2 / 3
留学生
しおりを挟む
話しかければ無視されるのは当たり前。
無視というか、存在そのものを認識していないかのような振る舞いをされる。
まあ、精神的なぶんには構わない。
所詮は私は平民で、他の生徒は貴族だ。
いくら平等をうたったところで、住む世界が天と地ほど違うのだ。まあ、いきなり仲良くしろと言われても無理があるのだろう。
けれど。
「こういう、物理的なのは困るのよね」
痛いのは嫌いだし。
でも、まだ教科書がインクで真っ青になってないだけましかもしれない。私の血がたれないように気を付けたおかげで、教科書が読めなくなったわけではないし!
なんといっても私の目標は、いい就職先を見つけること。
そのために、今の成績を維持しつつ学園を卒業しなければならない。
「まっててね、カイ」
私が学園を卒業する頃には、カイは7才だ。
そのころに、カイが思う存分好きな道を選べるように、お姉ちゃん頑張るから。
まあ、一月もすれば、平民と一緒に勉強することにもなれるでしょ。
……なーんて、思っていた時期もありました。ええ。
放課後、今日も一人でグループワークの資料をまとめていた。
これは、他のグループの子が帰ったから……じゃない。
誰も私とグループを組みたがらず、だったら一人でやってねと教師にまで匙を投げられたからだ。
楽でいいけどね!
でも、いくら他人とあわせる必要がない分楽だと言っても本来なら五人でするところを一人でするのは面倒かも。
って、ちょっとまって、今書いたこの落書きめちゃくちゃうまくない?
これをこうして、前世でいうパラパラ漫画に──。
「……なに、してるの?」
「!?」
突然声をかけられて驚いて、椅子をガタンと揺らしてしまった。けれど、その様子を気にした様子もなく、再び尋ねてくる。
「……なにしてるの?」
真っ黒な瞳に真っ黒な髪。
この国ではありえないほど明度を持たないその容姿。
その容姿から、距離を置かれている彼は、遥か遠い異国からきた留学生だという。
けれど、彼は、私と違い、いじめられていなかった。
なんだろう。
どこか、神秘的な雰囲気があるからかな。
「落書きをして遊んでたの」
私がそういうと、彼は興味深そうに目を瞬かせた。
「落書き?」
私は彼──確か名前はシキだったと思う──に、落書きを見せる。
「……ふぅん。上手だね。画家になれるんじゃない?」
整っているその顔を少し、和らげて言われた言葉に驚く。
それは流石に大袈裟すぎて、からかわれている……と感じてもいいはずだけど、彼の言葉は違った。
本当に思ったことを口にしただけ。
そんな気がする。
「……ありがとう」
だから、私も、笑顔でそう言った。
「……?」
彼の疑問は解決したはず。だから、立ち去るんだろうな、と思っていたら、意外にも、シキは私のひとつ前の椅子に座り、こちらを向いた。
「ねぇ、君は、なんでいじめられてるの?」
無視というか、存在そのものを認識していないかのような振る舞いをされる。
まあ、精神的なぶんには構わない。
所詮は私は平民で、他の生徒は貴族だ。
いくら平等をうたったところで、住む世界が天と地ほど違うのだ。まあ、いきなり仲良くしろと言われても無理があるのだろう。
けれど。
「こういう、物理的なのは困るのよね」
痛いのは嫌いだし。
でも、まだ教科書がインクで真っ青になってないだけましかもしれない。私の血がたれないように気を付けたおかげで、教科書が読めなくなったわけではないし!
なんといっても私の目標は、いい就職先を見つけること。
そのために、今の成績を維持しつつ学園を卒業しなければならない。
「まっててね、カイ」
私が学園を卒業する頃には、カイは7才だ。
そのころに、カイが思う存分好きな道を選べるように、お姉ちゃん頑張るから。
まあ、一月もすれば、平民と一緒に勉強することにもなれるでしょ。
……なーんて、思っていた時期もありました。ええ。
放課後、今日も一人でグループワークの資料をまとめていた。
これは、他のグループの子が帰ったから……じゃない。
誰も私とグループを組みたがらず、だったら一人でやってねと教師にまで匙を投げられたからだ。
楽でいいけどね!
でも、いくら他人とあわせる必要がない分楽だと言っても本来なら五人でするところを一人でするのは面倒かも。
って、ちょっとまって、今書いたこの落書きめちゃくちゃうまくない?
これをこうして、前世でいうパラパラ漫画に──。
「……なに、してるの?」
「!?」
突然声をかけられて驚いて、椅子をガタンと揺らしてしまった。けれど、その様子を気にした様子もなく、再び尋ねてくる。
「……なにしてるの?」
真っ黒な瞳に真っ黒な髪。
この国ではありえないほど明度を持たないその容姿。
その容姿から、距離を置かれている彼は、遥か遠い異国からきた留学生だという。
けれど、彼は、私と違い、いじめられていなかった。
なんだろう。
どこか、神秘的な雰囲気があるからかな。
「落書きをして遊んでたの」
私がそういうと、彼は興味深そうに目を瞬かせた。
「落書き?」
私は彼──確か名前はシキだったと思う──に、落書きを見せる。
「……ふぅん。上手だね。画家になれるんじゃない?」
整っているその顔を少し、和らげて言われた言葉に驚く。
それは流石に大袈裟すぎて、からかわれている……と感じてもいいはずだけど、彼の言葉は違った。
本当に思ったことを口にしただけ。
そんな気がする。
「……ありがとう」
だから、私も、笑顔でそう言った。
「……?」
彼の疑問は解決したはず。だから、立ち去るんだろうな、と思っていたら、意外にも、シキは私のひとつ前の椅子に座り、こちらを向いた。
「ねぇ、君は、なんでいじめられてるの?」
0
お気に入りに追加
385
あなたにおすすめの小説
【本編完結】婚約破棄されて嫁いだ先の旦那様は、結婚翌日に私が妻だと気づいたようです
八重
恋愛
社交界で『稀代の歌姫』の名で知られ、王太子の婚約者でもあったエリーヌ・ブランシェ。
皆の憧れの的だった彼女はある夜会の日、親友で同じ歌手だったロラに嫉妬され、彼女の陰謀で歌声を失った──
ロラに婚約者も奪われ、歌声も失い、さらに冤罪をかけられて牢屋に入れられる。
そして王太子の命によりエリーヌは、『毒公爵』と悪名高いアンリ・エマニュエル公爵のもとへと嫁ぐことになる。
仕事を理由に初日の挨拶もすっぽかされるエリーヌ。
婚約者を失ったばかりだったため、そっと夫を支えていけばいい、愛されなくてもそれで構わない。
エリーヌはそう思っていたのに……。
翌日廊下で会った後にアンリの態度が急変!!
「この娘は誰だ?」
「アンリ様の奥様、エリーヌ様でございます」
「僕は、結婚したのか?」
側近の言葉も仕事に夢中で聞き流してしまっていたアンリは、自分が結婚したことに気づいていなかった。
自分にこんなにも魅力的で可愛い奥さんが出来たことを知り、アンリの溺愛と好き好き攻撃が止まらなくなり──?!
■恋愛に初々しい夫婦の溺愛甘々シンデレラストーリー。
親友に騙されて恋人を奪われたエリーヌが、政略結婚をきっかけにベタ甘に溺愛されて幸せになるお話。
※他サイトでも投稿中で、『小説家になろう』先行公開です
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります
みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」
私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。
聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?
私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。
だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。
こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。
私は誰にも愛されていないのだから。
なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。
灰色の魔女の死という、極上の舞台をー
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる