とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯～拾い人したら溺愛された件

結婚式

結婚式は、サザーランド公爵家領にある厳かなチャペルで執り行なわれる。

本来ならば本宅で支度をしたかったのだが、時間の関係もあり、私たちはレイの住む別荘で結婚式の支度をしていた。

「お嬢様がこんなに立派になられて……。レイ様も素晴らしい方ですし、ミシェリー様も天国で安心されてますね」

朝からマリアとダニエル、それにエマが涙腺緩みまくりで、私ももらい涙しながら準備に取り掛かっていた。

そうこいしていると、マリアがようやく私の髪を結いあげた。

「お化粧も、髪のセットも終わったので、ドレスですよっ！」

エマに手を引かれ、衣装のセットに取り掛かる。

「さ、ちゃっちゃと着替えちゃいましょう！」

ドレスは、お母様が結婚式に着たドレスの生地をリメイクすることになり、マダム・フルールで仕立ててもらった。

マーメイドラインのシルクのウェディングドレスは、文句なしに美しい。

「……とても良くお似合いです！」

マリアはウェディングドレスを着た私がしきりにお母様にそっくりだと驚きながら宝飾品の準備に余念がない。

「もうそろそろ、チャペルに向かう時間になりますっ！」

エマがしきりに時間を気にしながら使用人達に支度をせかす。

マリアが式終了までお腹が空くと困るから、と食べやすいフィンガーフードを作ってくれたおかげで、支度の合間にちょこちょこ小腹を満たすことが出来た。

「マリア、ありがとう。助かった。本当に、お母様が亡くなってからはマリアに助けられてばかり。これからもよろしくね」

マリアは大粒の涙を堪えながら頷いてくれた。

マリアならきっと良い乳母にもなってくれるはず。

そうこうしていると、チャペルに向かう時間になる。

新しい人生。
新しい生活。

今思えば、イザベラに虐げられたおかげで今がある。
皮肉なものだ。

(人はやっぱり、逆境こそ強くなるチャンス？)

出来たらあまり苦しみたくはないけれど、その先に明るい未来があるようなら試してみる価値は大いにある。

(レイ、本当に私、幸せだよ？)

ウェディングドレスを引き摺らないよう持ち上げる。

私はチャペルに導く馬車に乗り込んだ。