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閑話1~超放出系と超吸収系の受難(リンセイ)

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 私の名はリンセイ。
 
 既に産まれてから2万年以上生きている。
 
 南の国の第二王子であり、戦神でもある。
 
 そして、初恋こじらせ歴も2万年に迫っている実はイタイ男、だ。
 
 「主!そんな唐変木じゃアーレイ様と全く進展しませんよ!」
 
 主である私よりも色恋沙汰には滅法強く、何といつの間にかアーレイの侍女であるミルラと恋仲らしい侍従のダンは、せっかく東の国にいるからには主の恋を何とかしたいらしく、ひたすらうるさい,,うるさいのだ。
 
 かく言うダンとミルラがいつからそんな仲なのかはごく最近らしいが、もう私が学院にいたころには結構いい感じ、だったらしく初恋こじらせすぎてアーレイの前では単なる無口で無愛想な私はこの侍従であり見た目も仕草も女性受けこの上ないダンには色恋沙汰に関しては全く頭が上がらないのだ。
 
 なんせダンは見た目も美男子で、腕っぷしも強く、女性のエスコートも上手いため、昔から女性が途切れたことがない。

 (何て羨ましい男だ!)
 
 「それで私の前で、デートが楽しみなど言うな!」
 
 なんと主より先に彼女とデートに行きたいから半日時間をくれ、と言う。

 即、却下してやった。

  「だから言ってるじゃないですか!行動と言葉が伴わないと落ちるものも落ちませんよ、主。なんせ戦場と違って死にはしませんから。とっとと行動して来て下さい!俺もミルラとデートしたいんですっ!」
 
 行動と言われても。

 (アーレイに嫌われたら体は死ななくても、心が死ぬんだ!)
 
 今は東の国にいるわけだし、絶好のチャンスなのは明白だ。これが戦場だったら見逃すわけにはいかない。一気に仕掛けるだろう。
 
 しかし、アーレイを前にするとそうもいかなかった。自分の中でその存在が特別すぎて毎回脳内暴走してしまうのだ。

 (でも、アーレイとデートしたいなあ。アーレイ、なんて可愛いんだ!可憐で清楚で美しい!まさに女神!あー、大好きだー!好きすぎて言葉にならないぃぃ!どんな姿のアーレイも大好きだ!)
 
 アーレイのことを考えるだけで、脳内がアーレイ祭りになってしまう。

  「----し、主?大丈夫ですか?完全に壊れたヤバイ奴ですよ?もたもたしてるとあの二人に先越されますよ?」
 
 またしてもダンが痛いところをつく。
 
 ---そうだった。
 
 ため息どころの騒ぎではない。
 
 先日お告げがでて、東の国に来てから三人で密約を交わしたばかり。
 
 いつ死ぬのかも分からないこともあり、アーレイの同意があれば誰が先にそういう関係を結んでも文句は言わないことになっていた。

 「今だって、ウエイ様とアーレイ様とで天界樹に行かれてますよ?ウエイ様のことですからね。何があってもおかしくないのでは?だから、とっとと行動して下さい!ほら、タイミングよくミルラが教えてくれましたよ?天界樹から戻り次第、主と南の国に行きたいと。これはいろいろ計画して何とか初恋を実らせましょう!主がまとまらないと、ミルラとデート出来ないじゃないですか。ほら、頑張って。みんなでデートしましょう」
 
 アーレイの侍女であるミルラから、アーレイが天界樹から戻り次第、南の国に行きたいから連れて行って欲しいと連絡があった、らしい。
 
 しかし、どう頑張るのだ?
 
 恋愛指南書でも読むべきか?
 
 いきなりデート?
 
 脳内でシュミレーションしてみる。

 (あの可愛い口が動くだけで心臓が痛い……。一緒に歩いたら彼女を見すぎて穴が空いてしまうかも……。アーレイ!絶対デートの時も特別可愛い!女神!隣にいるだけで私は幸せなはず!)
 
 自分のためにめかしこんだアーレイと会ったら、間違いなく悶絶して鼻血を出す自信がある。
 
 私はふいに鼻に手をやり、鼻血が出てないか思わず確認してしまった。

  「鼻血なんて出てませんよ!主!早く既成事実ですよ!二人っきりになって押し倒すだけですから。戦場より楽勝です!」
 
 何を言ってるんだ?この男はと言いたいところだったが、あまりに図星すぎて泣けてくる。
 
 また現実逃避モードのリンセイに、ダンは容赦なく切り込んでくる。
 
 「今回アーレイ様は、おばあ様に会いに行きたいそうですよ?二人で行かれたらいいじゃないですか。ついでに、お告げの付帯条件でしたっけ?あれも二人で行けばいいんですよ!」
 
 それならばミルラも来るし、言うことなしなんだとか。

 (付帯条件は、戦神のみが代々持つことを許される霊剣を探し、主従契約を結べ、か)
 
 古くからの言い伝えによれば、霊剣は先代の戦神も持っているが、南の国にはもう一本の剣があるらしい。
 
 どのみちそのうち探しにいく必要があったのだ。今回の件もあり一石二鳥であった。
 
 そして、自分がアーレイに積極的になれないのにはもうひとつの全く別の理由があった。
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