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19話
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「おい、そろそろ時間だぞ」
「よっしゃあああ!!!」
「よし!」
「やりますか」
ついにこの時が来た。タイガも、少し休まったようで、さっきまでの妙なふわふわ感は無くなっている。
俺たちは4人とも配信を付けた。すると、まだフォージのコアなファンしかいないにも関わらず、多くの人が見に来てくれている。
大会に出てくる人たちが、どれほどの実力で、どれほどの戦略を練ってきているかは分からない。
だからこそ、不用意に行けば簡単に実力差をひっくり返される。
そこで俺が考えた作戦は。
「みんな準備はいいか?」
「おっけー!」
「ちゃんと手筈通りにね」
「ポイントの振り分け間違いないように」
試合開始と同時に、俺を先頭にテツ、ニシ、タイガと一列に並んだ。慣れ親しんだマップも全く別物に見えるくらいに、緊張感が漂う。ただ、それはさっきまでのマイナスなものでは無い。
フォージは、縦横1キロくらいの、マップになっていて、両チームが両端からリスポーンする仕組みになっている。その後キルされたら、各々の、前線から2番目にいるプレイヤーより後ろなら、どこからでも復活できる仕組みになっている。
所々にある、遮蔽物や起伏を上手く使って、先に相手チームを全滅させた方が勝利となる。
俺が盾職を選んで、一番最初に選んだ武器はプレイヤーがすっぽり隠れられるほどの、大盾だった。これは、序盤ではポイント的に俺一人だけでは買えないため、3人からポイントを分けてもらって、買ったものだ。
そのため、3人にはアタッカを選んでもらっておきながら、一番安価なピストル武器しか持っていない。本来であれば、アタッカーは、一番火力の高い重火器を持ち、相手をキルするのが仕事だ。扱える武器の数も一番多く、いわばフォージの花形になっている。
そのサポートの為に、盾職と移動職がある。
盾職は主に、味方の遮蔽物になったり、高いポイントで味方にシールドを付与したりとある。その中でも一番の仕事は、前線を上げることと、維持することだ。
フォージでは、上げた前線とそこを維持した分、ポイントが増える仕組みになっている。そのポイントは、相手の陣地に寄れば寄るだけ高くなる。
俺が持っている盾は、試合開始時すぐでは壊せ武器は持てない。そのため俺たちをキルするには側面に回らないといけないな。
それが俺たちの作戦だ。正面からでは倒せないと分かった敵が、側面に回りこんだ時に、タイガ、テツ、ニシが同時に撃つ。それでキルを重ね、ポイント差で圧倒していく作戦だ。
もちろん、上手くいかなければ、次の作戦があるが、予選なら十分に通用すると思っている。
だが、勝つまでは何があるか、わからない。
「そろそろ敵が見えてくるぞ!」
マップのちょうど真ん中差し迫った。相手もマッチ開始と同時に、前に進んでいれば、もう対面してもおかしくないはずだ。俺はただ、まっすぐ前に進めばいいだけだが、後ろの3人は見えた左右どちらかに、見えた敵に瞬時に反応して、射撃しなければいけない。今が集中力のピークだろう。
この作戦の要は、先にキルを取って、人数有利、ポイント有利を作り出すところかが、スタートなのだから。
次の瞬間、正面向かって、左側から敵の姿が見えた。俺たちがちょうど起伏が激しい場所にいたからか、相手からは気づかれていないようだ。
俺が認識したと同時に、その敵はダウンした。3人のうち2人がヘッドショットを決めたようで、頭、頭、胴で3発で仕留め切った。
フォージは、ポイントで自身にアーマーを付与することも出来るため、初期HPは低めに設定されている。さらに、ヘッドショットのダメージも高いため、精密なAIMが求められる。
とりあえず、一段階目の作戦が成功した。
すると、俺が構えている盾に数発の銃弾が命中した。味方がキルされたことで、俺たちの位置がある程度、把握できた敵が反撃をしてきた。しかし、俺達へのダメージは0だ。
すかさず3人は、俺の盾から顔をだし、正面の敵をダウンさせる。一人目にキルした敵によるポイントで、タイガが持っている武器がピストルから、アサルト銃に変わったため、さっきよりも容易に二人目を倒した。
