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やりなおし(百夜視点)
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わだかまった布の散乱する褥の上で、百夜は目を覚ました。これ以上ないほど幸福で光に満ちた朝だった。百夜は腕の中にいるはずの澪子を抱きしめようと腕に力を入れた。が…
「澪?…どこへ」
たしかに抱きしめて眠ったはずの彼女の姿がない。百夜はがばりとはね起きた。頭に、初めての朝の時の事が思い出された。あの時、澪子が出て行ったと思って百夜は泡をくったのだった。
(ということは…また、炊事場に…?)
だが若干の不安が頭をよぎる。きっとあそこにいるはずだ。百夜は自分にそう言い聞かせながら単衣を羽織って部屋を出ようとした。その時。
「おはようございます、百夜様」
すでにきっちり小袖を着込み、膳を持った澪子が障子を開けて入ってきた。その姿を見て、百夜は安堵すると同時にいじけた気持ちになった。
「澪…なぜいつも、そうやっていなくなってしまうんですか」
「えぇ?」
拗ねてそういう百夜に、澪子は困り笑いをした。
「今日の朝くらい…隣に居てほしかったです」
澪子は膳の用意をしながら笑い交じりに言った。
「百夜様…どうしてしまったんですか。そんな子どもみたいな事をおっしゃるなんて」
自分の方を見ない澪子の背中を、百夜はじっと見つめた。
「…私はもともとこういう性分です。今までは…我慢していた、だけで」
不安になった百夜は、澪子の肩をつかんだ。
「どうしてこちらを見てくれないのですか、やはり嫌だったのですか?澪…」
それでも振り返らない澪子の首筋が、紅く染まっていた。
「すみません…嫌なんじゃなくて」
「ではどうして。」
澪子は聞き取れないほど小さな声でつぶやいた。
「あんな事、した後に…どんな顔をしたらいいか…わからなく、て。」
「つまり…恥ずかしくて?それで早々に床を出たと…?」
「………はい」
それで、前回も今回も、まるで何事もなかったような顔をして炊事にかかっていたのか。恥ずかしさを、ごまかすために。その澪子の健気さが愛おしくて、百夜はかすかに震える彼女の背中ごと、ぎゅっと抱きしめた。
「そんな事、気にしなくともいいのに…私はあなたの寝顔が見たいです。次は私より先に床を出てはいけませんよ」
「そ、それは難しいです…」
澪子は困った声を出した。百夜はその耳元でささやいた。
「澪は意外に強情な所がある…昨日だって、恥ずかしがってばかりで。なぜそんなに、己を隠したがるのですか」
澪子が、きゅっと拳をにぎりしめた。
「私は…その、醜いので。体や、寝る顔を見られるのは、嫌なんです…」
そんな事を思っていたのか。澪子がそんな自分の気持ちを言うのは初めてだったので、百夜は意外に思った。
「醜い?…なせ、そう思うのですか」
「なぜって…百夜様も、初めて私を見たとき驚いたでしょう…鶏がらみたいな、惨めな体だと」
「確かに痩せてはいましたが…でも醜いなどとは思った事がありませんよ」
「そうでしょうか。私はずっと…醜い娘だと、言われ続けていたので…」
「それは、その人たちの目がおかしかっただけですよ」
百夜は後ろから澪子の頬を撫でた。
「澪はこんなに可愛らしいのに。この日の本いちの美人です」
しばしの沈黙の後、澪子が蚊の鳴くような声で言った。
「な…何をおっしゃるんですか」
「だから次は、どうか先に起きださないでくださいね」
「百夜様…その、お膳が冷めてしまいますから…」
「うんと言わないと離しませんよ」
少し迷ったあと、澪子はおずおず言った。
「…わかりました」
百夜は笑って澪子を閉じ込めていた腕を解いた。
◇◇◇
椀の蓋を開けると、ふわりと湯気が立ち上った。雲のように柔らかなご飯の中に、桜色のほぐし鮭が散っている。
「これは…?」
初めて見る料理だったので、百夜は不思議に思って澪子に聞いた。
