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宵闇に響くは、秋の音 【全三話】
二
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「朧……」
声が凛と鳴った。それまで聞こえていた音が全て打ち消されたような、澄んだ声。それまで外の鮮やかな色に向けていた双眸をそちらへやれば、起き抜けの……とろんとした瞳が朧を見つめていた。瞼が今にも落ちそうで、今にもまた夢へと舞い戻ってしまいそうな瞳。
「……どうかしたの?」
気が付けば、あれ程気にしていた袖は椿の手中から擦り抜けていた。あれだけの勢いで身体を動かせば当然の事だろう。空になった右手が、朧を心配してなのか再び温もりを求めて朧へと延びる。
届きそうで、届かないその手を朧は掴んだ。
先ほどのように、弄るではなく。感慨深く手を引き寄せて、かと思えば再び椿へと覆い被さっていた。
隙間なく身体を重ねて、そのまま互いの唇を重ねる。激しく、荒々しく。何度と角度を変えては、まるで味わうように繰り返した。
◇
「あ……ふっ……」
呼吸をするのもやっと。不意に出来た隙間から甘色を宿した声が漏れる。躊躇ない朧のそれに、椿は必死に合わせようとするも、辿々しいばかりの様子に狼は容赦ない。
絶え間なく繰り返される口吸い。雰囲気に飲まれそうになり、空いた左手で必死に朧へとしがみつく。そうでもしないと不安で、何より朧へとそう訴えたいのもあった。
しかし椿の思惑を知ってか知らずか。朧の何かに火がついたように更に口付けが深くなった。
舌を絡ませ、本当に喰らいつこうとでもしているかのように激しく。重なる身体の重みが押さえつけられているようで、実際、椿の右腕は朧に絡め取られたまま動けずにいる。
思うままなど遠い。朧と僅かな距離ができた頃には椿から眠気など消え去って――それどころか放心状態で、だらりと布団に転げている状態だった。既に、朧の手も離れて身体は解放されたと言うのに椿は動けない。胸が上下するほどに呼吸は荒く、頬は熱情で赤く染まる。朧を呆然と見つめる双眸は変わらず溶けてしまいそうな眼差しで、朧へと何を問う余裕も無かった。
対して朧はまだ始まったばかりと言わんばかりに、そのまま椿の身体を準えるように移動していた。頬、下顎、喉、鎖骨、胸元と、順々に口付けた跡を残しながら、し下へ下へと移動する。
しかしそれも、胸の谷間あたりで止まる。乱れた茜色の着物の前を、帯を外すのも面倒と言わんばかりの手が無理矢理に寛げて、余裕のできた隙間から朧の右手があっさりと忍び込む。
ほんの指先一つが突起の先に触れたなら、椿へと事の始まりを告げた。
「あっ、」
既に高まった身体に刺激がよく響く。まるで椿を呼び起こす為だけの行為だったかのように、ひと撫でした後は指の腹で丹念に擦られる。
「あ、待って……おぼろ」
椿が静止の為に身体を起こそうとすれば、今度は朧が空いた左腕が椿の肩を力任せに抑えて止める。そうなると、椿の抵抗など意味をなさない。艶かしく広げられた着物の下の柔肌。左側は朧の右手が。右側は覗く乳房の先端に朧の舌が這う。
「や……あ……あぁ」
朧の舌があたる度に、嫌らしく水音が響く。突起を口に含んで、舌先で捏ねくり回して、舌先で突いて。しかも、指先もしつこい程に攻め立てるものだから、どうやっても椿の嬌声が止む事はない。快楽の波に襲われて、しかし達するには至らない。
それを当然わかっているであろう朧の頭が一度浮いた。もう一方の乳房へと移ろうとする様子も、椿が朧の頭へと手を伸ばして遮った。
「……朧……どうかしたの?」
甘い吐息が混ざる声で椿は訴える。しかし、いつもであれば大抵余裕の笑みを浮かべたりと楽しそうな姿を見せるのに、椿へと向かう朧の目線は思った以上に反応が薄い。返事も、気だるそうに「いや」と返すだけ。
