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顔合わせ

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「お待たせ致しました。はじめて。次期侯爵のリリアーヌ・フォンデンベルクです。」

 応接室までレイにエスコート?してもらい、私は久しぶりに貴族令嬢らしいカーテーシーをしてみた。

 オスカーと、彼が連れてきた男女が待ち構えていた。

「ミスボス、久しぶり!」

 「オスカー、いろいろありがとう!本当に助かってるわよ!」

 実際、オスカーはリリアーヌの想像以上の働きをしてくれている。

 孤児院で近々開催される大衆劇の配役、稽古、舞台装置なども準備万端で、宣伝活動も余念がない。孤児院マルシェには出展したい店舗がかなりあるようで、出展料を設けることにしたらしい。


 衣装や小物もレイの商会経由で手配してあり、舞台女優はじめ劇内で使用していく。


 キャストも孤児院を中心に集め、演劇指導も楽しくやっているみたいで何より。

「オスカー、早速紹介してもらえる?」

 私はオスカーの隣の男女に視線を移した。

「こっちの銀髪の男がヒュース。元王家の影だった。諜報活動や、護衛に長けている。孤児院出身じゃないが、長い付き合いがある。能力はお墨付きだ。あと、出自は、隣国の王家らしい」


 り、隣国の王家で、影ってどんな出自?

 と私がパチクリしていると、ヒュースが頭を下げた。


 容姿は失礼ながら、本当に平均的で、だからこそ目立つことなく任務が出来たのかな?と想像してしまう。

 「……ヒュースだ。よろしく。あなたのことはオスカーからだいたい話を聞いた。私で良ければ力になりたい。」

 レイとはまた違った寡黙なタイプなヒュースさん。

 確かに、闇に溶け込めそう?な感じかな。レイは馬車でいろいろ話をしたのだろう。特に何も気になるところはなさそうだった。

「こちらこそ、よろしくお願いしますね。ヒュースさん。あの、つかぬことをお伺いしますが、なぜ隣国から?影って辞めらるものなのですか?」

「ああ。私は隣国の平民と国王との間に生まれた、いわゆる側室の子供だ。王宮では、嫌がらせの日々で、表向きは死んだことになっているらしい。私はとある貴族にひっそりと預けられた。その貴族が王宮の影を担う一族だったこともあり、自然と影になったが、とある任務で怪我を負い、記憶を失ったため影を引退してこっちに来たという訳だ。追われたりしている訳ではないが、訳ありではある。影の仕事なら記憶はないが、体が覚えているため問題ない。」

 「分かったわ。ありがとう。ここでは私自身が訳ありだし。みんな訳ありでしょ?あ、いっそのこと訳あり商会にでもすれば良かったかなあ?それはさておき。だから訳ありはお互い様だし、気にしないで?」

 そもそも、私自身が元から全うな人間を集めたいと思っていないし、訳ありさんばんざーい!だから当然といえば当然。

「で、ミスボス。ヒュースの次がこちら。財務と経理担当で、相当優秀なオリビア嬢だ」

 年は20才は過ぎているかな?ブラウンのサラサラヘアーに、エメラルドグリーンの愛らしい瞳。清潔感溢れる清楚な美女だ。見る人にとっては、少しクールな印象を与えるが、優秀そうな印象だ。

 オスカーに優秀と言われ、恥ずかしそうにしている。

 「……ミスボスとお呼びしても?」

「もちろん。優秀なオリビアさんとご一緒出来て嬉しいです。よろしくお願いいたしますね!」

 オリビア嬢からの申し出に私は快諾した。
 
「オリビア嬢は、ヒュースと同じ隣国出身で、もともと隣国の商会で財務担当だった人だ。商会の不正を告発したら逆に追い出されてしまったそうで、今回誘わせてもらったんだ。タイミングが良かった」
 
「そんなことがあったんですね!オリビアさんはすごい行動力の持ち主です!」

 優秀がゆえに、正義感が強いがゆえにご縁があったことに感謝だ。

 女性がメンバーになるのも心強い。

 「で、リリアーヌ。商会設立の登録のことなんだが、今の話からすると二人をメンバーに加えたとしても登録するのはやはり問題がありそうだ。そこで提案なんだが、リリアーヌが正式に侯爵になるまでの間は、オリバーと俺の商会で問題なさそうな奴を登録しておくのが無難かなと思っているんだか、どうだろう?」

 「え?レイはそれで大丈夫?」

 「ああ、問題ない。あととりあえず一人いれば良いからな。」

 「それなら、お言葉に甘えてもいい?」

 レイは頷いた。

 「設立日は、予定どおりの日程で大丈夫か?確か来週の12月3日」

 「うん、大丈夫。ありがとう。来週から劇もマルシェも始まるし、一気に動き始めるね」

 このままスムーズに商会の登録が出来るかと思っていたら、とんでもない邪魔が入るなんてその時は知るよしもなかった。

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