オー、ブラザーズ!

ぞぞ

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プロローグ

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 小さい体は粗末な火葬台へ横たえられ、その上を這うように炎が広がっていく。寒い砂漠の夜、緋色がゆらめき、台を囲む少年たちの表情へチラチラと陰影を映す。黒髪に浅黒い肌の少年とその隣のひときわ背の低い巻き毛の少年は共に目を伏せてぎゅっと唇を噛みしめており、少し離れたところでは銀髪の少年が頬を涙で濡らしている。その背をそっとさするひょろりと背の高い少年もまた、目に涙をためていた。他にも、何人もの少年たちが痛ましい表情を浮かべている。しかしジョンが最も気がかりだったのは、一段と大人びた金髪の少年だ。炎の明かりが照らし出す端正な輪郭は一つも歪まず、ただ物思いに沈んでいた。

 日が昇ると、夜の冷え込みが嘘のようなひどい暑さだった。昨晩、哀しみに暮れていた少年たちもまた、打って変わって元気に砂を蹴散らしてはしゃぎまわっている。汗ばんだ肌に砂が貼り付き、ほとんどが砂人形のようになって遊んでいる。唯一、この暑さの中長袖長ズボンの銀髪の少年だけが人らしい姿を保っていた。
 ジョンは戦車の脇に座る金髪の少年の隣へ腰を下ろした。
「かわいそうだったな」
 隣からの静かな声。
「戦いが終わるまでに、同じようにきっと誰か死ぬ」
 そう言いながら、彼は砂と戯れる仲間たちを見つめている。自責の念を感じ取ったジョンは言う。
「君のせいじゃないよ」
 少年はかぶりを振った。
「オレがみんなを集めたんだ」
「そのおかげで助かった子だっている」
 少年がジョンへ顔を向ける。まっすぐな視線に少しジョンは怯んだ。
「お前は違うだろ。オレと一緒に来なければ、こんな危険な目には遭ってない」
「ぼくが決めたことだ」
 ジョンはきっぱりと答え、走り回る仲間たちへ視線を移す。
「みんなだって、そうだよ」
 少年たちは大声で笑い合い、小突き合い、転げまわっている。
「あと二日で終わりじゃないか」
 沈黙が二人の間に落ちてきた。仲間たちの声が風に乗って響いてくる。金髪の少年が深く息をついた。
「あと二日で決戦だ。みんな不安を紛らわすために、ああやって騒いでるんだ。誰が死んでもおかしくないんだよ」
「デレク」
 ジョンが呼びかけると少年――デレクは突然にこう口にした。
「なあ、村にいる時に聞いた『サンタクロース』の話、覚えてるか?」
「え?」
ジョンが面食らって言うと、デレクは彼を見てにっこりと笑った。
「話してやろうよ、あいつらに」

*****

 デレクはジョンの親友だ。そしてこの少年団を組織したリーダーでもある。彼ら自身は自分たちを指す呼称を決めていたわけではないけれど、後に世間からはこう呼ばれるようになる。「最悪のガキ軍団」と。
 
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