「雑炊です。材料があんまりなくて、お出汁と鮭だけの簡単なものですが」
百夜はそれを口にした。暖かい雑炊は、腹の底を温めてくれるような優しい味だった。
「澪の作るものはなんでもおいしいです…」
百夜は微笑みながら聞いた。
「でもこの雑炊は、また格別に美味しい気がします。なぜでしょうね」
「それは…たぶん、百夜様お腹が空いているからですよ。昨晩何も召し上がらなかったでしょう」
「そうですね。ですが私は…あまり空腹を感じないたちで。ですがあなたが来てから、毎度食事の時間が待ち遠しいのです」
澪子と一緒に居られるからという事もあったが、今まで食べものに興味のなかった自分が、こんなにものを美味しく感じられるという事が、百夜には不思議だった。
すると澪子は、静かに言った。
「…誰かと一緒に食べるご飯は、美味しいものですよ」
湯気の向こうで目を伏せて綻ぶその顔が、ふいに神々しく見えた。百夜はまぶしい思いで彼女から目をそらしてふっと笑んだ。
「そうなのですね。私は…そんな事を、知りませんでした。澪が教えてくれなければ、きっとずっと…」
その言葉に、澪子は顔を上げて百夜を見た。優しいまなざしだった。
「私も…今、幸せです。ありがとうございます」
その言葉はとても自然で、百夜は目を見開いた。
「本当ですか。澪。」
「嘘なんて、つきませんよ」
少し困ったように澪子は笑った。だが百夜は追及した。
「澪は…今の私を、どう思っていますか」
澪子は不意を突かれたような顔をした。
「どうって…その」
少し口ごもりながら、彼女は箸をさまよわせた。
「だ、大事な、方だと思っています…」
「どう、大事なのです」
百夜は真剣に聞いた。澪子も真剣に首を傾げて考え込んだ。そしてとぎれとぎれに思いを口にした。
「ええと…百夜様のお役に立ちたいです。喜んでいただければ嬉しいし、悲しいお顔をなさっている時は…どうにか助けてさしあげたいと、思います」
差し出がましいですが…と言って、彼女はつづけた。
「ここの所百夜様は、塞いでいらしたので。今朝は特に…何か栄養のあるものを食べて、いただきたくて。それで早起きしたというのも、あります」
澪子は生真面目にそう説明した。百夜は手に持った椀をじっと眺めた。そんな思いから作ってくれたのだと思うと、雑炊のぬくもりが、掛け替えのない大事なものに思えた。
「…だから澪のつくった食事は、いつも美味しかったのですね」
「…え?」
「私のためを思って、作ってくれていたから。このお茶にも、雑炊にも、すべて…あなたの心が溶けて入っているから」
百夜が独り言のようにそう言うと、澪子の表情が柔らかにゆるんだ。
「そうかもしれません。いつも百夜様のことを考えながら…あれこれ作っておりました」
そういわれて、百夜の胸の中に切なさと暖かさがあふれた。こんなに優しい彼女に、もっとしてあげられる事はないだろうか。彼女が今まで味わった事がないほど幸せにしてやりたい。
何をすれば、澪子は喜ぶだろうか。着物に花に…様々な物が百夜の脳裏をよぎった。だが澪子は物よりもきっと、別の事を喜ぶだろうという気がした。百夜は素直に教えを乞うた。
「私も…あなたに何かしてあげたいです。料理のしかたを、教えていただけますか」
その提案に、澪子は嬉しそうにうなずいた。
「ええ、もちろんです。今度一緒に作ってみましょう」
澪子との日々は、ただただ温かく、満ち足りていた。
これが「幸せ」という事なのだと初めて知った百夜は、その味をかみしめて過ごしていた。
甘く柔らかい日常。けれどその時の百夜は、「幸せ」の裏の面をまだ知らなかった。
「幸せ」はまるで、あの儚い飴菓子のようなものなのだった。食べたと思えば一瞬で溶けて、儚く消えてしまうもの。
それを思い知ったのは、その冬の事だった。
「澪?…どこへ」
たしかに抱きしめて眠ったはずの彼女の姿がない。百夜はがばりとはね起きた。頭に、初めての朝の時の事が思い出された。あの時、澪子が出て行ったと思って百夜は泡をくったのだった。
(ということは…また、炊事場に…?)
