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第27話 ザックを弔う
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デレクとトミーが戻ってきたのは、ジョンがデレクの背を見送ってから三十分ほど経った頃だった。すぐにデレクは仲間を全員、厨房へ集めた。トミーは決まりが悪いのか、いつもに増して不愛想で、デレクが代わりに事の経緯を説明した。トミーはダンをバード戦車長のところに送り届けた帰り道、ビンセントに捕まってしまったのだという。ダンのことを探していたビンセントは、トミーから居場所を聞き出そうとしたらしいが、彼は口を割らなかった。それで少年たちの戦車までやって来たのだ。
「でも、なんでビンセントはぼくたちの戦車の場所が分かったんだろう?」
サミーが疑問を口にすると、トミーはいかにも嫌々という風に口早く説明した。
「この戦車に近距離用の無線機しかないのをランディから聞いて知ってたらしい。バード戦車長んとこの無線機はあいつらがぶっ壊してたし、お前らが仲間と連絡取る手段がないって分かってやがったんだ。だから遠くには行くわけねえし、十中八九、ここに戻ってくんだろうって推測したんだってよ」
トミーは言葉を切ると、苦いものを噛んだように眉間を歪める。
「あの野郎、聞いてもいねえのに、オレがなんでだって思ったことを全部きれいに説明しやがった」
室内の気配が強張る。少年たちはそれぞれに表情を曇らせた。ジョンの心にも、恐怖の触手がそっと伸びてくる。しかし、
「ビンセントはそういう奴だ」
デレクの声がいつも通りに落ち着いていて、ほっとする。
それから、デレクは大きく息を吐くと、重い空気を振り払うような、朗々とした口調で話した。
「ビンセントは確かに怖い奴だ。でも、絶対に敵わない相手じゃない。あいつはオレたちの考えてることなんて、手に取るように分かると思ってる。だから油断もする。出し抜く方法は必ずある」
ざわつきが水の波紋のようにゆっくり広がった。
「もしかして、またあいつらとやるつもりなのか?」
声が上がると、急に静かになった。デレクは口角を持ち上げる。
「ああ、ビンセントの方から申し出があった。三日後の夜七時、ここで決着つけようってな」
「敵うわけないじゃん! オレたち、ぼろ負けしたばっかなんだぞ」
デレクは深く息を落としてうつむく。その様子を、少年たちはじっと見つめた。しばし置いて、彼はおもむろに顔を上げる。
「みんなが怖いのも、嫌なのも分かる。でもこれはチャンスなんだ。リスクはでかいけど、その分大きなチャンスだ。だからオレは戦いたい」
デレクは答えを求めるようなまっすぐな目を、仲間たちに向けた。気まずくなったのか、何人かが顔を背ける。それから、何分か何秒か、しんと耳に痛いほどの沈黙が続いた。
「オレはやる」
口を開いたのは、意外にもトミーだった。「敵討ちなんてなダセぇけど、料理長を殺した奴をぶん殴るチャンス、みすみす逃す気はねえ」
トミーの言葉で、ジョンにも決心がついた。
「ぼくも」
きっぱりとした口ぶりに、彼自身驚いた。自分も落ち着いているんだ。そう思うと、本当に気丈夫になったような感じがしてくる。ちゃんと頭も働いてきて、彼には今やらなければいけないことが、はっきり分かった。
「でも、その話は後にしよう。今はぼくたちが連れて帰ってきた、あの子のことを何とかしてあげなきゃ。仲間になるはずだった子だよ」
何人かがきょとんとしてジョンを見た。まだあの少年のことを知らされていない子もいるのだ。ジョンはデレクの方を向き、話していいか目で尋ねた。デレクはそっと頷く。ジョンはランディたちとの交戦中に彼が命を落としてしまったことを話した。
