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箱庭スローライフ編
第73話 8日目①おっさんはティータイムをする
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湿気を含んだ朝のひんやりとした空気が拠点の中に流れ込んできてふっと目を覚ます。真夏だから寒くはないが尿意は催している。
腕時計で確認すると6時前。昨日は寝るのが遅かったから起きるのもちょっと遅めだな。外はすでにかなり明るい。
「…………んぁ? ……ん、朝っすか?」
俺の身じろぎで美岬も目を覚ましたようだ。
「おう、おはよう。6時前だな。俺はトイレ行きたいから起きるけど美岬はどうする?」
「……おはよ……す。……んー、あたしもおトイレしたいから起きるっすぅ……ふぁ」
そう言いながらもまだ完全に目が覚めていないようでふにゃふにゃしている美岬を残して先に拠点から這い出してトイレに向かう。
用を足してその足で小川に向かい、顔を洗ってさっぱりしてから拠点に戻る。俺と入れ替わりで美岬もトイレに向かった。
一夜干しにしていた穴ダコやワカメやハマグリの剥き身の状態を確認してみると、まだ干し足りない感じだったので引き続き干しておく。
寝る前に新しく火を灯していたウッドキャンドルは完全に燃え尽きていた。海保や海自の救難ヘリやドローンには機体の下部に高性能の赤外線センサーが搭載されているから、例えウッドキャンドル程度の小さな火でも上空を通れば感知できるはずだ。
とりあえずあと数日ぐらいは無駄になるかもしれんが引き続き夜中にウッドキャンドルを灯しておこう。
さて、なにはともあれ、まずは火を起こすか。
昨夜寝る前に残っていた熾火はまとめてかまどに灰の中に埋めておいたので小枝で掘り起こしてみるとまだ火種は残っていたので、ファットウッドを削ったチップを使って火を起こしなおす。
火が着いて炎が安定したら、コッヘルに水とまだ残っていたジュズダマの殻を入れて火にかけて煮出し始める。
あー、コーヒーが飲みたいなぁ。
ふと、昨日拾ってきたスダジイのどんぐりの存在を思い出し、それを入れてあるビニール袋とペンチを取ってきて、どんぐりを割って中身と殻を分ける作業を始めたところにトイレと洗顔を済ませた美岬が戻ってくる。
「はー、さっぱりしたっす。……およ、ガクさんがそれやってるなら、あたしは今のうちに植物の世話をしてくるっすかね」
「おう。任せた」
「あいあい。お任せられ」
――ぱちん……ぺりっ……ぱちん……ぺりっ
ペンチでどんぐりを割り、殻を剥がして身を分ける。割る。剥がす。割る。剥がす。割る。剥がす……。無心になって続けていくうちに気づけばたくさんあったどんぐりを全部剥き終わっていた。だいたい手のひら2杯分ぐらいはあるな。
「……ふう、終わったか。あー、腰が痛ぇ……んー、美岬は?」
ずっと前屈みで作業していたのですっかり腰が痛くなってしまった。立ち上がって軽くストレッチしながら美岬を探すと、美岬は地面に断熱シートを広げて何か作業をしていた。
「何をしているんだ?」
「……あ、ガクさんの方は終わったっすか。あたしは植物の世話が一通り終わったんで昨日集めてきたハマエンドウの皮剥きやってるっす」
その言葉通り、美岬は枝豆よりちょっと小さいサイズの豆の皮剥きをしていた。カラスノエンドウみたいな小さい豆かと思ってたら以外と大きいんだな。
「ああ、醤油作りに使う豆だな。じゃあ俺も塩作りの続きをやらなきゃいかんな」
「んー、でも豆と塩の準備が出来ても熟成用の保存容器まだ無いから醤油作り始められないっすよね」
「あー、それなんだが、ふと思いついたんだがもしかしたらビニール袋で醤油とか味噌を作れるんじゃないか?」
「……おぉ! 確かにいけそうな気がするっす。……ただ、熟成期間は冷暗所での保管が必須になるっすけど、拠点だとちょっと温度高いと思うんすよね。そのへんはどうっすかね? ビニールだと断熱皆無なんでもろ外気温の影響受けちゃうっすけど」
