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33話
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「よっしゃぁ!」
「これはいけるな!」
「後1勝!」
マッチの勝利と同時に、3人が叫び出す。
初戦を落としたものの、その後2連勝。ニシの飛躍とタイガのゾーン突入により、一気にまくり返した。初戦を落としたからと言って、3人の雰囲気が悪くなったわけでは無かったが、ニシの活躍で明らかに流れが変わった。
「向こうは追い込まれたから、かなり慎重に来ると思う」
マッチ間の短い時間で、反省と次の作戦の指針を決めることは、慣れないとなかなか難しい。さらに、チームの中が悪かったり、雰囲気が悪いと、余計な部分で時間を取ってしまったりもするからなおさらだ。
しかし、この3人に関してはなんの問題も無い。
「今の状態なら、突っ込んでも勝てると思うぞ。かなり引き気味になってるだろうから」
ほぼほぼ、3人の思考は同じで、意見が食い違うということは少ない。それをパターンの無さと捉えれば、悪く聞こえてしまうかもしれない。しかし、フォージのような一瞬の判断の遅さや、行動の食い違いが命取りになるゲームでは、例え間違った判断・行動でも早ければ早いだけ、揃っていれば揃っているだけいいのだ。
間違いは、結果が出てから分かるものだが、指示と別の動きをしてしまったら、それが合っていたのか、間違っていたのかすら判断できないからだ。
「さっきのタイガ見たら余計だろうな」
「弱気になっている時が、一番押し込みやすい」
「じゃあ、それで行こうか」
「おっけ」「了解」
全員の意思確認ができたところで、4マッチ目がスタートした。
タイガを先頭に3人が一列になって前に出ていく。
「ここでいったん広がろう。僕は少し前に出る」
中央境界線より、少し手前に着くと、ここからはタイガが一人で前に出ると言う。
「やばい!」
あちら側も、一人前線に出てきていたようで、前に出たタイガと出合い頭でぶつかった。お互いが意識していないところでの接敵だったが、タイガの方が少し早く反応できたため、キルを取れたようだ。
「大丈夫か!?」
テツが、すぐさまタイガをカバーできる位置まで寄ってくる。3人が離れて、すぐの出来事だったため、敵からの射線はまだない。
「なんとか大丈夫。一人やった!」
「その段階で、接敵するってことは敵も好戦的に来るぞ!」
こちらは、一直線にここまで来た。それとぶつかるということは、相手チームも最速でここまで来たことになる。一人で先に偵察に来たのか、それとも全員で来たかは、今のところ視認できていないから分からない。
「どうする? 少し下がるか?」
追い詰められたことによって、向こうが負けを恐れずに、攻め立ててくるのであれば、それが一番の策ではある。1キルとったことで、ポイント有利はこちらが上だ。このままエリアポイントを取られたとしても、よくて五分五分。そのまま前に出てきてくれれば、こちらが有利になる。
問題は向こうが今の戦闘でどう出てくるかだが。
「今のうちに一気に潰そう!」
「了解」
タイガの判断は前に出ることだった。その声を聞き、ニシとテツも、そのまま前線をあげる。このままいけば、3人のうち誰かが敵を見つかる。こちら側が、先にダウンを取られなければ、このまま押し切れる。
「俺の方2人!」
銃声が聞こえると同時に、テツのアーマーは削りきられ、HPが残り僅かになった。だが、すぐに反応することが出来たテツは、すぐにしゃがんだため、目の前の起伏で、敵からの射線を切れたようだ。
「ナイス、テツ! よくダウンしなかった!」
敵のいる方向が分かったため、すぐさまニシが牽制射撃する。そのうちに、テツは回復をして、タイガは、キルを取れる位置まで近づく。
「ごめん、俺のとこに一人!」
位置が分かっていなかった最後の一人に、ニシがダウンさせられる。しかし、その報告と同時にタイガが脇から周ってテツを撃った一人をキル。銃をリロードするために、一度遮蔽物に隠れる。しかし、タイガが今いる位置はちょうど敵二人に挟まれるような位置取りだ。