仲間たちは妙なほど静かにジョンの話を聞いていた。次第に悲し気な気配が濃くなっていく。
「手厚く葬ってあげよう」
そう口にしたのはサミーだ。「その子の名前は?」
言われた瞬間、ジョンは初めて気がついた。自分は彼の名前さえ知らないのだ。彼が言い淀んだその時、
「ザックだ」
突然の声にみんなが一斉にドアへ目を向けた。そこには頬とこめかみにガーゼを当て、首に回した布で左腕を固定したダンの姿があった。その後ろにはバード戦車長のところのドクターもいる。
「ダン!」
嬉々とした少年たちの声が重なった。けれどディッキーは、はっと目を見張ったまま言葉が出ないようだった。ただ、オロオロとした様子でダンを見つめ続けていた。
「もう大丈夫なのか?」
ビリーが尋ねると、ダンは、平気だ、と答えた。後ろでドクターが呆れたと言わんばかりに息をつく。
「平気じゃないだろ。肩の傷はひどい。骨は砕けてるし、筋肉も損傷してる。しばらくは絶対安静だ」
ダンはうるさそうに顔をしかめてから、サミーに尋ねた。
「手厚く葬るって、どうすんだ?」
ダンの質問は尤もだった。毎日毎日、戦闘やら飢えやら、その他さまざまな理由によって大勢が命を失っているけれど、そのほとんどは野晒しのままなのだ。死体は腐敗し、蛆が沸き、ハゲワシやハイエナに食われ、次第に風化していく。そうして最後には白骨化し、砂と一緒くたになる。ジョンも幼い頃、家の近くで朽ち果てた死体を目にし、ひどく怯えたのを覚えている。この砂漠の半分は、きっと死んだ人間でできているに違いない、と子どもながらに考えて、しばらくは大地を覆う砂に不気味なものを感じていた。火葬や土葬といった方法があると知ったのは、バード戦車長が遺体を見つけた時には、きちんと葬ってやるようにしていたからだ。
「やり方はいろいろあるけど、普通はお墓を作るんだ。遺体をそのまま地面に埋めたり、焼いて残った骨を埋めたりして、そこに目印の石を置いておくんだよ。そうすれば、いつでも会いに行けるからね」
「火葬がいいんじゃねえか?」
また、珍しくトミーが言った。「火葬なら、残った骨を埋めないで持っとくこともできんだろ? どうせこの辺りの砂は崩れやすすぎて上手く墓石も立てられねえよ」
ほとんどの少年たちはトミーの言葉の意味が理解できなかったらしく、ぽかんとしていた。けれど、デレク、ジョン、サミー、それからなんとなく分かったらしいダンは、それぞれに頷いた。
少年たちは急いで火葬の準備に取り掛かった。何か使えないかと、手当たり次第に戦車にあるものをかき集めてくる。その度に、デレクから「使えない」と却下されていた。彼らが運んでくるのは、中身を捨てたごみ箱用のプラスチック製の容器とか、サミーの私物である本の山とか(目にした途端、サミーはぎょっと青ざめていた)、そんな何の用途があるのか分からないようなものばかりだったので、当然だった。ディッキーに至っては、なぜか得意げにコンロの天板を外して持ってきて、トミーに怒鳴りつけられていた。
そんな風にしながらも、夜更け前には手作りの火葬台が完成した。背のついていない丸椅子四つを逆さにし、その上に黒板(ランディたちが作戦会議に使っていたらしい)を載せて固定しただけの簡素なものだったが、十分だ。あとは少年――ザックを乗せてやればいい。
戦車の外にみんなで集まると、デレクはザックの遺体を抱き上げ、火葬台の上に横たえた。まるで硝子で出来てでもいるかのように、そっと。少年たちは台の上で眠るザックを見つめた。
