデムが婚約者だったら良かったのに……)
婚約者であるエリオット様と比較するのは卑怯なのかも知れないけど、そのあまりの違いに絶望的な未来しか描けなかった。
「そうだ。お陰様で毛髪促進剤は完全して来月から発売する。本当にありがとう」
「ううん。私は何もしてないからーー。頑張ったのは、師匠とロデムだよ?」
そう言えば、ロデムの年齢も、住んでる場所も、どんな家族なのかも聞いたことがなかった。
いや、違う。
ロデムは、自分のことを全てさらけ出すことを恐れているように見えた、
だから、私はあえて聞かなかった。
単なる兄弟子のロデム。
それだけで十分だったし、何よりも私と対等に接してくれたから。肩書や家柄なんて人柄の前では虫けらにしかならないことは婚約者で身に沁みていた。
……だから私は、ロデムと言う人物が大好きだった。
それは、私の初恋だった。
その相手は、ロデムと名乗っていた。
私の師匠の一番弟子だ。
そのロデムが眼の前にいた。
偽名なことは分かっていた。
女性よりも柔らかなんじゃないかと思うブラウンヘアーに、意志の強そうな真っ黒の瞳が私を見つめている。
もう恥ずかしくて、恥ずかしくて……!
「お、おい!フィー!」
カイトがボーッとする私の肩を叩いた。
「ご、ごめん……。久しぶりだから、何だか恥ずかしくて……」
まさか初恋の相手だからとも言えないし……。
「大丈夫だ、ジョセフィーヌ。師匠も会いたがっていたよ。それに、今回カイトライトから話をもらって驚いた」
ですよね?
婚約者候補ですもんね。
おまけに、そんなに出来も良くない妹弟子の私……。
「婚約者を探してると聞いた。私でもその……大丈夫か?」
私の知るロデムは、いつもどことなく悲しげで、寂しそうで……。身分は高そうなのに、いつも謙虚で優しくて。
(女性なら惚れないわけないよね?)
「えーっと、あーっと。その……。よろしくお願いいたします?」
私がそう告げると、ロデムは安堵の笑みを浮かべた。
(あとでロデムの釣書、見直さなきゃだ……)
カイトからもらった用紙に詳細の記載があるはずだ。
そして、なぜかカイトは始終不機嫌そうな表情を浮かべて私たちを見つめていた。
「カイト?」
「……フィー、もしかしたらその『ロデム』が、以前話をしていた森の人物なのか?」
「……う、うん、そうなんだ。もうびっくりでしょう?だから、驚いちゃって……」
森で出会ったのは、異世界から来たと言う男性(後に薬草の師匠!)で、倒れていたのをお世話したのがきっかけで薬草のことを教えてもらうようになった。
師匠は元の世界では薬草の世界レベルの研究者だったんだって。
今いるこの世界の薬草にも興味津々らしく、毎日森の中の小屋(師匠曰く研究所)で研究している。
私は正直、薬草なんて興味がなかった。
伯爵家を継ぐ必要があるし、研究なんて女性には夢のまた夢ーー。
そう思っていたら、師匠からこう言われた。
『知識と経験は財産さ。将来役に立つかも知れないだろ?』
今までは伯爵領で薬草を売買したり、製品化したりしたことはなかったけど、師匠曰く製品化に向いた薬草がたくさんあるらしい。
領地経営にプラスになるならーーという邪な思いと、あの屋敷以外に自分の居場所が欲しかった私はいつしか時間を見つけては森に通うようになった。
そんなある日、師匠が見知らぬ男性と親しそうに話していた。
見た目の服装こそ簡素だったけど、洗練された所作を見れば高貴な身分なことは一目瞭然だった。
その青年はロデムと名乗った。
隣国から来たらしい。
何でも元々師匠が異世界から転移した先は隣国で、第一発見者がロデムだったのだそう。
隣国で師匠が処方した安眠薬が大ヒットし、利権関係で危険な立場に置かれるようになり、我が伯爵領に流れ着いたという。
