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黄色い薔薇の花言葉

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「なん、で……」
辛うじて、言葉になったのは、疑問だった。なぜ、貴方がここにいるの。

 「親切な、銀の髪の少女が教えてくれたんだ。コーデリアという女性は、ここで働いていると」

 彼が、カイルがそう言って差し出した、薔薇の花束を受けとる。黄色い薔薇だった。薔薇は、好きだ。

 そう思って、否定する。違う、私が好きなのは、ガーベラだ。誰だっただろう、緊張に震えながらガーベラの花束を差し出したのは。薔薇の甘い香りがまとわりつく。そこだけが、切り取られたように、思い出せない。

 「何を考えている? 俺の番、俺だけを見て」
「……っあ」

 とろりとした菫色の瞳で、微笑まれるとなにも考えられなくなる。そうだ、それでいい。本当に?

 「まぁ、熱烈ね! お邪魔してもなんだから」
そう言って、去っていく同僚を引き留めようとして、その手をからめとられた。

 「……俺の、俺だけの、運命。だから、これはいらないな」
左手の薬指に着けていた指輪が抜き取られそうになる。それは、私の、大切な──。

 ──コーデリア、僕と結婚してくれ。

 そう言ってこの指輪をはめてくれたのは、誰だっただろうか。

 ──番じゃないかもしれない。でも、僕は君を愛してる。君以上に、愛しい人なんていない。

 私に、そう言ってくれたのは。

 そうだ、どうして、貴方を忘れられただろう。



「……ジャレッド」

 一度その名を呟くと、後から後から愛しさが込み上げる。そうだ、私が愛しているのは、ジャレッドだ。

 「やめて、下さい」
何とか目をそらすと、手を振り払う。危ない。もう少しで、私たちの日々の証明が失われるところだった。そんなことになったら、後悔してもしきれない。

 「私は、貴方と一緒になることはできません」
「どうして? 俺たちは、こんなにも惹かれあっているのに」

 そうかもしれない。だって、目が合うだけで、体の自由が聞かなくなる。頭の中が、カイルのことでいっぱいになる。でも、それでも。

 「私は、ジャレッド以外を愛することは、ありません」
きっぱりと言い切った私に、カイルは哀れむような目をむけた。
「……可哀想な、俺の番。まだ、彼を信じているんだね」

 「……え?」
「彼ならさっき、彼の番とこの街を出ていったよ」
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