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10話

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「いやいやいや! ヴィクターさん強すぎでしょ!!!」

「まるで、ずっと一緒に、やってきたかのような安定感」

「ほら言ったでしょ!? ヴィクターさんは最強なんだって!」

 テツ君、ニシ君、タイガ君がそれぞれ思い思いの感想を口にする。

 今の所、4戦4勝。始めてからちょうど2時間が経過したところだ。
 事実俺もボロ勝ちしていて驚いている。
 フォージのランクマッチは、2本先取でマッチ勝利となる。1試合がパーティーメンバー同時にリスポーン待ちになるまで続くので、泥試合が続くと、1試合の時間も長くなる。
 しかし、俺たちは、ほぼストレート勝ちで来た。

 フォージは世界同時リリースされたため、ランクマッチも世界ランクとほぼ同義になる。その、決して低いレベルではないはずの場所で、連勝したことが嬉しくてたまらない。
 それに、やはりパーティーゲーを、フルパでやるのは楽しい。自分の意思、状況報告に返事がかってきて、それに応えてもらえること、味方の意思に応えられることが、何よりも嬉しい。

 これだよ。これ。この達成感と勝利の余韻が楽しくて、嬉しくて、気持ちよかったんだ。

 そして、なによりも、ゲームを辞めてから一度も感じたことのない、自己肯定感。
 だんだんと、あの時のことを思い出してきた。
 俺は努力して、強い俺がなによりも好きだったんだ。負ければ悔しい。その悔しさを糧により強くなる。強くなるための、その過程がなによりも楽しかった。

 だからこそ、反動が大きかったのだが。

「やっぱり楽しいねゲームは!」

 俺は余韻の末、ようやく口を開くことができた。

「ヴィクターさん‥‥‥。本当にありがとうございます。本当に‥‥‥一緒にゲーム出来てよかったです」

 突然タイガ君が、泣き出してしまった。悲しくて泣いている訳ではないのはすぐに分かる。だけど、そんなに感謝されるほど、のことはしていないはずだ。
「一緒にゲームをしよ」と言われたから、やっただけで、そこに嫌嫌とかの思いは一切ない。

「こいつ、ずっとヴィクターさんに憧れたらしいですよ。なんか恩があるとか、なんとか」

「ちょっと俺飲み物取ってきます」

 タイガ君はそう言って、離席していった。
 ずっとマッチ終了して、すぐに次。とやってきたので、つかの間の休息だ。一人でやっているよりも、夢中でやっていたため、喉の渇きすら忘れていた。
 デスクの横に置いてある、露結しきったコーヒーをやっと口にした。

「ヴィクターさん。今日は本当に、ありがとうございました。急に自分の過去を知ってる人からの連絡は、さぞ驚いたと思います。」

 ニシ君から、改めてと感謝された。またもや、変な気分になる。
 もともと、落ち着いた喋り方をする人だが、ゲーム中は流石に声を、はる場面があった。しかし、今はそれともまた少し違う、神妙な声だった。

「いや、普通にこえーよな。俺たちもちゃんと順序を追ったほうがいいって言ったのに、あいつ我慢出来ず先走りやがって」

 あ、一応俺と彼らを引き合わせる前に、話してはいたのか。
 そういえば、初めの方にも、テツ君がそんなこと言ってたっけ?

「二人は彼と結構長いんですか?」

 フォージから知り合った仲なら、4人のはずだ。だけど、3人ってことはそれ以前からというのは予想できるが、どうなのだろうか?
 会話を聞いている限り、慣れ親しんでいるようにも見えるが。

「いえ、そんなでもないですよ。」

「そうっすね。半年くらいっすかね? 後タメでいいですよ。俺たち3人もこんな感じなんで」

 意外と最近だったことに驚いた。それじゃあ、学校の同級生とかではないんだろうな。

「あ、じゃあ遠慮無く。思ったよりと短いんだね。なんか、感じとして、もうちょっと長いのかと」

「まあ? 俺たちからしたら可愛い弟みたいな感じだし? だけど、俺たちを引っ張っているのは間違いなくタイガですけどね」

 タイガ君は結構若いと思ってたけど、やっぱりそうか。

「俺たち二人とも、タイガに救って貰ったのみたいなところあるんですよ。だから、そのタイガを救ったヴィクターさんは、さらに恩人なんです」

「だから、さっきからそんなに改まった感じなのか。もうちょっとフランクに来てもらった方が、こっちも気まずくないんだけど‥」

 そう言うと、すかさずテツ君が。

「あ、マジ?」

「おい! お前いきなり変わりすぎだろ!」

 やはりこの二人も随分と仲が良さそうだ。まるで漫才を見ているようだ。


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