星に祈りをかけるなら、

夕立悠理

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そのろく

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ライオネルって、もしかして。もしかしなくても。
「大魔法使いのライオネルさん……ですか?」
私が恐る恐るそう尋ねると、リオンさんは頷いた。

 「ああ、そうだ」

ライオネルさん。噂でしか知らないけれど、どういう人なんだろう。そういえば、容姿の噂以外に、とっても冷酷な人だっていう噂もあったわね。そんな人の元でやっていけるのだろうか。

 「あのやっばり、私……」
宿屋に戻りたい。そう言い終わる前に遮られた。
「持つものは尽くすべきだ。ましてや、それが全属性持ちならなおさら」

 そういえば、属性テストとか。全属性とか。属性ってなんだろう。
「全属性って、なんですか?」
「魔法には属性があって適正がある魔法しか使えない」

 リオンさんの説明によると、魔法には、土、水、火、風、黒、白という属性に分類されるらしい。その中でも黒は精神に関わる魔法、白は医療用に使われる魔法だ。私の全属性持ちというのは、全属性に適正があるという意味らしかった。

 「とにかく、お前はライオネルの元で働いてもらう。あいつの元で、魔法を学び、我が国の役に立て」




 魔法使いは皆王城の近くの寮で生活をするらしい。さすがに大魔法使いともなれば、王城の一室が与えられるみたいだけれど、私は魔法使いになった……というか、見習いだ。服や階級を示す玉も魔法使い見習いのものを与えられた。私がライオネルさんの元で一人前になれれば、上級魔法使いになれるみたいだけれど。

 「はぁ」
寮は一人部屋なのが気楽だった。リオンさんにつれられ食堂で夕食をとっている間、注目されているのがわかった。リオンさんによると魔法使いは通例皆魔法学園に通うから、王城で働いている人たちは大なり小なり知り合いらしい。そこに、全く見覚えのない私が現れたのだ。それも見習いとして。注目を集めるのも無理はなかった。

 ベッドに転がったものの、環境の変化についていけないわ。だって、私はつい最近まで村で暮らしていて、その暮らしはずっとつづくのだと思ってた。

 それがまさか、村を出て、王城で働くなんて。

 『君は、もう必要ないんだ』


 ロイドに言われた言葉が甦る。魔法使いになれれば、誰かに必要とされる私になれるのかな。今度こそ、誰かの特別な存在に──。
そんなことを考えながら、目を閉じた。
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