だが若干の不安が頭をよぎる。きっとあそこにいるはずだ。百夜は自分にそう言い聞かせながら単衣を羽織って部屋を出ようとした。その時。
「おはようございます、百夜様」
すでにきっちり小袖を着込み、膳を持った澪子が障子を開けて入ってきた。その姿を見て、百夜は安堵すると同時にいじけた気持ちになった。
「澪…なぜいつも、そうやっていなくなってしまうんですか」
「えぇ?」
拗ねてそういう百夜に、澪子は困り笑いをした。
「今日の朝くらい…隣に居てほしかったです」
澪子は膳の用意をしながら笑い交じりに言った。
「百夜様…どうしてしまったんですか。そんな子どもみたいな事をおっしゃるなんて」
自分の方を見ない澪子の背中を、百夜はじっと見つめた。
「…私はもともとこういう性分です。今までは…我慢していた、だけで」
不安になった百夜は、澪子の肩をつかんだ。
「どうしてこちらを見てくれないのですか、やはり嫌だったのですか?澪…」
それでも振り返らない澪子の首筋が、紅く染まっていた。
「すみません…嫌なんじゃなくて」
「ではどうして。」
澪子は聞き取れないほど小さな声でつぶやいた。
「あんな事、した後に…どんな顔をしたらいいか…わからなく、て。」
「つまり…恥ずかしくて?それで早々に床を出たと…?」
「………はい」
それで、前回も今回も、まるで何事もなかったような顔をして炊事にかかっていたのか。恥ずかしさを、ごまかすために。その澪子の健気さが愛おしくて、百夜はかすかに震える彼女の背中ごと、ぎゅっと抱きしめた。
「そんな事、気にしなくともいいのに…私はあなたの寝顔が見たいです。次は私より先に床を出てはいけませんよ」
「そ、それは難しいです…」
澪子は困った声を出した。百夜はその耳元でささやいた。
「澪は意外に強情な所がある…昨日だって、恥ずかしがってばかりで。なぜそんなに、己を隠したがるのですか」
澪子が、きゅっと拳をにぎりしめた。
「私は…その、醜いので。体や、寝る顔を見られるのは、嫌なんです…」
そんな事を思っていたのか。澪子がそんな自分の気持ちを言うのは初めてだったので、百夜は意外に思った。
「醜い?…なせ、そう思うのですか」
「なぜって…百夜様も、初めて私を見たとき驚いたでしょう…鶏がらみたいな、惨めな体だと」
「確かに痩せてはいましたが…でも醜いなどとは思った事がありませんよ」
「そうでしょうか。私はずっと…醜い娘だと、言われ続けていたので…」
「それは、その人たちの目がおかしかっただけですよ」
百夜は後ろから澪子の頬を撫でた。
「澪はこんなに可愛らしいのに。この日の本いちの美人です」
しばしの沈黙の後、澪子が蚊の鳴くような声で言った。
「な…何をおっしゃるんですか」
「だから次は、どうか先に起きださないでくださいね」
「百夜様…その、お膳が冷めてしまいますから…」
「うんと言わないと離しませんよ」
少し迷ったあと、澪子はおずおず言った。
「…わかりました」
百夜は笑って澪子を閉じ込めていた腕を解いた。
◇◇◇
椀の蓋を開けると、ふわりと湯気が立ち上った。雲のように柔らかなご飯の中に、桜色のほぐし鮭が散っている。
「これは…?」
初めて見る料理だったので、百夜は不思議に思って澪子に聞いた。
「雑炊です。材料があんまりなくて、お出汁と鮭だけの簡単なものですが」
百夜はそれを口にした。暖かい雑炊は、腹の底を温めてくれるような優しい味だった。
「澪の作るものはなんでもおいしいです…」
百夜は微笑みながら聞いた。
「でもこの雑炊は、また格別に美味しい気がします。なぜでしょうね」
