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1章 暗い朝

10話

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「っう、オェ」

 テレポート酔いと言うやつだろうか、そんなものあるのか分からないが、なんか気持ち悪い

「ねぇ、あれやばくない?」

 アティに言われ、指された方向を見る

「能力者か?」

 森の中で木の棒や石ころをふわふわと動かしている念力使いの男が居た

「あれ敵の機関が無差別に増やしたやつだよ、やっちゃう?」

 アティはやった方がいいと催促してくるが、俺はあいにく自分から人を傷つけるのは好まない。
 それに、どう見ても能力を使いこなしていないのにいきなり狩られるのも可哀想だろう

「んん~、話しかけてみるわ」

 俺はその男に近づき、声をかけてみる

「あのー、何してるんですか?」

 声をかけた瞬間、男は跳ねながら驚く

「うわっ!なんですかあなた!」
「“なんですか”はこっちのセリフですよ、あなた能力者ですか?」
「い、一体なんのことかさっぱり…」

 とぼけようとしているがバレバレだ。
 今にも逃げそうにしているし、それに慌てすぎだ

「大丈夫ですよ、俺も能力者なんで。あっちの人もそうですよ。」

 俺は自分の能力と、後ろにアティがいることを伝える

「はあ、能力は俺だけのものじゃなかったのか…この力で、億万長者になろうと思ったのに!」

(念力で億万長者?)

「あなたに能力を与えたの、どんな人か分かります?」
「与えた?別に俺は勝手に気づいたらできるようになってただけだぞ。」

(自覚しないものなのね…もうちょっと探れる?)
(わかった。)

「あなたに能力を与えた機関は、俺らにとっては敵なんですよ…だから、良かったらこっち側に来ませんか?」

 俺はこの男と後々敵になるより、今こっちに引き込んだ方がいいのではと考えた。

(ソラ、この男までこっち側にする気?上の許可が降りるとも限んないじゃない。)
(敵になるよりかはって考えた結果だ、仕方ないだろ。)

 男は少し考え、口を開く

「もし…そっち側に行けば、俺にも可愛い担当の子が付くのか?」
「えっと、まあ…たぶん」
「じゃあ、まだよく能力のことも、敵とか味方とかもよくわかんねえし、そっちに行くぜ!」

 話が早い、というより恐らくこの男馬鹿なんだろう。なんか仕草がアホっぽい

「じゃあ上に送るから、その後は適当に何とかしてね」

 アティがその男を光で包むと、男は消えた

「はあ、なんでまためんどくさいことすんのよ。」
「ごめんごめん、なんか今でも後でも、敵になるのが、なんか嫌でさ。」
「お人好しなのはいいけど、もし不意打ちで私が殺されたりしたらどうすんのよ?次から作戦は私に伝える事。」

 アティに軽く釘を刺されたが、山を歩いていくといずれそんな事も忘れてしまった

「うーん、なんか登ったはいいけど別に景色も達成感も大したことなかったわね」
「もう昼だし、暑いな。」

 頂上まで登ったが、アティの言う通り本当にしょぼい、高くないのに道がガタガタで疲れたし、お腹も空いた

「お昼にしよっか」
「あるの?」

 アティは見た感じ手ぶらだ
 弁当のようなものは見受けられないが、なんかゴソゴソしている

「家に置いてきたのよ」
「は?」

 アティはポケットから五百円玉を取り出し見せつけてくる

「コンビニでなんか買うつもりか?降りてもしばらくはコンビニないぞ。」
「違うわよ、よく見てて」

 アティはコインを手のひらに乗せる
 すると、気づいたらその手に、レジャーシートと弁当がある

「<同価値交換アポーツ>があればこんなの余裕よ。ほら、食べよ?」

 なんて便利な能力なんだ、五百円玉がご飯とシートになってしかも、また戻せるとは。硬貨は今頃キッチンに転がっているのだろうか。

「美味い。」
「ならよかった。弁当を作ってみたいがためにわざわざ来てくれてありがとうね。」

 美味しいものを食べれて、タクシー代まで消化できるなんて、最高のイベントだ。

「ごちそうさま」
「それじゃ帰ろっか」

 弁当を食べたあとは、テレポートで家まで飛んだから、あっという間だった

「普段からこれ使えば良くないか?」
「これ、結構疲れるのよ。やるのはすぐ休憩できる時だけ。アポーツは私じゃなくて、物体に負荷がかかるから疲れないんだけどね」

 勝手にアポーツの説明までしてくれた。
 アティは一体どれだけ能力の引き出しがあるんだろうか

「明日は十ノ神 依加とのかみ よりかを迎えに行くから、しっかり休もう。ふぅ、最近の休日は疲れるなぁ」



その日の夜

 端末に通知が来た

<HC 四ノ宮 穂 しのみや ひな>

「なあ、HCってなに?」
「ヘルプコールのこと?」

(ヘルプコール?だとしたら早く行かないと)