そこで、テツがヒールの最中であったが、途中で止めてタイガを狙っていた一人をキルする。
「やった! 後一人!」
「いや、最初のがリスポーンしてる!」
ニシがリスポーン時間まで、管理していたようでかなり有益な情報が入った。
「今俺がいるところ、正面からだと射線切れてるから、カバーできる」
「おっけ、やってくるね」
相手からは、タイガとテツの位置は把握されている。一方こちらはリスポーンしたての敵の位置は把握できていない。そうなれば、こちらの方が不利になる。そのため、目の前にいる敵を倒して、もう一度人数有利を取れれば勝ちきれる。
「タイガ、そっち二人いるぞ! 合流してる」
「大丈夫! 右側圧力かけて!」
それ聞き、テツは相手が隠れている遮蔽物の横を撃ち続ける。タイガが左から周り込んでいるため、これで後ろを取られることは無い。正面の撃ち合いなら、タイガは絶対に負けないし、そのまま最後の一人が来ても、アーマー差があるしテツもいるので、こっちのアドバンテージの方が高い。
「おい! タイガの前のやつやったぞ」
1つ前のマッチが脳裏に映ったのか、タイガが来たのが見えて敵が後ろに下がった所、テツの援護射撃の射線に入ってきたのだ。
「ナイス! ここで決め切るよ!」
そのまま、速度を緩めることなく敵の方に向かうタイガを、追うようにしてテツもリロードしながら前に出る。二人の距離はそこそこ離れているものの、タイガが撃ち合いになり、足が止まれば、十分に追いつく位置取りではある。
さっき、テツが視認したところから大きく離れていなければ、タイガがもうすぐ対面するはずだが、まだそれが無いとなると、かなり後ろに下がって、味方のリスポーン待ちの可能性もでてきた
「テツ! 左前方にいるよ!」
「おう!」
どうやら、タイガから逃げてきた敵が、テツの前に出てきたようだ。
1対1の状況で、相手が先に撃ちだしてきた。それに大きく被弾することは無かったが、テツも1マガではやりきれず、お互いリロードに入る。こちらの方が、ワンテンポ撃ち切るのが遅かったため、二人の間に遮蔽がなにも無い現状だと、テツがリロードを仕切る前にダウンされられてしまう。
VICTORY
「勝った!」「勝ったぞ!」「ナイス!」
タイガが何とか射線を通すことができ、勝利を収めた。圧倒的不利な状態から3人だけで勝ちきった。見ている誰もが、きっと負けると思っていただろう。大会開始前から話題になっていたが、いくらなんでも3人では勝てるわけがないと。それにも関わらず、人数不利をものともせずに、1マッチ以外は押し切る形での勝利だった。
「これで、オフラインが決定だ!」
興奮気味に言うニシの声は、少し遠い。どうやら勝ったと同時に立ち上がり、ヘッドホンが外れて、床に落ちたようだ。
「そっか、そういえばこれに勝てばオフラインだったっけ?」
「タイガ、お前忘れてたのかよ」
「いやー、ヴィクターさんに負い目を感じさせないようにと必死だったから」
3人が目の前の勝利に、集中していたとはいえ、恐らく皆そのことが頭の片隅にあっただろう。勿論ここまで来れたのは、この4人だったからで間違いは無いが、3人にとってヴィクターの存在は特段大きかった。
そして、ヴィクターが本当に3人のことを想ってくれていることもよく理解している。そのため、ここで負けでもしたら、ヴィクターが自分を責めることも分かっていた。しかし、結果的に、そんなことにはならずにすんだ。総合的にに言えば、大きく劣っていたが、それを信念で上回ったのだ。
「まあ、それも悪い事ではないけど」
安堵したのか、気を張り過ぎて疲れたのか、ニシとは違いテツの声には張りが無く聞こえる。いつも、ハキハキ喋り、元気のいいテツにしては珍しが、かなりプレッシャーもあったころだろうから、気が抜けているだけだろう。
「そうだよ。連絡しなきゃ」
「勝ちましたでいいのかな?」
「向こうが今どんな状況だか、全く分からないからな」
本当であれば、通話を繋げて報告をしたいが、そういうわけにもいかない。今病院にいるかもしれないし、お母さんの状態がどんな感じかも分からない。もしかしたら、ゲームのことなんて考える余裕すらないかもしれない。
