108 / 147
6章.ダイン獣王国編
100話.様々な思惑
しおりを挟む
ダイン王はため息をついていた。
クロムの急な来訪から始まり、悪魔急襲の報告そして、その討伐にクロムが向かうという急転すぎる展開にダイン王たちは混乱を極めていた。
しかしそこは圧倒的なカリスマ性を有するダイン王、この混乱を1日程度で収束させたのだった。
「やっと落ち着いてきたようじゃの」
「かなりの混乱でしたけど、ダイン王のおかげでかなり早く収束できましたね」
王座にぐったりとした様子で座り込むダイン王にタケルが労うように声をかけた。
そして少し冷静さを取り戻したことにより、クロムからの伝言を思い出した。
「そういえばダイン王、クロムさんからの伝言があります。」
「伝言じゃと?」
「はい、ミレストンに向かう間際に2つの依頼を残していきました。
もしものために防衛の準備をしてほしいこと、帰ってきたら重大な話があるからよろしくとのことでした。」
「わかった……
タケルよ、防衛レベルを引き上げさせよ。
…… クロムが来たら起こしてくれ、ワシは少し寝る」
それだけを言い残すとダインは自室に戻っていった。
クロムの名を出したときから明らかに不機嫌になり、さらにそれを隠そうともしないダイン。
タケルは王のそんな言動をただ静かに見送りながら苦笑するのであった。
タケルが各方面に防衛レベルの引き上げの指示を出して回っていると、見知らぬ者と一緒にいるクロムの姿を見つけた。
「クロムさん!! もう戻ったのですか!?」
「あぁ、タケル。 ただいま。
早速で悪いが…… ダインと話し合いの準備を始めてくれ」
「それはいいのですが…… そちらの方は?」
「それもあとで説明するよ、あと俺の仲間も数人ほど間もなく来るからそいつらも通してほしい」
「わかりました……
とりあえずはダイン王に報告してきますよ、あとで声をかけますのでそれまでは謁見前に待機していただいたお部屋にてお待ちください」
タケルが準備をしている間指定された部屋にて待っているクロムとアキナとバロン。
ここまでずっと一言も発しないバロンのことが気になったクロムはそのことを訪ねてみることにした。
「バロンどうしたんだ?
この国に来てからずっと黙っているけど」
「クロム殿に何か思惑があるうえに、私は襲撃の張本人。
クロム殿がダイン王に紹介をするまでは黙っているのが得策…… と考えただけですよ」
クロムはバロンの思惑を有難いと感じ、そのような言動を自分の意志でとれるバロンの存在を頼もしいと感じた。
それと共に、バロンが仲間になってくれたことへの感謝も深く感じるのであった。
「兄貴、ナビちゃんから急いでいけって伝言が来たけどなんかあったのか?
それに隣のおにーさんは誰なんだ??」
「私のところにもその伝言あったけど……
クロムさんどうしたの?」
急にクロムたちの目の前に<ルーム>の出口が開くと、中から聞き慣れた声が響いてきた。
「カルロ、ルーナ。
急に呼び出して悪いね、バロンの紹介もしたいところだが……
その前に頼んでおいたことの報告を先にお願いしたい」
クロムはバロンの紹介をする時間すら惜しんでミレストンに向かう前に二人に頼んでおいたことの報告を求めた。
なぜならその内容はこのあとに控えているダインとの話し合いに重要な意味を持つ内容であるからだった。
「あぁ、そのことならバッチリだぜ。
さすがに依頼内容に対して日数が短すぎるけどな」
「私のほうも無事OKのお返事をもらうことができましたよ。
ただ、やはりもう少し時間的に余裕のある依頼がうれしいですね」
二人とも依頼内容は問題なくこなしていることを告げつつ、それに使える時間が短すぎたことを苦笑しながら口をそろえるのであった。
「あぁ、そのことについてはすまなかったよ。
どうしても急ぐ必要があったのと……
<ルーム>を使えるし、二人なら問題なくできるだろうとも思っての依頼だったんだけど?」
クロムはイジワルそうな笑顔を浮かべながらそう言うとその場にいる人たちは苦虫を噛み潰したような顔でお互いに見合うしかなかった。
「はぁ……
クロムの悪い癖がでてるよ?」
そんなアキナの言葉で皆が笑い始めるのであった。
―― さて、準備は問題ない。
―― ここからが本番だな
そんなクロムの想いに気づくものは、まだ誰もいないのであった。
クロムの急な来訪から始まり、悪魔急襲の報告そして、その討伐にクロムが向かうという急転すぎる展開にダイン王たちは混乱を極めていた。
しかしそこは圧倒的なカリスマ性を有するダイン王、この混乱を1日程度で収束させたのだった。
「やっと落ち着いてきたようじゃの」
「かなりの混乱でしたけど、ダイン王のおかげでかなり早く収束できましたね」
