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5章.遭遇編
58話.失意の中
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ルームに戻ってきたクロムは終始無言であった。
無言のままではあるが、その心中を嫌というほど察することができてしまったアキナたちは、かける言葉を見つけることができずにいた。
しばらくした後、居たたまれない空気に耐えかねたカルロが口を開いた。
「なぁ、兄貴。
話が上手くいかなかったことだけは、その様子からわかるが……
どんな話になったのか、俺たちにも教えてもらえないか?」
クロムはこの時まで2人にどんな話し合いになったのかを伝えてなかったことに気が付いていなかった。
それほどまでに平常心を失ってしまい、心配をかけてしまったことをクロムは素直に二人に謝った。
そして、クロムはゆっくりと話を始めた。
ダンとサラカは個人的にはクロムのことを信頼しているが二人とも立場的にはクロムを認めるわけにはいかないこと。
ケインは明確に敵対の意思を表明したこと。
カルートは勇者という立場も含めて王都奪還にクロムが参加することを辞退してほしいということ。
4人の意見を聞いたクロムはダイン獣王国に向かうつもりであるとだけ言い残して、素直にその場を後にしたことを。
「想像はしていた事態の一つではあるけど……
ダンさんぐらいは……」
「俺にはギルドマスターという立場がどんなもんなのかよくわかんないけど、団体の長なら個人と立場で答えが違うってのはどうしても起こるもんだしな」
「アキナ……
カルロ……
俺はこれからのことを未だに決めかねているというのが本音だ、二人の意見を聞かせてほしい」
クロムはこれからの方針について、二人に相談することにした。
思えばいつもクロムが思うがままにみんなを連れまわしていた。
仲間である以上、ちゃんと相談してみんなで方針を決めるべきであると思ったのだった。
するとアキナが自分たちの今後についてではなく、離れることになったカロライン王国についてを話し始めた。
カロライン王国は人族至上主義の国であるため獣人族である自分には良い思い入れはないが、このまま見捨てるのは嫌だと。
それにはクロムも同意見ではあるのだが、助力を断られている以上できることは限られているのであった。
「あのメンバーに任せたらどんな結果になるのか、兄貴にもわかってるんだろ?」
「……ん? まぁ……
間違いなく蹂躙されて全滅…… なんだろうな。
かといって俺たちも確実に勝てるとは限らないぞ?
特に俺の腹に穴をあけてくれた奴……
どんなやつなのかすらわからないが間違いなく相当な手練れだ……」
「そいつの相手は兄貴とアキナに任せるさ。
俺たちは兄貴のリベンジのための露払いをするだけだ。
ギンたちに加えてゴランたちもいるしな、こっちは余裕で雑魚どもを駆逐できると思うぞ」
「あははは、カルロさんはもうやる気まんまんだね?
さてさて、クロムくんは主としてどう答えるのかな?」
アキナは小悪魔のような笑顔を浮かべつつ、答えの決まった質問をクロムに投げかけるのだった。
「お前たちなぁ……
仮にうまく王都奪還ができたとしても……
俺たちが侵略者扱いされる可能性も十分あるんだぞ?」
「そんときは完全にカロライン王国を見限ればいいだけだし。
それに俺たちは王都奪還をするんじゃないぞ?」
「ん??」
「俺たちは主のリベンジ作戦を実行するだけ!
相手を排除し終えたら、今度こそ旅立てばいいんじゃないか?」
クロムはカルロの少し横暴であるこの意見に救われた気分になり、自分がダンたちに拒絶されたことで臆病にもなっていたことを自覚すると同時に苦笑がこみ上げてくるのであった。
「あはははははは、簡単に言いやがって……
でも確かに借りは早めに返しておかないとだな!!」
無言のままではあるが、その心中を嫌というほど察することができてしまったアキナたちは、かける言葉を見つけることができずにいた。
しばらくした後、居たたまれない空気に耐えかねたカルロが口を開いた。
「なぁ、兄貴。
話が上手くいかなかったことだけは、その様子からわかるが……
どんな話になったのか、俺たちにも教えてもらえないか?」
クロムはこの時まで2人にどんな話し合いになったのかを伝えてなかったことに気が付いていなかった。
それほどまでに平常心を失ってしまい、心配をかけてしまったことをクロムは素直に二人に謝った。
そして、クロムはゆっくりと話を始めた。
ダンとサラカは個人的にはクロムのことを信頼しているが二人とも立場的にはクロムを認めるわけにはいかないこと。
ケインは明確に敵対の意思を表明したこと。
カルートは勇者という立場も含めて王都奪還にクロムが参加することを辞退してほしいということ。
4人の意見を聞いたクロムはダイン獣王国に向かうつもりであるとだけ言い残して、素直にその場を後にしたことを。
「想像はしていた事態の一つではあるけど……
ダンさんぐらいは……」
「俺にはギルドマスターという立場がどんなもんなのかよくわかんないけど、団体の長なら個人と立場で答えが違うってのはどうしても起こるもんだしな」
「アキナ……
カルロ……
俺はこれからのことを未だに決めかねているというのが本音だ、二人の意見を聞かせてほしい」
クロムはこれからの方針について、二人に相談することにした。
思えばいつもクロムが思うがままにみんなを連れまわしていた。
仲間である以上、ちゃんと相談してみんなで方針を決めるべきであると思ったのだった。
するとアキナが自分たちの今後についてではなく、離れることになったカロライン王国についてを話し始めた。
カロライン王国は人族至上主義の国であるため獣人族である自分には良い思い入れはないが、このまま見捨てるのは嫌だと。
それにはクロムも同意見ではあるのだが、助力を断られている以上できることは限られているのであった。
「あのメンバーに任せたらどんな結果になるのか、兄貴にもわかってるんだろ?」
「……ん? まぁ……
間違いなく蹂躙されて全滅…… なんだろうな。
かといって俺たちも確実に勝てるとは限らないぞ?
特に俺の腹に穴をあけてくれた奴……
どんなやつなのかすらわからないが間違いなく相当な手練れだ……」
「そいつの相手は兄貴とアキナに任せるさ。
俺たちは兄貴のリベンジのための露払いをするだけだ。
ギンたちに加えてゴランたちもいるしな、こっちは余裕で雑魚どもを駆逐できると思うぞ」
「あははは、カルロさんはもうやる気まんまんだね?
さてさて、クロムくんは主としてどう答えるのかな?」
アキナは小悪魔のような笑顔を浮かべつつ、答えの決まった質問をクロムに投げかけるのだった。
「お前たちなぁ……
仮にうまく王都奪還ができたとしても……
俺たちが侵略者扱いされる可能性も十分あるんだぞ?」
「そんときは完全にカロライン王国を見限ればいいだけだし。
それに俺たちは王都奪還をするんじゃないぞ?」
「ん??」
「俺たちは主のリベンジ作戦を実行するだけ!
相手を排除し終えたら、今度こそ旅立てばいいんじゃないか?」
クロムはカルロの少し横暴であるこの意見に救われた気分になり、自分がダンたちに拒絶されたことで臆病にもなっていたことを自覚すると同時に苦笑がこみ上げてくるのであった。
「あはははははは、簡単に言いやがって……
でも確かに借りは早めに返しておかないとだな!!」
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