「それなら……水源地のスダジイの大木には虚があるやつが結構あるよな。虚を保管庫がわりに使ってみるのもありだと思うんだがどうだ?」
「おぉ! その手があったっすか! んー、確かにあそこなら涼しいっすし、立ち木の虚をそのまま利用するなら手間もほとんどかからないからすぐに実行できるっすね。虚の中に袋が破れないようにクッションとして落ち葉を敷き詰めれば……うんうん。これは有り寄りの有りっすね!」
「よし。じゃあ美岬の賛同ももらえたからその方向で進めるか。だが、本格的に今日の作業を始める前に、まずは一緒にお茶にしないか?」
「わーい。ティータイムいいっすね♪ ぜひぜひっ」
二人でかまどの所に戻ってくると、火にかけていたコッヘルの中のジュズダマの殻がいい感じに煮出されてハトムギ茶になっていたので、ハマグリ殻の湯呑みに注いで二人で一服する。
「あー、なんかまったりするっすねぇ」
「そうだな。座って温かいものを飲むと落ち着くよな。あ、茶請けにちょっと摘まむか?」
殻を剥き終わったスダジイの一部を生のままコッヘルで出してやる。
「わーい。おやつだっ! ……もぐ、あ、美味しい」
1㌢ぐらいの小さなどんぐりだが生のままでもそれなりに甘味もあって普通に旨い。煎ると香ばしさも加わって焼き甘栗みたいになってさらに旨くなるが、それは次回へのお楽しみだな。
「このほのかな甘味がいいんだよな」
「そっすねー。生のままでも普通に美味しいっすよね。そういえばどんぐり虫は入ってなかったっすか?」
「おう、入ってなかったぞ。中が腐ってて棄てたやつはそこそこあったけどな。これは去年のどんぐりだからもし虫が入ってたらとっくに穴を開けて出ていってると思うんだが、拾ってる時にチェックした限りだと穴空きどんぐりも無かったな。この島にはいないんじゃないか?」
「それならいいっすけどね」
「とりあえず秋に今年のどんぐりが収穫できるようになったらちゃんとチェックしてみたらいいかもな。一度水に入れてみれば虫入りは浮くからすぐ分かるし」
「あ、なるほど。そうやって見分けるんすね」
「どんぐり虫はあれはあれで旨いし」
「…………は? ……アレ食べるんすか?」
明らかに引いた様子の美岬に苦笑する。
「まあ気持ちは分かる。日本だと虫食はゲテモノ扱いだからな。東南アジアとかだと普通に屋台で虫料理売ってるから俺はもう慣れたが」
「あのコロコロうにょうにょしてる奴を食べるんすか?」
「おう。どんぐり虫はまだ白くてご飯粒サイズだから脚つきのバッタや甲虫よりはハードル低いぞ。まあ、ここは他にも食べるものは色々あるから無理に食わす気はないから安心しろ。……むしろあれは俺のおやつだから美岬にはやらん。俺が独り占めする」
「……あ、なんだろ? そういう言い方されるとちょっと食べてみたくなるっすけど」
「やめとけやめとけ。あれは花も恥じらう女子高生が食べるもんじゃない。俺が全部食ってやるから美岬は食べるな。いいね?」
「……さっき旨いって言ってたっすよね?」
「それはきっと空耳だ。食えんことはないがさほど旨いものではない」
「……ふーん。ちなみに食べる時はどうやって食べるんすか?」
「水に浮いた虫入りどんぐり入れ物にいれて陽当たりのいい場所に置いとくと穴を開けて逃げ出してくるから、そのまま生食してもいいし、軽く炒めるのもありだな」
「食感は?」
「噛むとプチプチしててちょっと甘味がある」
「ほーん。なんかそれだけ聞いてると普通に美味しそうっすね」
「いやいや、食べなくていいからな。てかさっきまで気持ち悪がってたのに適応力ありすぎだろ」
「それはもう食に関してはガクさんを信頼してるっすから。ガクさんが美味しいっていうなら本当に美味しいに違いないっすからね。にひひっ」
そう言いながらイイ笑顔で笑う美岬。これは口を滑らしたかな。
しばらくまったりとティータイムをしながら駄弁っているうちに崖の上の方に陽が差し始める。谷底まで陽が差すまでにはまだしばらくかかるだろうが今日も快晴だ。