「トーナメント表でも送っておけば」
ちょっと、味を出したがるニシからの提案だ
「そうだね。そうするか」
「これはいけるな!」
「後1勝!」
マッチの勝利と同時に、3人が叫び出す。
初戦を落としたものの、その後2連勝。ニシの飛躍とタイガのゾーン突入により、一気にまくり返した。初戦を落としたからと言って、3人の雰囲気が悪くなったわけでは無かったが、ニシの活躍で明らかに流れが変わった。
「向こうは追い込まれたから、かなり慎重に来ると思う」
マッチ間の短い時間で、反省と次の作戦の指針を決めることは、慣れないとなかなか難しい。さらに、チームの中が悪かったり、雰囲気が悪いと、余計な部分で時間を取ってしまったりもするからなおさらだ。
しかし、この3人に関してはなんの問題も無い。
「今の状態なら、突っ込んでも勝てると思うぞ。かなり引き気味になってるだろうから」
ほぼほぼ、3人の思考は同じで、意見が食い違うということは少ない。それをパターンの無さと捉えれば、悪く聞こえてしまうかもしれない。しかし、フォージのような一瞬の判断の遅さや、行動の食い違いが命取りになるゲームでは、例え間違った判断・行動でも早ければ早いだけ、揃っていれば揃っているだけいいのだ。
間違いは、結果が出てから分かるものだが、指示と別の動きをしてしまったら、それが合っていたのか、間違っていたのかすら判断できないからだ。
「さっきのタイガ見たら余計だろうな」
「弱気になっている時が、一番押し込みやすい」
「じゃあ、それで行こうか」
「おっけ」「了解」
全員の意思確認ができたところで、4マッチ目がスタートした。
タイガを先頭に3人が一列になって前に出ていく。
「ここでいったん広がろう。僕は少し前に出る」
中央境界線より、少し手前に着くと、ここからはタイガが一人で前に出ると言う。
「やばい!」
あちら側も、一人前線に出てきていたようで、前に出たタイガと出合い頭でぶつかった。お互いが意識していないところでの接敵だったが、タイガの方が少し早く反応できたため、キルを取れたようだ。
「大丈夫か!?」
テツが、すぐさまタイガをカバーできる位置まで寄ってくる。3人が離れて、すぐの出来事だったため、敵からの射線はまだない。
「なんとか大丈夫。一人やった!」
「その段階で、接敵するってことは敵も好戦的に来るぞ!」
こちらは、一直線にここまで来た。それとぶつかるということは、相手チームも最速でここまで来たことになる。一人で先に偵察に来たのか、それとも全員で来たかは、今のところ視認できていないから分からない。
「どうする? 少し下がるか?」
追い詰められたことによって、向こうが負けを恐れずに、攻め立ててくるのであれば、それが一番の策ではある。1キルとったことで、ポイント有利はこちらが上だ。このままエリアポイントを取られたとしても、よくて五分五分。そのまま前に出てきてくれれば、こちらが有利になる。
問題は向こうが今の戦闘でどう出てくるかだが。
「今のうちに一気に潰そう!」
「了解」
タイガの判断は前に出ることだった。その声を聞き、ニシとテツも、そのまま前線をあげる。このままいけば、3人のうち誰かが敵を見つかる。こちら側が、先にダウンを取られなければ、このまま押し切れる。
「俺の方2人!」
銃声が聞こえると同時に、テツのアーマーは削りきられ、HPが残り僅かになった。だが、すぐに反応することが出来たテツは、すぐにしゃがんだため、目の前の起伏で、敵からの射線を切れたようだ。
「ナイス、テツ! よくダウンしなかった!」
敵のいる方向が分かったため、すぐさまニシが牽制射撃する。そのうちに、テツは回復をして、タイガは、キルを取れる位置まで近づく。
「ごめん、俺のとこに一人!」
位置が分かっていなかった最後の一人に、ニシがダウンさせられる。しかし、その報告と同時にタイガが脇から周ってテツを撃った一人をキル。銃をリロードするために、一度遮蔽物に隠れる。しかし、タイガが今いる位置はちょうど敵二人に挟まれるような位置取りだ。
そこで、テツがヒールの最中であったが、途中で止めてタイガを狙っていた一人をキルする。
「やった! 後一人!」
「いや、最初のがリスポーンしてる!」