おそらく、歳は十前後。体はディッキーより少し小さいくらいだ。綺麗な赤毛で、色白のため鼻筋に僅かに散るそばかすが際立っている。下ろされた瞼のふくらみは大きく、縁を彩る長いまつ毛も髪と同じ色。けれど細いせいか透き通って見えた。少年らしい丸みのある華奢な輪郭の中で、それぞれのパーツがあどけなく美しく照らし出されていた。でも、袖なしのシャツから伸びる腕にはディッキーと同じような生々しい火傷があり、手の爪はほとんど剥がれて赤黒い血玉ができている。
しばらくすると、サミーが静かに言った。
「お別れをしよう」
彼はおもむろにザックへ近づくと、優しい手つきで赤い髪を撫でる。
「さようなら、ザック」
すると、他の少年たちも一人、また一人と火葬台へ歩み寄っていった。
「さよなら」
「さよなら、ザック」
「バイバイ、ザック」
ディッキーは見たくないとでも言うように、うつむいて唇を噛んでいたけれど、何人もの仲間がザックへ別れを告げるのを聞くうちに決心したのか、顔を上げた。ゆっくり足を踏み出す。すぐそこまで行くと、彼は屈み、掠れ声で言った。
「さよなら」
それから踵を返して戻って来た時、彼の目には涙がいっぱいに溜まっていて、今にも縁から溢れそうだった。隣のサミーがそっとディッキーの背を擦ってやっていた。
ジョンも、ザックへ最初で最後の言葉をかけるため、ゆっくりと歩み寄った。間近に見ると、鼻のそばかすは星明りにキラキラと輝いて、それこそ星屑のように見えた。赤いまつ毛も同じで、チラチラと煌めいて、目元に陰影を作り出している。それを見ると、なんだか胸がいっぱいになってしまって、声が喉でつっかえそうだった。
「さようなら、ザック」
ジョンは言葉を絞り出すと、惜しいような気持ちで彼から離れた。
最後に残ったのはダンだった。彼は大きく息をつくと、迷いのないしっかりした足取りでザックへ近づいていった。そうして、ディッキーと同じように屈んでその顔をじっと見つめる。ジョンには彼がザックの耳元へ何か言ったように見えたのだけど、声は聞き取れなかった。
それから、ザックの周囲を囲むように台へガソリンを垂らし、マッチで火をつけた。小さなザックの体が炎に包まれていく。台を囲む少年たちは、その様子を見つめたり、目を伏せたりしながら、ただ、ただ、立ち尽くしていた。
「でも、なんでビンセントはぼくたちの戦車の場所が分かったんだろう?」
サミーが疑問を口にすると、トミーはいかにも嫌々という風に口早く説明した。
「この戦車に近距離用の無線機しかないのをランディから聞いて知ってたらしい。バード戦車長んとこの無線機はあいつらがぶっ壊してたし、お前らが仲間と連絡取る手段がないって分かってやがったんだ。だから遠くには行くわけねえし、十中八九、ここに戻ってくんだろうって推測したんだってよ」
トミーは言葉を切ると、苦いものを噛んだように眉間を歪める。
「あの野郎、聞いてもいねえのに、オレがなんでだって思ったことを全部きれいに説明しやがった」
室内の気配が強張る。少年たちはそれぞれに表情を曇らせた。ジョンの心にも、恐怖の触手がそっと伸びてくる。しかし、
「ビンセントはそういう奴だ」
デレクの声がいつも通りに落ち着いていて、ほっとする。
それから、デレクは大きく息を吐くと、重い空気を振り払うような、朗々とした口調で話した。
「ビンセントは確かに怖い奴だ。でも、絶対に敵わない相手じゃない。あいつはオレたちの考えてることなんて、手に取るように分かると思ってる。だから油断もする。出し抜く方法は必ずある」
ざわつきが水の波紋のようにゆっくり広がった。
「もしかして、またあいつらとやるつもりなのか?」
声が上がると、急に静かになった。デレクは口角を持ち上げる。
「ああ、ビンセントの方から申し出があった。三日後の夜七時、ここで決着つけようってな」
