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お墓参り
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あの逮捕劇からは、本当に人生が一変した。
まずは、本宅に戻ることになった。
レイからは、公爵家に……と何度も誘われたが、せっかく使用人棟から脱出できたし、本宅で自分の周りの人物を固めておきたいのもあった。
そのため、週末はレイの住む公爵家に遊びに行く形で決着が着いた。
結婚式の日取りも、私が成人した一ヶ月後になり、もちろん準備もスタート。
レイのお母様とも相談しながら、楽しく進めていた。
別宅は、従来通りマリアとダニエルに管理してもらいながら、時々本宅で新入りの使用人に指導をしてもらっていた。
また、公爵家からも優秀な執事、使用人が派遣され、あの逮捕劇から半年後には見違えるくらいになっていた。
サザーランド商会とミスボス商会も共同事業が増えて、オスカーも大忙し。あの主演女優とは上手くいってるようで良かった。
その主演女優プリシラちゃんの親友で使用人仲間だったエマは、本宅では大出世してメイドの教育係に抜擢され、お給料が上がり、大変感謝された。
あの孤児院からも続々と優秀な人材が商会と本宅に集まって来ている。本当に喜ばしいことだった。
そして、私はというと……。
今日は、レイと共にお母様のお墓参りに来ていた。
お母様が大好きだったピンクのガーベラの花束を供えた。
この場所は、侯爵家でも特にお母様が好きだった場所が見える小高い丘の上にあった。
『……お母様、私はようやく本来の侯爵家を取り戻すことが出来ました。お母様の無念も晴らすことができましたよ?私……実は明日、結婚するんです。私にはもったいない位素敵な男性なんですよ?お母様にも紹介したかったし、花嫁姿を見せたかったです……』
お母様のお墓を前に、心の会話をしていたら、涙が止まらなくなっていた。
『結婚する人は、サザーランド公爵家の方なんですよ。これから二人で、フォンデンベルグ領を盛り上げていきますね。だから、安心して下さいね……』
きっとお母様のことだ。あのイザベラ母娘のことも調べていたのだろう。
お母様は、お父様があそこまで酷いとは思っていなかった。
(お母様は、きっと心のどこかでお父様を思っていたのかも知れないなぁ……)
今となっては確かめようがないが、ふとそんな思いがよぎった。
「リリー、話は出来た?」
私は涙を拭いながら、頷いた。
「お母様もきっとレイの顔を見られて、喜んでると思う」
「そうだと嬉しいな」
レイは私の手を取ると、手の甲にそっとキスをした。
「……では、帰ろうか、花嫁様?」
私たちの未来への足取りはとても軽かった。
まずは、本宅に戻ることになった。
レイからは、公爵家に……と何度も誘われたが、せっかく使用人棟から脱出できたし、本宅で自分の周りの人物を固めておきたいのもあった。
そのため、週末はレイの住む公爵家に遊びに行く形で決着が着いた。
結婚式の日取りも、私が成人した一ヶ月後になり、もちろん準備もスタート。
レイのお母様とも相談しながら、楽しく進めていた。
別宅は、従来通りマリアとダニエルに管理してもらいながら、時々本宅で新入りの使用人に指導をしてもらっていた。
また、公爵家からも優秀な執事、使用人が派遣され、あの逮捕劇から半年後には見違えるくらいになっていた。
サザーランド商会とミスボス商会も共同事業が増えて、オスカーも大忙し。あの主演女優とは上手くいってるようで良かった。
その主演女優プリシラちゃんの親友で使用人仲間だったエマは、本宅では大出世してメイドの教育係に抜擢され、お給料が上がり、大変感謝された。
あの孤児院からも続々と優秀な人材が商会と本宅に集まって来ている。本当に喜ばしいことだった。
そして、私はというと……。
今日は、レイと共にお母様のお墓参りに来ていた。
お母様が大好きだったピンクのガーベラの花束を供えた。
この場所は、侯爵家でも特にお母様が好きだった場所が見える小高い丘の上にあった。
『……お母様、私はようやく本来の侯爵家を取り戻すことが出来ました。お母様の無念も晴らすことができましたよ?私……実は明日、結婚するんです。私にはもったいない位素敵な男性なんですよ?お母様にも紹介したかったし、花嫁姿を見せたかったです……』
お母様のお墓を前に、心の会話をしていたら、涙が止まらなくなっていた。
『結婚する人は、サザーランド公爵家の方なんですよ。これから二人で、フォンデンベルグ領を盛り上げていきますね。だから、安心して下さいね……』
きっとお母様のことだ。あのイザベラ母娘のことも調べていたのだろう。
お母様は、お父様があそこまで酷いとは思っていなかった。
(お母様は、きっと心のどこかでお父様を思っていたのかも知れないなぁ……)
今となっては確かめようがないが、ふとそんな思いがよぎった。
「リリー、話は出来た?」
私は涙を拭いながら、頷いた。
「お母様もきっとレイの顔を見られて、喜んでると思う」
「そうだと嬉しいな」
レイは私の手を取ると、手の甲にそっとキスをした。
「……では、帰ろうか、花嫁様?」
私たちの未来への足取りはとても軽かった。
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