とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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別宅

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今日は月に数度の休みの日。私はもちろん朝から別宅に来ていた。

 別宅にはドレスも宝石も、信用できる侍女と侍従が一人ずつだけどいる。私の隠れ家。本当にお母様、ありがとう!

「お嬢様、本日のドレスはいかがされますか?」

 今日はダンスレッスンと、語学レッスンがある。

 休みあけでやつれている私の顔をエステしてくれているのは、もともと母付き侍女だったマリア。私の第二の母的存在である。

「あー、癒される~。ありがとう、マリア。私はここがあるから何とか頑張れる!」

「それにしても、学院まで手を回すとは。さすがなのか何なのか……。旦那様も本当に頼りにならないですわ…………」

 私のデコルテを触る手に力が入る。毎回愚痴にも付き合ってくれるマリア。頭が上がらない。

「もうお父様にも期待してないから大丈夫。もともと婿養子だし、今はあの人のいいなりだし。きっと私のことなんて、忘れてるのよ。だから、私はとにかく勝手に嫁がされる前に何とかしたいだけ」

 そう。目下は学院への入学ではなく、継母が決めるであろう人生が終わってしまう結婚を回避すること。

 デビューまであと3年。爵位継承前もあと3年。この3年にすべてがかかってる!
 だから、それまでに何とか自分で人脈を作るしかない。

「学院にもしばらく通えないから、人脈作りをどうしようかなーと思って。マリア、何か考えない?」

「そうですねぇ。家庭教師の先生経由でご紹介頂くのはいかがでしょうか?」

 家庭教師の先生は、皆そこそこの貴族の出であるが、どこから足がつくかわからないため出来たら避けたかった。

「分かった。ありがとう。もう少し考えてみるね」
 マリアがフェイシャルエステの仕上げにマスクをしてくれた。

「戻りました」

 マスク姿で横たわっていると、侍従のダニエルが扉越しに声をかけてきた。今日は書き上げた原稿を出版社に届けてもらったのだ。

 ちなみに、マリアとダニエルは夫婦で、別宅で住み込で働いてくれている。

「ありがとう。今は用事はないから下がって」

 もうじきダンスレッスンが始まる。
 至福の時間はもう終わり。

「マリア、今日はあのスカイブルーのドレスにするわ」

 私は悩んだ末に最終的に今日の空模様のようなドレスを選んだ。
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