ニシがリスポーン時間まで、管理していたようでかなり有益な情報が入った。
「今俺がいるところ、正面からだと射線切れてるから、カバーできる」
「おっけ、やってくるね」
相手からは、タイガとテツの位置は把握されている。一方こちらはリスポーンしたての敵の位置は把握できていない。そうなれば、こちらの方が不利になる。そのため、目の前にいる敵を倒して、もう一度人数有利を取れれば勝ちきれる。
「タイガ、そっち二人いるぞ! 合流してる」
「大丈夫! 右側圧力かけて!」
それ聞き、テツは相手が隠れている遮蔽物の横を撃ち続ける。タイガが左から周り込んでいるため、これで後ろを取られることは無い。正面の撃ち合いなら、タイガは絶対に負けないし、そのまま最後の一人が来ても、アーマー差があるしテツもいるので、こっちのアドバンテージの方が高い。
「おい! タイガの前のやつやったぞ」
1つ前のマッチが脳裏に映ったのか、タイガが来たのが見えて敵が後ろに下がった所、テツの援護射撃の射線に入ってきたのだ。
「ナイス! ここで決め切るよ!」
そのまま、速度を緩めることなく敵の方に向かうタイガを、追うようにしてテツもリロードしながら前に出る。二人の距離はそこそこ離れているものの、タイガが撃ち合いになり、足が止まれば、十分に追いつく位置取りではある。
さっき、テツが視認したところから大きく離れていなければ、タイガがもうすぐ対面するはずだが、まだそれが無いとなると、かなり後ろに下がって、味方のリスポーン待ちの可能性もでてきた
「テツ! 左前方にいるよ!」
「おう!」
どうやら、タイガから逃げてきた敵が、テツの前に出てきたようだ。
1対1の状況で、相手が先に撃ちだしてきた。それに大きく被弾することは無かったが、テツも1マガではやりきれず、お互いリロードに入る。こちらの方が、ワンテンポ撃ち切るのが遅かったため、二人の間に遮蔽がなにも無い現状だと、テツがリロードを仕切る前にダウンされられてしまう。
VICTORY
「勝った!」「勝ったぞ!」「ナイス!」
タイガが何とか射線を通すことができ、勝利を収めた。圧倒的不利な状態から3人だけで勝ちきった。見ている誰もが、きっと負けると思っていただろう。大会開始前から話題になっていたが、いくらなんでも3人では勝てるわけがないと。それにも関わらず、人数不利をものともせずに、1マッチ以外は押し切る形での勝利だった。
「これで、オフラインが決定だ!」
興奮気味に言うニシの声は、少し遠い。どうやら勝ったと同時に立ち上がり、ヘッドホンが外れて、床に落ちたようだ。
「そっか、そういえばこれに勝てばオフラインだったっけ?」
「タイガ、お前忘れてたのかよ」
「いやー、ヴィクターさんに負い目を感じさせないようにと必死だったから」
3人が目の前の勝利に、集中していたとはいえ、恐らく皆そのことが頭の片隅にあっただろう。勿論ここまで来れたのは、この4人だったからで間違いは無いが、3人にとってヴィクターの存在は特段大きかった。
そして、ヴィクターが本当に3人のことを想ってくれていることもよく理解している。そのため、ここで負けでもしたら、ヴィクターが自分を責めることも分かっていた。しかし、結果的に、そんなことにはならずにすんだ。総合的にに言えば、大きく劣っていたが、それを信念で上回ったのだ。
「まあ、それも悪い事ではないけど」
安堵したのか、気を張り過ぎて疲れたのか、ニシとは違いテツの声には張りが無く聞こえる。いつも、ハキハキ喋り、元気のいいテツにしては珍しが、かなりプレッシャーもあったころだろうから、気が抜けているだけだろう。
「そうだよ。連絡しなきゃ」
「勝ちましたでいいのかな?」
「向こうが今どんな状況だか、全く分からないからな」
本当であれば、通話を繋げて報告をしたいが、そういうわけにもいかない。今病院にいるかもしれないし、お母さんの状態がどんな感じかも分からない。もしかしたら、ゲームのことなんて考える余裕すらないかもしれない。
「トーナメント表でも送っておけば」
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