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7章.神々の思惑編
111話.決意
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「まじかぁ……」
ミレストン中心部に最近建築された大きな洋館、その書斎にクロムの嘆き声が響き渡っていた。
なぜなら、ゴランが先日の聖セイクリッド神国への侵攻に失敗したことについての報告をしたためである。
「クロム殿、不甲斐ない結果で申し訳ない……
ご依頼もこなせず無様な退却をしたことを……」
神妙な表情のゴランが謝罪の言葉を言い始めたところで、アキナから横やりが入った。
「ゴランさんは悪くないわよ!!
むしろ魔導王と言われる聖王を倒してこいっていう依頼がそもそも無茶苦茶なのよ!!
クロム! ちゃんと聞いてるの!!? 」
普段のアキナからは想像もつかないほどの剣幕に驚きを隠せないクロム。
そしてほぼ壊滅状態であったはずの聖セイクリッド神国軍の殲滅指示《せんめつしじ》がそれほど無茶な指示であったとも思えないのであった。
「あ、アキナさん、少し落ち着いて……
なんでそこまで怒ってるのか教えて欲しいんだけど……」
「はぁ……、クロムはこの世界の常識に疎いことをすっかり忘れてたわ……
魔導王とも呼ばれる聖セイクリッド神国の聖王って知ってる??」
「初耳だね、響きからは有名人って感じはするけどね」
「…… 聖セイクリッド神国はハイエルフが崇拝されていて統治者として君臨している国というのは前に説明したわよね。
そのハイエルフたちの頂点にいる存在が聖王よ。
そして、今の聖王は歴代の聖王が成し遂げることができなかった<精霊王>という精霊を統べる精霊と契約を成し遂げたの。
この偉業を称える意味を込めていつしか魔導王と呼ばれるようにもなった、そんな人よ」
「よくはわからんが…… なんかすごそうな人物だというのはわかったよ
ゴラン、早計な指示をしてしまってすまなかった」
アキナの説明を聞いたクロムは素直にゴランに謝罪した、世界有数の強者が相手にいるとはまったく想定していなかったためである。
ゴランはそんな謝罪は不要であることを伝えた上で、気になっていたことを伝えるのだった。
「実は気になることがありまして……」
「ん??」
「先ほども報告した内容なのですが、遭遇した強者は魔導王だけではありませんでした。
ギンの話によればオオカミ部隊を壊滅させたのは<剣聖の斬撃>と<魔導王の炎>であったと。」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「剣聖は自分が強くなること以外に興味がないと聞きます、ましてやどこかの国に肩入れするとは考えにくいです。
そして、魔導王は嫌悪しているといっていいほどの<人族嫌い>で有名です、自国から人族を全員追放させようとしたことが何度もあるほどに。
その二人が協力関係を築いて我らを撃退した、この事実が何を意味するのか……」
「確かに<不自然>、だな……
望んでもいない進軍をした<悪魔王>。
人となれ合うことを望まないのに<魔導王>と手を結んだ<剣聖>。
嫌悪している人族である<剣聖>と手を結んだ<魔導王>」
「……」
「誰かに何かを指示されたり強要される立場にないものたちが、ここ数日で立て続けに<不自然な行動>をしている……
…… やはりということか……」
「クロム??? 大丈夫??」
ゴランの言葉を聞いたクロムは厳しい表情で独り言を続けた。
そして何かに思い至ったように見えたクロムがより深刻そうな表情を浮かべたことをアキナは見逃さなかった。
「あぁ、大丈夫。
心配かけてごめんね。
ゴラン、聖セイクリッド神国軍はこっちが退却後どうなった?」
「追撃もなく、こちらの退却を確認後に聖都に戻ったと報告を受けています」
ゴランの言葉を聞いたクロムはある決意を胸に立ち上がった。
「ゴラン、引き続き聖セイクリッド神国の動向を監視してくれ。
そして、俺は急用ができたから少しミレストンを離れる」
決意と悲観、そんな感情を表情に浮かべるクロムは、みんなに背を向けて歩き出しつつナビに声をかけるのであった。
ミレストン中心部に最近建築された大きな洋館、その書斎にクロムの嘆き声が響き渡っていた。
なぜなら、ゴランが先日の聖セイクリッド神国への侵攻に失敗したことについての報告をしたためである。
「クロム殿、不甲斐ない結果で申し訳ない……
ご依頼もこなせず無様な退却をしたことを……」
神妙な表情のゴランが謝罪の言葉を言い始めたところで、アキナから横やりが入った。
「ゴランさんは悪くないわよ!!