もともと、設定しておいたポイントの振り分け通りに自動で、武器や、スキルを更新してくれる。
そのため、いかに、自分たちの想定通りの展開にゲーム持っていけるか、などの事前準備も大事になるゲームだ。
最初にとったアドバンテージを活かしきり、俺たちは予選の1回目を、危なげなく突破した。
「よっっっしゃあ! 勝ったぜ!」
一番最初に声を上げたのはテツだった。初めは緊張しているみたいなことを言っていたが、安定したAIMだった。やっぱり、どんな状況でも一定の能力を発揮できるのは、砲丸投げで、場数を踏んできた者の実力だな。
「いやー、良かったね。とりあえずホッとしたよ」
タイガは、ゲーム中じゃないと相変わらずだが、あの反応速度と的確なAIM力は、国内トップクラスだろう。
「作戦が通り完璧でしたね。とりあえず一勝できてよかったです。皆いい感じに緊張も解けたでしょう」
「なに、自分だけ冷静ぶってんだよ。一人目の時、お前だけ頭外してたのバレてんぞ」
「倒せたんだからいいでしょ。あなたこそ、少し列からはみ出てましたよ!」
普段とは逆の光景で、テツがニシを責めている。ニシも十分すぎる仕事はしたが、テツとタイガが想像以上だった。
一方俺は。
「3人とも本当に最高の出来だったよ。俺は盾持ってあるいてただけで、試合が終わったんだから。何もしてないのと一緒だね」
自分で、この作戦を考えたものの、本当に何もやっていない自分を思い出すと笑いがこぼれる。
「いやいや、あんな作戦普通なら思いつきませんよ」
「そうそう、しかも、全部筋書き通りに進んだんですから、凄すぎます」
「あんな、目立たない、活躍も出来ないポジション普通はやりたがらないですからね。ましては、ヴィクターさんはめっちゃ強いのに」
3人が納得して、信頼してくれてよかった。
フォージのランクマッチの現状と競技シーンの違いを予想して、作戦をたてられたのは、間違いなく一回経験しているからだ。
それに、本気で勝つ気でいるなら誰かが、自分を犠牲にする立ち回りをしなければならない。それが今は俺だっていうだけの話だ。作戦が変われば、役割も変わる。
「よっしゃあああ!!!」
「よし!」
「やりますか」
ついにこの時が来た。タイガも、少し休まったようで、さっきまでの妙なふわふわ感は無くなっている。
俺たちは4人とも配信を付けた。すると、まだフォージのコアなファンしかいないにも関わらず、多くの人が見に来てくれている。
大会に出てくる人たちが、どれほどの実力で、どれほどの戦略を練ってきているかは分からない。
だからこそ、不用意に行けば簡単に実力差をひっくり返される。
そこで俺が考えた作戦は。
「みんな準備はいいか?」
「おっけー!」
「ちゃんと手筈通りにね」
「ポイントの振り分け間違いないように」
試合開始と同時に、俺を先頭にテツ、ニシ、タイガと一列に並んだ。慣れ親しんだマップも全く別物に見えるくらいに、緊張感が漂う。ただ、それはさっきまでのマイナスなものでは無い。
フォージは、縦横1キロくらいの、マップになっていて、両チームが両端からリスポーンする仕組みになっている。その後キルされたら、各々の、前線から2番目にいるプレイヤーより後ろなら、どこからでも復活できる仕組みになっている。
所々にある、遮蔽物や起伏を上手く使って、先に相手チームを全滅させた方が勝利となる。
俺が盾職を選んで、一番最初に選んだ武器はプレイヤーがすっぽり隠れられるほどの、大盾だった。これは、序盤ではポイント的に俺一人だけでは買えないため、3人からポイントを分けてもらって、買ったものだ。
そのため、3人にはアタッカを選んでもらっておきながら、一番安価なピストル武器しか持っていない。本来であれば、アタッカーは、一番火力の高い重火器を持ち、相手をキルするのが仕事だ。扱える武器の数も一番多く、いわばフォージの花形になっている。
そのサポートの為に、盾職と移動職がある。
盾職は主に、味方の遮蔽物になったり、高いポイントで味方にシールドを付与したりとある。その中でも一番の仕事は、前線を上げることと、維持することだ。
フォージでは、上げた前線とそこを維持した分、ポイントが増える仕組みになっている。そのポイントは、相手の陣地に寄れば寄るだけ高くなる。
俺が持っている盾は、試合開始時すぐでは壊せ武器は持てない。そのため俺たちをキルするには側面に回らないといけないな。
それが俺たちの作戦だ。正面からでは倒せないと分かった敵が、側面に回りこんだ時に、タイガ、テツ、ニシが同時に撃つ。それでキルを重ね、ポイント差で圧倒していく作戦だ。
もちろん、上手くいかなければ、次の作戦があるが、予選なら十分に通用すると思っている。
だが、勝つまでは何があるか、わからない。
「そろそろ敵が見えてくるぞ!」
マップのちょうど真ん中差し迫った。相手もマッチ開始と同時に、前に進んでいれば、もう対面してもおかしくないはずだ。俺はただ、まっすぐ前に進めばいいだけだが、後ろの3人は見えた左右どちらかに、見えた敵に瞬時に反応して、射撃しなければいけない。今が集中力のピークだろう。
この作戦の要は、先にキルを取って、人数有利、ポイント有利を作り出すところかが、スタートなのだから。
次の瞬間、正面向かって、左側から敵の姿が見えた。俺たちがちょうど起伏が激しい場所にいたからか、相手からは気づかれていないようだ。
俺が認識したと同時に、その敵はダウンした。3人のうち2人がヘッドショットを決めたようで、頭、頭、胴で3発で仕留め切った。
フォージは、ポイントで自身にアーマーを付与することも出来るため、初期HPは低めに設定されている。さらに、ヘッドショットのダメージも高いため、精密なAIMが求められる。
とりあえず、一段階目の作戦が成功した。
すると、俺が構えている盾に数発の銃弾が命中した。味方がキルされたことで、俺たちの位置がある程度、把握できた敵が反撃をしてきた。しかし、俺達へのダメージは0だ。
すかさず3人は、俺の盾から顔をだし、正面の敵をダウンさせる。一人目にキルした敵によるポイントで、タイガが持っている武器がピストルから、アサルト銃に変わったため、さっきよりも容易に二人目を倒した。
もともと、設定しておいたポイントの振り分け通りに自動で、武器や、スキルを更新してくれる。
そのため、いかに、自分たちの想定通りの展開にゲーム持っていけるか、などの事前準備も大事になるゲームだ。
最初にとったアドバンテージを活かしきり、俺たちは予選の1回目を、危なげなく突破した。
「よっっっしゃあ! 勝ったぜ!」
一番最初に声を上げたのはテツだった。初めは緊張しているみたいなことを言っていたが、安定したAIMだった。やっぱり、どんな状況でも一定の能力を発揮できるのは、砲丸投げで、場数を踏んできた者の実力だな。
「いやー、良かったね。とりあえずホッとしたよ」
タイガは、ゲーム中じゃないと相変わらずだが、あの反応速度と的確なAIM力は、国内トップクラスだろう。
「作戦が通り完璧でしたね。とりあえず一勝できてよかったです。皆いい感じに緊張も解けたでしょう」
「なに、自分だけ冷静ぶってんだよ。一人目の時、お前だけ頭外してたのバレてんぞ」
「倒せたんだからいいでしょ。あなたこそ、少し列からはみ出てましたよ!」
普段とは逆の光景で、テツがニシを責めている。ニシも十分すぎる仕事はしたが、テツとタイガが想像以上だった。
一方俺は。
「3人とも本当に最高の出来だったよ。俺は盾持ってあるいてただけで、試合が終わったんだから。何もしてないのと一緒だね」
自分で、この作戦を考えたものの、本当に何もやっていない自分を思い出すと笑いがこぼれる。
「いやいや、あんな作戦普通なら思いつきませんよ」
「そうそう、しかも、全部筋書き通りに進んだんですから、凄すぎます」
「あんな、目立たない、活躍も出来ないポジション普通はやりたがらないですからね。ましては、ヴィクターさんはめっちゃ強いのに」
3人が納得して、信頼してくれてよかった。
フォージのランクマッチの現状と競技シーンの違いを予想して、作戦をたてられたのは、間違いなく一回経験しているからだ。
それに、本気で勝つ気でいるなら誰かが、自分を犠牲にする立ち回りをしなければならない。それが今は俺だっていうだけの話だ。作戦が変われば、役割も変わる。
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