「今日もいい天気……というか暑くなりそうっすね」
「だな。なるべく涼しいうちに色々作業を進めたいな」
「今日はどういう予定で動くっすか?」
「そうだなー……とりあえずやらなきゃいけないことを挙げていくと、昨日からのやりかけの塩作りと葛の繊維取りだろ、それとハンマーを仕上げて、昨日は結局出来なかった釣り針作りをしたいな。それと葛芋掘りもだな。美岬は?」
「んー……まずは焼き畑を耕して豆類はもう植えていきたいっすね。あと野菜用の畑の開拓も進めていきたいっす。まあ畑といっても穴を掘って痩せた砂土を除去してそこに腐葉土を詰め替えるぐらいでいいかなって感じっすけど」
「なるほど。俺も手伝った方がいいか?」
「やー、鍬が一振りしかないっすから、とりあえず焼き畑を耕すのはあたし一人でなんとかやってみるっす。たぶんそれだけで午前一杯は掛かっちゃうと思うっすから、今日新しい畑の開拓まで手をつけれるかは微妙っすね。むしろガクさんの方にこそ手伝いが必要じゃないっすか?」
「そうだな。葛芋掘りは手伝ってもらいたいな。あと、葛の繊維取りは美岬にも覚えてもらいたいから一緒にやった方がいいな」
「了解っす。じゃあ、午前中はそれぞれ一人でできる作業をやって、午後から一緒に作業するのでどうっすか?」
「おっけ。じゃあそういう予定でボチボチ動こうか」
「あ、待って待って」
「ん? ……おおっと!?」
早速立ち上がった俺を美岬が呼び止めてくるので振り向くと、美岬が俺の胸に飛び込んできたので抱き止める。
「午前中は別々に作業するんすから、お昼までのダーリン分のチャージが必要っす! ハグとチューを所望するっす」
「……お、おう」
なにこの可愛い生き物。
俺は美岬の希望通り、彼女をぎゅっと抱き締めてからキスして、俺自身もしっかりとヨメ分を補充させてもらったのだった。
【作者コメント】
穴の空いてるどんぐりは虫が出た後のものです。虫入りは外見からはほぼ見分けつかないですが、水に入れれば浮かぶのでそれで選別するのが一番楽ですね。
腕時計で確認すると6時前。昨日は寝るのが遅かったから起きるのもちょっと遅めだな。外はすでにかなり明るい。
「…………んぁ? ……ん、朝っすか?」
俺の身じろぎで美岬も目を覚ましたようだ。
「おう、おはよう。6時前だな。俺はトイレ行きたいから起きるけど美岬はどうする?」
「……おはよ……す。……んー、あたしもおトイレしたいから起きるっすぅ……ふぁ」
そう言いながらもまだ完全に目が覚めていないようでふにゃふにゃしている美岬を残して先に拠点から這い出してトイレに向かう。
用を足してその足で小川に向かい、顔を洗ってさっぱりしてから拠点に戻る。俺と入れ替わりで美岬もトイレに向かった。
一夜干しにしていた穴ダコやワカメやハマグリの剥き身の状態を確認してみると、まだ干し足りない感じだったので引き続き干しておく。
寝る前に新しく火を灯していたウッドキャンドルは完全に燃え尽きていた。海保や海自の救難ヘリやドローンには機体の下部に高性能の赤外線センサーが搭載されているから、例えウッドキャンドル程度の小さな火でも上空を通れば感知できるはずだ。
とりあえずあと数日ぐらいは無駄になるかもしれんが引き続き夜中にウッドキャンドルを灯しておこう。
さて、なにはともあれ、まずは火を起こすか。
昨夜寝る前に残っていた熾火はまとめてかまどに灰の中に埋めておいたので小枝で掘り起こしてみるとまだ火種は残っていたので、ファットウッドを削ったチップを使って火を起こしなおす。
火が着いて炎が安定したら、コッヘルに水とまだ残っていたジュズダマの殻を入れて火にかけて煮出し始める。
あー、コーヒーが飲みたいなぁ。
ふと、昨日拾ってきたスダジイのどんぐりの存在を思い出し、それを入れてあるビニール袋とペンチを取ってきて、どんぐりを割って中身と殻を分ける作業を始めたところにトイレと洗顔を済ませた美岬が戻ってくる。