「敵うわけないじゃん! オレたち、ぼろ負けしたばっかなんだぞ」
デレクは深く息を落としてうつむく。その様子を、少年たちはじっと見つめた。しばし置いて、彼はおもむろに顔を上げる。
「みんなが怖いのも、嫌なのも分かる。でもこれはチャンスなんだ。リスクはでかいけど、その分大きなチャンスだ。だからオレは戦いたい」
デレクは答えを求めるようなまっすぐな目を、仲間たちに向けた。気まずくなったのか、何人かが顔を背ける。それから、何分か何秒か、しんと耳に痛いほどの沈黙が続いた。
「オレはやる」
口を開いたのは、意外にもトミーだった。「敵討ちなんてなダセぇけど、料理長を殺した奴をぶん殴るチャンス、みすみす逃す気はねえ」
トミーの言葉で、ジョンにも決心がついた。
「ぼくも」
きっぱりとした口ぶりに、彼自身驚いた。自分も落ち着いているんだ。そう思うと、本当に気丈夫になったような感じがしてくる。ちゃんと頭も働いてきて、彼には今やらなければいけないことが、はっきり分かった。
「でも、その話は後にしよう。今はぼくたちが連れて帰ってきた、あの子のことを何とかしてあげなきゃ。仲間になるはずだった子だよ」
何人かがきょとんとしてジョンを見た。まだあの少年のことを知らされていない子もいるのだ。ジョンはデレクの方を向き、話していいか目で尋ねた。デレクはそっと頷く。ジョンはランディたちとの交戦中に彼が命を落としてしまったことを話した。
仲間たちは妙なほど静かにジョンの話を聞いていた。次第に悲し気な気配が濃くなっていく。
「手厚く葬ってあげよう」
そう口にしたのはサミーだ。「その子の名前は?」
言われた瞬間、ジョンは初めて気がついた。自分は彼の名前さえ知らないのだ。彼が言い淀んだその時、
「ザックだ」
突然の声にみんなが一斉にドアへ目を向けた。そこには頬とこめかみにガーゼを当て、首に回した布で左腕を固定したダンの姿があった。その後ろにはバード戦車長のところのドクターもいる。
「ダン!」
嬉々とした少年たちの声が重なった。けれどディッキーは、はっと目を見張ったまま言葉が出ないようだった。ただ、オロオロとした様子でダンを見つめ続けていた。
「もう大丈夫なのか?」
ビリーが尋ねると、ダンは、平気だ、と答えた。後ろでドクターが呆れたと言わんばかりに息をつく。
「平気じゃないだろ。肩の傷はひどい。骨は砕けてるし、筋肉も損傷してる。しばらくは絶対安静だ」
ダンはうるさそうに顔をしかめてから、サミーに尋ねた。
「手厚く葬るって、どうすんだ?」
ダンの質問は尤もだった。毎日毎日、戦闘やら飢えやら、その他さまざまな理由によって大勢が命を失っているけれど、そのほとんどは野晒しのままなのだ。死体は腐敗し、蛆が沸き、ハゲワシやハイエナに食われ、次第に風化していく。そうして最後には白骨化し、砂と一緒くたになる。ジョンも幼い頃、家の近くで朽ち果てた死体を目にし、ひどく怯えたのを覚えている。この砂漠の半分は、きっと死んだ人間でできているに違いない、と子どもながらに考えて、しばらくは大地を覆う砂に不気味なものを感じていた。火葬や土葬といった方法があると知ったのは、バード戦車長が遺体を見つけた時には、きちんと葬ってやるようにしていたからだ。
「やり方はいろいろあるけど、普通はお墓を作るんだ。遺体をそのまま地面に埋めたり、焼いて残った骨を埋めたりして、そこに目印の石を置いておくんだよ。そうすれば、いつでも会いに行けるからね」
「火葬がいいんじゃねえか?」
また、珍しくトミーが言った。「火葬なら、残った骨を埋めないで持っとくこともできんだろ? どうせこの辺りの砂は崩れやすすぎて上手く墓石も立てられねえよ」