「そのヘルプコール、ちょっと遠いから誰かに任せたら?」

 確かに、ヒナさんはチームに所属してるから、このHCは色んな人が見ただろう。でも、もし誰も行かなかったら?もし、みんなで居る上でのHCだったらと考えてしまう

「行こう。テレポート使えるか?」
「えー、これでテレポート使ったら帰りは担いで貰うことになるし、一緒に戦えないけど大丈夫?」
「何とかするよ。」

 俺はアティにテレポートしてもらった。
 出たとこすぐにアティは座り、周りに不可視化バリアを貼り、休む

「じゃあ、行ってくるよ」
「がんばれー」

 腑抜けた声の応援を受け、俺はコールがあった場所へと走る
 すると、甲高い金切り音が聞こえる。恐らく人同士の戦いだろう

「大丈夫ですか?!」

 俺は目を疑った、ヒナさんと十ノ神 依加が戦っている

「十ノ神さん、何してるんですか?!」
「あら、ごめんなさい。私、能力の都合上仕方なくって。」
「あんた、なんでこの女のこと知ってんのよ!」
 
 忙しい、2人の女性から声を浴びる

「その人は、そのうちこっちの仲間になる。許容しにくいかもしれないけど、もう決まった」
「あら、私もお仲間に入れてもらえるのね。でも、あなたも殺すわ。私の能力、<自己否定フーアムアイ>のせいで自分を制御出来ないの。」

(自我がおかしくなる能力なのか?そんなんで身体能力まで上がって人を殺すなんて、そんなやつ仲間に出来るのか?)

「こんなやつ、仲間なわけない!私の仲間が何人も殺されたのよ?!」
「心外ねぇ、あなたの周りに私が殺した子は居ないはずよ?」
「なら、石橋さんはどうなのよ?!」
「それは、勝手に着いてきた子が勝手にやっただけで…」
「うるさい!あんたも死ね!」

 ヒナさんが叫び、突っ込む
 水刃を飛ばしながら、左右からは鋭いウォーターカッターの壁が十ノ神さんにじりじり迫る

「賢い戦い方もできるのねぇ、でも残念。」

 十ノ神さんが水を切ると、たちまち消えてしまう

「私のもうひとつの能力<知らん顔ベイビィフェイス>で、実態のある能力は切り飛ばせるの。」
「うるさい!」

 ヒナさんは水刃を絶え間なく飛ばす

「だから、無駄よ。」

 十ノ神さんは余裕な様子だったが、急に倒れる

「やっぱり能力じゃなかったら効くのね」

 十ノ神さんの体から、血が溢れる
 体を2発、銃で撃たれている。

「十ノ神さん!」
「なんで、あんたはそいつを助けようとするのよ!」

 俺は駆け寄ると、ヒナさんが銃を向けてくる

「この人もこれから仲間だ、君の勝ちで満足出来ない…かな?」

 俺は警戒しながら、ヒナさんと交渉する

「私が勝つには、そいつを殺すしかないの。どいてよ!」

 遂に引き金に指をかける
 俺は瞬時に<力>を反応速度に使い、弾を避け、銃を上に蹴り飛ばし抑える

「なんで…」

 ヒナは泣いた
 そのとき、俺はどうすればいいのか分からなくなり、とりあえず十ノ神さんを拾ってアティの元に帰る

「アティ!この人どうにか出来ないか?」
「え?なんでこいつが居るのよ」
「話は後でもいいか?たぶん早くしないと死ぬ!」

 アティを催促すると、すぐに回復させてくれた。

「どうして…そこまでして助けてくれるの?」

 風でも掻き消えてしまいそうな声で十ノ神が言う

「あんたがもう仲間だからだ」
「仲…間…?」

 なぜなら、さっきフレンド欄に十ノ神 依加の名前があるのを見た。
 これはもはや仲間だと言っているのと同じだ


「そう…」

 十ノ神は一言だけ発し、気絶してしまった
 傷は既に治っているが、仲間に使う回復は、敵の機関や一般人には使えないらしく、完全な治療ではない

「まあ、何とかなったんじゃない?それよりもソラ、元々私を担いで帰る予定だったのに、どうするつもり?」
「あぁ、たしかに。どうしよう」

 俺はその後、気合と根性と能力で2人を持って帰った
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