王座にぐったりとした様子で座り込むダイン王にタケルが労うように声をかけた。
そして少し冷静さを取り戻したことにより、クロムからの伝言を思い出した。
「そういえばダイン王、クロムさんからの伝言があります。」
「伝言じゃと?」
「はい、ミレストンに向かう間際に2つの依頼を残していきました。
もしものために防衛の準備をしてほしいこと、帰ってきたら重大な話があるからよろしくとのことでした。」
「わかった……
タケルよ、防衛レベルを引き上げさせよ。
…… クロムが来たら起こしてくれ、ワシは少し寝る」
それだけを言い残すとダインは自室に戻っていった。
クロムの名を出したときから明らかに不機嫌になり、さらにそれを隠そうともしないダイン。
タケルは王のそんな言動をただ静かに見送りながら苦笑するのであった。
タケルが各方面に防衛レベルの引き上げの指示を出して回っていると、見知らぬ者と一緒にいるクロムの姿を見つけた。
「クロムさん!! もう戻ったのですか!?」
「あぁ、タケル。 ただいま。
早速で悪いが…… ダインと話し合いの準備を始めてくれ」
「それはいいのですが…… そちらの方は?」
「それもあとで説明するよ、あと俺の仲間も数人ほど間もなく来るからそいつらも通してほしい」
「わかりました……
とりあえずはダイン王に報告してきますよ、あとで声をかけますのでそれまでは謁見前に待機していただいたお部屋にてお待ちください」
タケルが準備をしている間指定された部屋にて待っているクロムとアキナとバロン。
ここまでずっと一言も発しないバロンのことが気になったクロムはそのことを訪ねてみることにした。
「バロンどうしたんだ?
この国に来てからずっと黙っているけど」
「クロム殿に何か思惑があるうえに、私は襲撃の張本人。
クロム殿がダイン王に紹介をするまでは黙っているのが得策…… と考えただけですよ」
クロムはバロンの思惑を有難いと感じ、そのような言動を自分の意志でとれるバロンの存在を頼もしいと感じた。
それと共に、バロンが仲間になってくれたことへの感謝も深く感じるのであった。
「兄貴、ナビちゃんから急いでいけって伝言が来たけどなんかあったのか?
それに隣のおにーさんは誰なんだ??」
「私のところにもその伝言あったけど……
クロムさんどうしたの?」
急にクロムたちの目の前に<ルーム>の出口が開くと、中から聞き慣れた声が響いてきた。
「カルロ、ルーナ。
急に呼び出して悪いね、バロンの紹介もしたいところだが……
その前に頼んでおいたことの報告を先にお願いしたい」
クロムはバロンの紹介をする時間すら惜しんでミレストンに向かう前に二人に頼んでおいたことの報告を求めた。
なぜならその内容はこのあとに控えているダインとの話し合いに重要な意味を持つ内容であるからだった。
「あぁ、そのことならバッチリだぜ。
さすがに依頼内容に対して日数が短すぎるけどな」
「私のほうも無事OKのお返事をもらうことができましたよ。
ただ、やはりもう少し時間的に余裕のある依頼がうれしいですね」
二人とも依頼内容は問題なくこなしていることを告げつつ、それに使える時間が短すぎたことを苦笑しながら口をそろえるのであった。
「あぁ、そのことについてはすまなかったよ。
どうしても急ぐ必要があったのと……
<ルーム>を使えるし、二人なら問題なくできるだろうとも思っての依頼だったんだけど?」
クロムはイジワルそうな笑顔を浮かべながらそう言うとその場にいる人たちは苦虫を噛み潰したような顔でお互いに見合うしかなかった。
「はぁ……
クロムの悪い癖がでてるよ?」
そんなアキナの言葉で皆が笑い始めるのであった。
―― さて、準備は問題ない。
―― ここからが本番だな
そんなクロムの想いに気づくものは、まだ誰もいないのであった。
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
種族統合 ~宝玉編~
カタナヅキ
ファンタジー
僅か5歳の若さで「用済み」という理不尽な理由で殺された子供の「霧崎 雛」次に目覚めるとそこは自分の知る世界とは異なる「世界」であり、おおきく戸惑う。まるでRPGを想像させる様々な種族が入り乱れた世界観であり、同時に種族間の対立が非常に激しかった。
人間(ヒューマン)、森人族(エルフ)、獸人族(ビースト)、巨人族(ジャイアント)、人魚族(マーメイド)、そしてかつては世界征服を成し遂げた魔族(デーモン)。
これは現実世界の記憶が持つ「雛」がハーフエルフの「レノ」として生きて行き、様々な種族との交流を深めていく物語である。
異世界はモフモフチートでモフモフパラダイス!