「それは…たぶん、百夜様お腹が空いているからですよ。昨晩何も召し上がらなかったでしょう」
「そうですね。ですが私は…あまり空腹を感じないたちで。ですがあなたが来てから、毎度食事の時間が待ち遠しいのです」
澪子と一緒に居られるからという事もあったが、今まで食べものに興味のなかった自分が、こんなにものを美味しく感じられるという事が、百夜には不思議だった。
すると澪子は、静かに言った。
「…誰かと一緒に食べるご飯は、美味しいものですよ」
湯気の向こうで目を伏せて綻ぶその顔が、ふいに神々しく見えた。百夜はまぶしい思いで彼女から目をそらしてふっと笑んだ。
「そうなのですね。私は…そんな事を、知りませんでした。澪が教えてくれなければ、きっとずっと…」
その言葉に、澪子は顔を上げて百夜を見た。優しいまなざしだった。
「私も…今、幸せです。ありがとうございます」
その言葉はとても自然で、百夜は目を見開いた。
「本当ですか。澪。」
「嘘なんて、つきませんよ」
少し困ったように澪子は笑った。だが百夜は追及した。
「澪は…今の私を、どう思っていますか」
澪子は不意を突かれたような顔をした。
「どうって…その」
少し口ごもりながら、彼女は箸をさまよわせた。
「だ、大事な、方だと思っています…」
「どう、大事なのです」
百夜は真剣に聞いた。澪子も真剣に首を傾げて考え込んだ。そしてとぎれとぎれに思いを口にした。
「ええと…百夜様のお役に立ちたいです。喜んでいただければ嬉しいし、悲しいお顔をなさっている時は…どうにか助けてさしあげたいと、思います」
差し出がましいですが…と言って、彼女はつづけた。
「ここの所百夜様は、塞いでいらしたので。今朝は特に…何か栄養のあるものを食べて、いただきたくて。それで早起きしたというのも、あります」
澪子は生真面目にそう説明した。百夜は手に持った椀をじっと眺めた。そんな思いから作ってくれたのだと思うと、雑炊のぬくもりが、掛け替えのない大事なものに思えた。
「…だから澪のつくった食事は、いつも美味しかったのですね」
「…え?」
「私のためを思って、作ってくれていたから。このお茶にも、雑炊にも、すべて…あなたの心が溶けて入っているから」
百夜が独り言のようにそう言うと、澪子の表情が柔らかにゆるんだ。
「そうかもしれません。いつも百夜様のことを考えながら…あれこれ作っておりました」
そういわれて、百夜の胸の中に切なさと暖かさがあふれた。こんなに優しい彼女に、もっとしてあげられる事はないだろうか。彼女が今まで味わった事がないほど幸せにしてやりたい。
何をすれば、澪子は喜ぶだろうか。着物に花に…様々な物が百夜の脳裏をよぎった。だが澪子は物よりもきっと、別の事を喜ぶだろうという気がした。百夜は素直に教えを乞うた。
「私も…あなたに何かしてあげたいです。料理のしかたを、教えていただけますか」
その提案に、澪子は嬉しそうにうなずいた。
「ええ、もちろんです。今度一緒に作ってみましょう」
澪子との日々は、ただただ温かく、満ち足りていた。
これが「幸せ」という事なのだと初めて知った百夜は、その味をかみしめて過ごしていた。
甘く柔らかい日常。けれどその時の百夜は、「幸せ」の裏の面をまだ知らなかった。
「幸せ」はまるで、あの儚い飴菓子のようなものなのだった。食べたと思えば一瞬で溶けて、儚く消えてしまうもの。
それを思い知ったのは、その冬の事だった。
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