むしろ魔導王と言われる聖王を倒してこいっていう依頼がそもそも無茶苦茶なのよ!!
クロム! ちゃんと聞いてるの!!? 」
普段のアキナからは想像もつかないほどの剣幕に驚きを隠せないクロム。
そしてほぼ壊滅状態であったはずの聖セイクリッド神国軍の殲滅指示《せんめつしじ》がそれほど無茶な指示であったとも思えないのであった。
「あ、アキナさん、少し落ち着いて……
なんでそこまで怒ってるのか教えて欲しいんだけど……」
「はぁ……、クロムはこの世界の常識に疎いことをすっかり忘れてたわ……
魔導王とも呼ばれる聖セイクリッド神国の聖王って知ってる??」
「初耳だね、響きからは有名人って感じはするけどね」
「…… 聖セイクリッド神国はハイエルフが崇拝されていて統治者として君臨している国というのは前に説明したわよね。
そのハイエルフたちの頂点にいる存在が聖王よ。
そして、今の聖王は歴代の聖王が成し遂げることができなかった<精霊王>という精霊を統べる精霊と契約を成し遂げたの。
この偉業を称える意味を込めていつしか魔導王と呼ばれるようにもなった、そんな人よ」
「よくはわからんが…… なんかすごそうな人物だというのはわかったよ
ゴラン、早計な指示をしてしまってすまなかった」
アキナの説明を聞いたクロムは素直にゴランに謝罪した、世界有数の強者が相手にいるとはまったく想定していなかったためである。
ゴランはそんな謝罪は不要であることを伝えた上で、気になっていたことを伝えるのだった。
「実は気になることがありまして……」
「ん??」
「先ほども報告した内容なのですが、遭遇した強者は魔導王だけではありませんでした。
ギンの話によればオオカミ部隊を壊滅させたのは<剣聖の斬撃>と<魔導王の炎>であったと。」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「剣聖は自分が強くなること以外に興味がないと聞きます、ましてやどこかの国に肩入れするとは考えにくいです。
そして、魔導王は嫌悪しているといっていいほどの<人族嫌い>で有名です、自国から人族を全員追放させようとしたことが何度もあるほどに。
その二人が協力関係を築いて我らを撃退した、この事実が何を意味するのか……」
「確かに<不自然>、だな……
望んでもいない進軍をした<悪魔王>。
人となれ合うことを望まないのに<魔導王>と手を結んだ<剣聖>。
嫌悪している人族である<剣聖>と手を結んだ<魔導王>」
「……」
「誰かに何かを指示されたり強要される立場にないものたちが、ここ数日で立て続けに<不自然な行動>をしている……
…… やはりということか……」
「クロム??? 大丈夫??」
ゴランの言葉を聞いたクロムは厳しい表情で独り言を続けた。
そして何かに思い至ったように見えたクロムがより深刻そうな表情を浮かべたことをアキナは見逃さなかった。
「あぁ、大丈夫。
心配かけてごめんね。
ゴラン、聖セイクリッド神国軍はこっちが退却後どうなった?」
「追撃もなく、こちらの退却を確認後に聖都に戻ったと報告を受けています」
ゴランの言葉を聞いたクロムはある決意を胸に立ち上がった。
「ゴラン、引き続き聖セイクリッド神国の動向を監視してくれ。
そして、俺は急用ができたから少しミレストンを離れる」
決意と悲観、そんな感情を表情に浮かべるクロムは、みんなに背を向けて歩き出しつつナビに声をかけるのであった。
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