「はー、さっぱりしたっす。……およ、ガクさんがそれやってるなら、あたしは今のうちに植物の世話をしてくるっすかね」
「おう。任せた」
「あいあい。お任せられ」
――ぱちん……ぺりっ……ぱちん……ぺりっ
ペンチでどんぐりを割り、殻を剥がして身を分ける。割る。剥がす。割る。剥がす。割る。剥がす……。無心になって続けていくうちに気づけばたくさんあったどんぐりを全部剥き終わっていた。だいたい手のひら2杯分ぐらいはあるな。
「……ふう、終わったか。あー、腰が痛ぇ……んー、美岬は?」
ずっと前屈みで作業していたのですっかり腰が痛くなってしまった。立ち上がって軽くストレッチしながら美岬を探すと、美岬は地面に断熱シートを広げて何か作業をしていた。
「何をしているんだ?」
「……あ、ガクさんの方は終わったっすか。あたしは植物の世話が一通り終わったんで昨日集めてきたハマエンドウの皮剥きやってるっす」
その言葉通り、美岬は枝豆よりちょっと小さいサイズの豆の皮剥きをしていた。カラスノエンドウみたいな小さい豆かと思ってたら以外と大きいんだな。
「ああ、醤油作りに使う豆だな。じゃあ俺も塩作りの続きをやらなきゃいかんな」
「んー、でも豆と塩の準備が出来ても熟成用の保存容器まだ無いから醤油作り始められないっすよね」
「あー、それなんだが、ふと思いついたんだがもしかしたらビニール袋で醤油とか味噌を作れるんじゃないか?」
「……おぉ! 確かにいけそうな気がするっす。……ただ、熟成期間は冷暗所での保管が必須になるっすけど、拠点だとちょっと温度高いと思うんすよね。そのへんはどうっすかね? ビニールだと断熱皆無なんでもろ外気温の影響受けちゃうっすけど」
「それなら……水源地のスダジイの大木には虚があるやつが結構あるよな。虚を保管庫がわりに使ってみるのもありだと思うんだがどうだ?」
「おぉ! その手があったっすか! んー、確かにあそこなら涼しいっすし、立ち木の虚をそのまま利用するなら手間もほとんどかからないからすぐに実行できるっすね。虚の中に袋が破れないようにクッションとして落ち葉を敷き詰めれば……うんうん。これは有り寄りの有りっすね!」
「よし。じゃあ美岬の賛同ももらえたからその方向で進めるか。だが、本格的に今日の作業を始める前に、まずは一緒にお茶にしないか?」
「わーい。ティータイムいいっすね♪ ぜひぜひっ」
二人でかまどの所に戻ってくると、火にかけていたコッヘルの中のジュズダマの殻がいい感じに煮出されてハトムギ茶になっていたので、ハマグリ殻の湯呑みに注いで二人で一服する。
「あー、なんかまったりするっすねぇ」
「そうだな。座って温かいものを飲むと落ち着くよな。あ、茶請けにちょっと摘まむか?」
殻を剥き終わったスダジイの一部を生のままコッヘルで出してやる。
「わーい。おやつだっ! ……もぐ、あ、美味しい」
1㌢ぐらいの小さなどんぐりだが生のままでもそれなりに甘味もあって普通に旨い。煎ると香ばしさも加わって焼き甘栗みたいになってさらに旨くなるが、それは次回へのお楽しみだな。
「このほのかな甘味がいいんだよな」
「そっすねー。生のままでも普通に美味しいっすよね。そういえばどんぐり虫は入ってなかったっすか?」
「おう、入ってなかったぞ。中が腐ってて棄てたやつはそこそこあったけどな。これは去年のどんぐりだからもし虫が入ってたらとっくに穴を開けて出ていってると思うんだが、拾ってる時にチェックした限りだと穴空きどんぐりも無かったな。この島にはいないんじゃないか?」
「それならいいっすけどね」
「とりあえず秋に今年のどんぐりが収穫できるようになったらちゃんとチェックしてみたらいいかもな。一度水に入れてみれば虫入りは浮くからすぐ分かるし」
「あ、なるほど。そうやって見分けるんすね」
「どんぐり虫はあれはあれで旨いし」
「…………は? ……アレ食べるんすか?」
明らかに引いた様子の美岬に苦笑する。