(しかし、師匠。ある日いきなり姿をくらますなんて……。そりゃ、ロデムも必死に探す訳だ)
おまけに師匠は金のなる木。
ロデムは元々商会で働いていて、師匠のお世話をしながら、薬草を学び、その安眠薬の販売も任されていたらしい。
いきなり姿を消した師匠を探し回ってようやく見つけたため、しばらく小屋に住込ことになったらしい。
その日を境に3人での奇妙な交流が始まった。
私は師匠の身の回りのお世話をし、時間があると3人で森に出掛けては薬草を探し、研究をする。研究のための機材は商会が調達したり、師匠が自前で作ったりしながら何とかやり繰りする。
ロデムは商会の仕事をしつつ、師匠を監視しながら、師匠と新製品の開発を行っていた。
私はあまり関わらないほうが良いかな?と思いながらも、耳には彼らの会話が飛び込んでくる。
(安眠薬の次は、毛髪促進剤かあ……)
新製品は飲むタイプではなく、複数の薬草を濃縮したエキスを液体にし毛根に塗布するのだそう。
髪の毛が気になる方のモニターテストも始まっていた。
(薬草……何だか想像以上に面白いかも知れない……!)
ロデムの後を追えではないが、我が伯爵家にも何かヒット商品が作れないか?と考えるようになった。
そんな矢先に、私は王立学園に入学することになる。
もちろん、王立学園では薬草の勉強や研究などは行えないし、秘密裏にするしかなかった。
私自身、学園に入学しても従来通り師匠やロデムと交流できると思っていた。
「ロデム、ここ伯爵領なんだよね。で、隣国の商会の商品開発や、研究もしてるよね?」
「家賃でも払えと?」
「まさか!でも、伯爵家にも何か旨味が欲しくて……」
私は最大限の微笑みでお願いをしてみた。
「伯爵領で製品化するなら、絶対に顔のシミ取りの化粧品がいい!」
冗談半分で師匠にお願いした。
けれどーー。
王立学園と領地経営の勉強は思った以上にハードで、次第に足が遠のいてしまった。
とある日。
そんな私の様子を見に、ロデムが学園の門まで会いに来てくれたのだ。
門の外でロデムを見かけた私は、ロデムを私が乗っていた馬車に促した。
「わざわざ来てくれたの?ありがとう」
「なぁ、ジョセフィーヌ?最近、師匠が寂しがってるよ」
「……だよね。ごめんなさい。私も行きたいんだけど……」
と、学園のこと、領地経営のこと、そして扱いに困っている婚約者のことなどを包み隠さずに話した。
「……そうか。ジョセフィーヌはジョセフィーヌでたくさんのものを抱えているんだな。今まで気がつかなくて済まない」
ロデムのせいじゃないのにーー。
申し訳なさそうな表情をするロデムに、私は彼の誠実さと真摯さを感じた。
(ロデムが婚約者だったら良かったのに……)
婚約者であるエリオット様と比較するのは卑怯なのかも知れないけど、そのあまりの違いに絶望的な未来しか描けなかった。
「そうだ。お陰様で毛髪促進剤は完全して来月から発売する。本当にありがとう」
「ううん。私は何もしてないからーー。頑張ったのは、師匠とロデムだよ?」
そう言えば、ロデムの年齢も、住んでる場所も、どんな家族なのかも聞いたことがなかった。
いや、違う。
ロデムは、自分のことを全てさらけ出すことを恐れているように見えた、
だから、私はあえて聞かなかった。
単なる兄弟子のロデム。
それだけで十分だったし、何よりも私と対等に接してくれたから。肩書や家柄なんて人柄の前では虫けらにしかならないことは婚約者で身に沁みていた。
……だから私は、ロデムと言う人物が大好きだった。
それは、私の初恋だった。
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