椿は何かおかしいと抵抗を見せて起きあがろうとしたが、やはり簡単に朧に防がれてしまった。そうしてまた朧が下へと向かっていく。椿の脚の間へと割って入り、着物で隠れた秘部を惜しげもなく晒す。当然のように椿の太ももを抱え込んだ手つきは、柔肌が傷つかないようにと心がけているかのように慎重。しかし、秘部へと喰らいつく様は狼同然だった。
椿が呼びかける間もなく、乳房を捏ねくり回した時と同様に朧は攻め立てる。いや、それ以上かもしれない。
ほんの舌先で突いただけで顔を出したさね。それを、朧は弄ぶように舐め続ける。
何度と秘部を暴かれいるのに、椿はその行為が慣れないでいる。快楽が他の行為よりも激しいのもあるが、そこを覗かれるのは恥ずかしい事。その上、そこを夫が舐め回しているとなると尚の事羞恥心が最高潮へと辿り着いて、快楽が増すような気がするのだ。
何より恥ずかしいのは、自分の声だ。抵抗は無意味。ならばせめて口を塞いで堪えるしか無い。運が良い事と言えばいいのか、邪魔な袖が今日は丁度良い具合に声を抑えてくれた事は椿にとって暁光だった。
「ふ……ん……」
余ったもう一方の手で布団を掴んで、更には脚にも力を入れて、なんとか耐えようとしていた……のだが、途端に刺激が増えた。
「ああっ‼︎」
未ださねが舐められているのに、そこへ更に秘部へと太い指が侵入する。まるで、声を堪えているのが気に食わないとでも言うよに無遠慮に、だ。入り込んだそれは、内側を滑らせるように指を動かしながら容赦なく椿の一番弱い場所を刺激する。
次第に激しくなる抽挿に、椿が根を上げるのはあっという間。
「おぼ……ろ……あ、それ、むりっ」
止める事は出来ない。ひたすらに縋るように布団を掴んで与えられ続ける快楽を堪えるだけ。その間も、椿は必死に朧へと訴えかけた。
「朧っ、もう、ムリ……だからっ……あっ、やだっ」
懇願すれば止めてくれる。そう思っていたが、朧から聞こえてくるのは卑猥な水音だけ。しかも訴えれば訴える程に、さねは押しつぶされる程に。指の動きはより激しく繰り返される。
「あっ……ダメ……あああっ‼︎」
口を余裕など無くなっていた。与えられた刺激が強すぎて、叫にも近い喘ぎ声は軽々と布を超えていく。
椿が達するのは、時間の問題だった。
声が凛と鳴った。それまで聞こえていた音が全て打ち消されたような、澄んだ声。それまで外の鮮やかな色に向けていた双眸をそちらへやれば、起き抜けの……とろんとした瞳が朧を見つめていた。瞼が今にも落ちそうで、今にもまた夢へと舞い戻ってしまいそうな瞳。
「……どうかしたの?」
気が付けば、あれ程気にしていた袖は椿の手中から擦り抜けていた。あれだけの勢いで身体を動かせば当然の事だろう。空になった右手が、朧を心配してなのか再び温もりを求めて朧へと延びる。
届きそうで、届かないその手を朧は掴んだ。
先ほどのように、弄るではなく。感慨深く手を引き寄せて、かと思えば再び椿へと覆い被さっていた。
隙間なく身体を重ねて、そのまま互いの唇を重ねる。激しく、荒々しく。何度と角度を変えては、まるで味わうように繰り返した。
◇
「あ……ふっ……」
呼吸をするのもやっと。不意に出来た隙間から甘色を宿した声が漏れる。躊躇ない朧のそれに、椿は必死に合わせようとするも、辿々しいばかりの様子に狼は容赦ない。
絶え間なく繰り返される口吸い。雰囲気に飲まれそうになり、空いた左手で必死に朧へとしがみつく。そうでもしないと不安で、何より朧へとそう訴えたいのもあった。
しかし椿の思惑を知ってか知らずか。朧の何かに火がついたように更に口付けが深くなった。
舌を絡ませ、本当に喰らいつこうとでもしているかのように激しく。重なる身体の重みが押さえつけられているようで、実際、椿の右腕は朧に絡め取られたまま動けずにいる。
思うままなど遠い。朧と僅かな距離ができた頃には椿から眠気など消え去って――それどころか放心状態で、だらりと布団に転げている状態だった。既に、朧の手も離れて身体は解放されたと言うのに椿は動けない。胸が上下するほどに呼吸は荒く、頬は熱情で赤く染まる。朧を呆然と見つめる双眸は変わらず溶けてしまいそうな眼差しで、朧へと何を問う余裕も無かった。