ほとんどの少年たちはトミーの言葉の意味が理解できなかったらしく、ぽかんとしていた。けれど、デレク、ジョン、サミー、それからなんとなく分かったらしいダンは、それぞれに頷いた。
少年たちは急いで火葬の準備に取り掛かった。何か使えないかと、手当たり次第に戦車にあるものをかき集めてくる。その度に、デレクから「使えない」と却下されていた。彼らが運んでくるのは、中身を捨てたごみ箱用のプラスチック製の容器とか、サミーの私物である本の山とか(目にした途端、サミーはぎょっと青ざめていた)、そんな何の用途があるのか分からないようなものばかりだったので、当然だった。ディッキーに至っては、なぜか得意げにコンロの天板を外して持ってきて、トミーに怒鳴りつけられていた。
そんな風にしながらも、夜更け前には手作りの火葬台が完成した。背のついていない丸椅子四つを逆さにし、その上に黒板(ランディたちが作戦会議に使っていたらしい)を載せて固定しただけの簡素なものだったが、十分だ。あとは少年――ザックを乗せてやればいい。
戦車の外にみんなで集まると、デレクはザックの遺体を抱き上げ、火葬台の上に横たえた。まるで硝子で出来てでもいるかのように、そっと。少年たちは台の上で眠るザックを見つめた。
おそらく、歳は十前後。体はディッキーより少し小さいくらいだ。綺麗な赤毛で、色白のため鼻筋に僅かに散るそばかすが際立っている。下ろされた瞼のふくらみは大きく、縁を彩る長いまつ毛も髪と同じ色。けれど細いせいか透き通って見えた。少年らしい丸みのある華奢な輪郭の中で、それぞれのパーツがあどけなく美しく照らし出されていた。でも、袖なしのシャツから伸びる腕にはディッキーと同じような生々しい火傷があり、手の爪はほとんど剥がれて赤黒い血玉ができている。
しばらくすると、サミーが静かに言った。
「お別れをしよう」
彼はおもむろにザックへ近づくと、優しい手つきで赤い髪を撫でる。
「さようなら、ザック」
すると、他の少年たちも一人、また一人と火葬台へ歩み寄っていった。
「さよなら」
「さよなら、ザック」
「バイバイ、ザック」
ディッキーは見たくないとでも言うように、うつむいて唇を噛んでいたけれど、何人もの仲間がザックへ別れを告げるのを聞くうちに決心したのか、顔を上げた。ゆっくり足を踏み出す。すぐそこまで行くと、彼は屈み、掠れ声で言った。
「さよなら」
それから踵を返して戻って来た時、彼の目には涙がいっぱいに溜まっていて、今にも縁から溢れそうだった。隣のサミーがそっとディッキーの背を擦ってやっていた。
ジョンも、ザックへ最初で最後の言葉をかけるため、ゆっくりと歩み寄った。間近に見ると、鼻のそばかすは星明りにキラキラと輝いて、それこそ星屑のように見えた。赤いまつ毛も同じで、チラチラと煌めいて、目元に陰影を作り出している。それを見ると、なんだか胸がいっぱいになってしまって、声が喉でつっかえそうだった。
「さようなら、ザック」
ジョンは言葉を絞り出すと、惜しいような気持ちで彼から離れた。
最後に残ったのはダンだった。彼は大きく息をつくと、迷いのないしっかりした足取りでザックへ近づいていった。そうして、ディッキーと同じように屈んでその顔をじっと見つめる。ジョンには彼がザックの耳元へ何か言ったように見えたのだけど、声は聞き取れなかった。
それから、ザックの周囲を囲むように台へガソリンを垂らし、マッチで火をつけた。小さなザックの体が炎に包まれていく。台を囲む少年たちは、その様子を見つめたり、目を伏せたりしながら、ただ、ただ、立ち尽くしていた。
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