「まあ気持ちは分かる。日本だと虫食はゲテモノ扱いだからな。東南アジアとかだと普通に屋台で虫料理売ってるから俺はもう慣れたが」
「あのコロコロうにょうにょしてる奴を食べるんすか?」
「おう。どんぐり虫はまだ白くてご飯粒サイズだから脚つきのバッタや甲虫よりはハードル低いぞ。まあ、ここは他にも食べるものは色々あるから無理に食わす気はないから安心しろ。……むしろあれは俺のおやつだから美岬にはやらん。俺が独り占めする」
「……あ、なんだろ? そういう言い方されるとちょっと食べてみたくなるっすけど」
「やめとけやめとけ。あれは花も恥じらう女子高生が食べるもんじゃない。俺が全部食ってやるから美岬は食べるな。いいね?」
「……さっき旨いって言ってたっすよね?」
「それはきっと空耳だ。食えんことはないがさほど旨いものではない」
「……ふーん。ちなみに食べる時はどうやって食べるんすか?」
「水に浮いた虫入りどんぐり入れ物にいれて陽当たりのいい場所に置いとくと穴を開けて逃げ出してくるから、そのまま生食してもいいし、軽く炒めるのもありだな」
「食感は?」
「噛むとプチプチしててちょっと甘味がある」
「ほーん。なんかそれだけ聞いてると普通に美味しそうっすね」
「いやいや、食べなくていいからな。てかさっきまで気持ち悪がってたのに適応力ありすぎだろ」
「それはもう食に関してはガクさんを信頼してるっすから。ガクさんが美味しいっていうなら本当に美味しいに違いないっすからね。にひひっ」
そう言いながらイイ笑顔で笑う美岬。これは口を滑らしたかな。
しばらくまったりとティータイムをしながら駄弁っているうちに崖の上の方に陽が差し始める。谷底まで陽が差すまでにはまだしばらくかかるだろうが今日も快晴だ。
「今日もいい天気……というか暑くなりそうっすね」
「だな。なるべく涼しいうちに色々作業を進めたいな」
「今日はどういう予定で動くっすか?」
「そうだなー……とりあえずやらなきゃいけないことを挙げていくと、昨日からのやりかけの塩作りと葛の繊維取りだろ、それとハンマーを仕上げて、昨日は結局出来なかった釣り針作りをしたいな。それと葛芋掘りもだな。美岬は?」
「んー……まずは焼き畑を耕して豆類はもう植えていきたいっすね。あと野菜用の畑の開拓も進めていきたいっす。まあ畑といっても穴を掘って痩せた砂土を除去してそこに腐葉土を詰め替えるぐらいでいいかなって感じっすけど」
「なるほど。俺も手伝った方がいいか?」
「やー、鍬が一振りしかないっすから、とりあえず焼き畑を耕すのはあたし一人でなんとかやってみるっす。たぶんそれだけで午前一杯は掛かっちゃうと思うっすから、今日新しい畑の開拓まで手をつけれるかは微妙っすね。むしろガクさんの方にこそ手伝いが必要じゃないっすか?」
「そうだな。葛芋掘りは手伝ってもらいたいな。あと、葛の繊維取りは美岬にも覚えてもらいたいから一緒にやった方がいいな」
「了解っす。じゃあ、午前中はそれぞれ一人でできる作業をやって、午後から一緒に作業するのでどうっすか?」
「おっけ。じゃあそういう予定でボチボチ動こうか」
「あ、待って待って」
「ん? ……おおっと!?」
早速立ち上がった俺を美岬が呼び止めてくるので振り向くと、美岬が俺の胸に飛び込んできたので抱き止める。
「午前中は別々に作業するんすから、お昼までのダーリン分のチャージが必要っす! ハグとチューを所望するっす」
「……お、おう」
なにこの可愛い生き物。
俺は美岬の希望通り、彼女をぎゅっと抱き締めてからキスして、俺自身もしっかりとヨメ分を補充させてもらったのだった。
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穴の空いてるどんぐりは虫が出た後のものです。虫入りは外見からはほぼ見分けつかないですが、水に入れれば浮かぶのでそれで選別するのが一番楽ですね。
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