対して朧はまだ始まったばかりと言わんばかりに、そのまま椿の身体を準えるように移動していた。頬、下顎、喉、鎖骨、胸元と、順々に口付けた跡を残しながら、し下へ下へと移動する。
しかしそれも、胸の谷間あたりで止まる。乱れた茜色の着物の前を、帯を外すのも面倒と言わんばかりの手が無理矢理に寛げて、余裕のできた隙間から朧の右手があっさりと忍び込む。
ほんの指先一つが突起の先に触れたなら、椿へと事の始まりを告げた。
「あっ、」
既に高まった身体に刺激がよく響く。まるで椿を呼び起こす為だけの行為だったかのように、ひと撫でした後は指の腹で丹念に擦られる。
「あ、待って……おぼろ」
椿が静止の為に身体を起こそうとすれば、今度は朧が空いた左腕が椿の肩を力任せに抑えて止める。そうなると、椿の抵抗など意味をなさない。艶かしく広げられた着物の下の柔肌。左側は朧の右手が。右側は覗く乳房の先端に朧の舌が這う。
「や……あ……あぁ」
朧の舌があたる度に、嫌らしく水音が響く。突起を口に含んで、舌先で捏ねくり回して、舌先で突いて。しかも、指先もしつこい程に攻め立てるものだから、どうやっても椿の嬌声が止む事はない。快楽の波に襲われて、しかし達するには至らない。
それを当然わかっているであろう朧の頭が一度浮いた。もう一方の乳房へと移ろうとする様子も、椿が朧の頭へと手を伸ばして遮った。
「……朧……どうかしたの?」
甘い吐息が混ざる声で椿は訴える。しかし、いつもであれば大抵余裕の笑みを浮かべたりと楽しそうな姿を見せるのに、椿へと向かう朧の目線は思った以上に反応が薄い。返事も、気だるそうに「いや」と返すだけ。
椿は何かおかしいと抵抗を見せて起きあがろうとしたが、やはり簡単に朧に防がれてしまった。そうしてまた朧が下へと向かっていく。椿の脚の間へと割って入り、着物で隠れた秘部を惜しげもなく晒す。当然のように椿の太ももを抱え込んだ手つきは、柔肌が傷つかないようにと心がけているかのように慎重。しかし、秘部へと喰らいつく様は狼同然だった。
椿が呼びかける間もなく、乳房を捏ねくり回した時と同様に朧は攻め立てる。いや、それ以上かもしれない。
ほんの舌先で突いただけで顔を出したさね。それを、朧は弄ぶように舐め続ける。
何度と秘部を暴かれいるのに、椿はその行為が慣れないでいる。快楽が他の行為よりも激しいのもあるが、そこを覗かれるのは恥ずかしい事。その上、そこを夫が舐め回しているとなると尚の事羞恥心が最高潮へと辿り着いて、快楽が増すような気がするのだ。
何より恥ずかしいのは、自分の声だ。抵抗は無意味。ならばせめて口を塞いで堪えるしか無い。運が良い事と言えばいいのか、邪魔な袖が今日は丁度良い具合に声を抑えてくれた事は椿にとって暁光だった。
「ふ……ん……」
余ったもう一方の手で布団を掴んで、更には脚にも力を入れて、なんとか耐えようとしていた……のだが、途端に刺激が増えた。
「ああっ‼︎」
未ださねが舐められているのに、そこへ更に秘部へと太い指が侵入する。まるで、声を堪えているのが気に食わないとでも言うよに無遠慮に、だ。入り込んだそれは、内側を滑らせるように指を動かしながら容赦なく椿の一番弱い場所を刺激する。
次第に激しくなる抽挿に、椿が根を上げるのはあっという間。
「おぼ……ろ……あ、それ、むりっ」
止める事は出来ない。ひたすらに縋るように布団を掴んで与えられ続ける快楽を堪えるだけ。その間も、椿は必死に朧へと訴えかけた。
「朧っ、もう、ムリ……だからっ……あっ、やだっ」
懇願すれば止めてくれる。そう思っていたが、朧から聞こえてくるのは卑猥な水音だけ。しかも訴えれば訴える程に、さねは押しつぶされる程に。指の動きはより激しく繰り返される。
「あっ……ダメ……あああっ‼︎」
口を余裕など無くなっていた。与えられた刺激が強すぎて、叫にも近い喘ぎ声は軽々と布を超えていく。
椿が達するのは、時間の問題だった。
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