マイきぃ
ファンタジー
池波柔人は中学2年生。14歳の誕生日を迎える直前に交通事故に遭遇し、モフモフだらけの異世界へと転生してしまった。柔人は転生先で【モフった相手の能力を手に入れることのできる】特殊能力を手に入れた。柔人は、この能力を使ってモフモフハーレムを作ることができるのだろうか!
※主人公が突然モヒカンにされたり(一時的)、毛を刈られる表現があります。苦手な方はご注意ください。
モフモフな時に更新します。(更新不定期)
※この作品はフィクションです。実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
カバーイラストのキャラクターは
萌えキャラアバター作成サービス「きゃらふと」で作成しています。
きゃらふとhttp://charaft.com/
背景 つくx2工房
多重投稿有
気がついたら、世界最強戦力になってました。~天才(天災?)の異世界英雄譚~
アクア
ファンタジー
普通に生きて、普通に過ごしてた中学生、円慧寺源哉(えんけいじ げんや)。しかし、不慮の事故により命を落す。
気がつくとそこは、真っ白の世界。目の前に土下座をする神。どうやら手違いがあったようで、神(ポンコツ)の全力サポート(やりすぎ)と最強能力付きで、転生(正しくは転移)することとなった。持ち前の知識と技術で国家を世界一の国家とし、世界統一を目指す。天才(天災)による、快進撃が今始まる!
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
推しの死亡フラグを折りたい!
綾里 ハスミ
ファンタジー
美桜は気づくと、大好きなゲーム『ケムプフェンエーレ』の世界に転生していた。こうなったら、大好きな推しであるシメオン第二王王子の死亡フラグを折るしかない!!
【学習技能】と言うチートスキルを所持して、果たして美桜は無事に、シメオン王子の死亡フラグを折れるのか!?
■こちらの作品は、恋愛要素2割:戦闘要素8割の作品です。戦争と恋愛が同時進行して行くお話が好きな方にオススメします(・∀・)
カイ~魔法の使えない王子~
愛野進
ファンタジー
魔法の使えない王子カイが出会ったのは、想いを武器に変える少女イデアだった。
Boy Meets Girlから始まる、世界を変える王道ファンタジー開幕。
カイ「イデア、俺達の力見せてやろうぜ!」
イデア「うん!」
???「俺達のとか言って、結局イデア様の力ですよね? 自分のじゃないですよね? よくもまぁそんな大それたことを言えたもんですね」
カイ「っ、いやエイラお前侍女じゃん!? 俺王子じゃん!? 何でそんなに強く当たれるんだよ!」
エイラ「イデア様も人を選んだ方がいいですよ?あのポンコツンじゃなくて」
イデア「ポンコツでもカイがいいのです」
カイ「いや無視するな、ていうかポンコツンって何だよ、っていうかイデアも俺の事ポンコツだと思ってね!?」
エイラ「ポンコツンの意味分かってるじゃないですか(^▽^)」
……シリアスとおふざけを反復横跳びする王道ファンタジー開幕。
お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!
林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。
夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。
そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ?
「モンスターポイント三倍デーって何?」
「4の付く日は薬草デー?」
「お肉の日とお魚の日があるのねー」
神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。
※他サイトにも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる