次女ですけど、何か?

夕立悠理

文字の大きさ
上 下
57 / 59
高校生編

57

しおりを挟む
「あなたが、好きです」

言い終わって、深く息をつく。頬が熱い。告白って、こんなに緊張するんだな。淳お兄様の表情を伺うと、一瞬きょとん、とした顔をして、それから頷いた。

「僕も楓が好きだよ。……どうしたの、急に改まって」

ち、違う! これ絶対勘違いされている。私が言っているのは、異性としての好き、なのに、おそらく淳お兄様は親愛のそれと勘違いなさっているのだろう。そういえば、幼い頃は気軽に大好きだの、好きだの言いまくってたもんなあ。自分のことながら、頭が痛くなる。


 わかっていたが、もうこれは、完全なる脈ナシなのでは……? と思ったが、前川の頑張れよ、の言葉がよみがえったので、もう一度挑戦する。


 「いえ、そうではなくて。好きなんです、淳お兄様のことが。……その、異性として」

うん、ここまで言えば、流石に勘違いされないだろう。言っていて、すごく恥ずかしくなってくる。今すぐ、この場から立ち去りたい。

「……えっ」

淳お兄様は、とても驚いた顔をした。それは、そうだろう。妹程度にしか思っていなかった、従妹から告白されたのだ。戸惑いは、相当なものだろう。


 「困らせてしまって、ごめんなさい。ただ、それだけ伝えたかったんです。それじゃあ」

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。やっぱり告白何て、するんじゃなかった。今すぐ、この場から立ち去ろう。幸いにも、もう別荘を出る車は用意されているのだ。


 早口で言って、立ち去ろうとすると、手首を掴まれた。

「待って、楓!」

「待てません! 離してください!!」

淳お兄様の顔が見れずに俯く。これから、聞かされるのは想いを受け取れない、という言葉だろう。やっぱり、私にはその言葉を聞くほどの勇気はない。



 「だって、零次くんが……」

淳お兄様は、明らかに戸惑った声だった。

「……何でそこで、前川様がでてくるんですか!」

はっ! もしかして、淳お兄様はお姉様ではなく前川のことが好きなのか!? まさか、私のライバルは前川だったのか。涙目になりながら、手を振りほどこうとするけれど、がっちりと掴まれているせいで、中々振りほどけない。


 「あっ、淳お兄様の気持ちは十分わかりましたから、離してください!」

「わかってない! 楓絶対誤解しているから、本当にちょっと待って」


 「誤解なんてしてません!」

「誤解してる! 僕も楓が好きだよ」

「嘘です!」


嘘だ。そんなの都合がよすぎる。第一淳お兄様は、お姉様のことが好きじゃないのか。


 「嘘じゃない。楓が、好きだよ」

淳お兄様の耳は真っ赤だった。真剣な瞳に息ができない。


 嘘。でも、そんなの。


 信じられないと首をふった私に、淳お兄様は、ぎゅっと私の手を握りもう一回言った。


 「僕は楓が好きだよ。……楓は?」

 それは、最後のだめ押しで。

 ──真っ赤になって頷くことしかできなかった。 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染にえっちな相談をしたら、そのままの流れで彼女になってたお話

下菊みこと
恋愛
アホの子が口の悪い幼馴染に捕まるお話。 始まりが始まりなのでアホだなぁと生温い目でご覧ください。 多分R18まではいかないはず。 小説家になろう様でも投稿しています。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

第二部の悪役令嬢がシナリオ開始前に邪神の封印を解いたら闇落ち回避は出来ますか?~王子様との婚約解消はいつでも大歓迎です~

斯波
恋愛
辺境伯令嬢ウェスパルは王家主催のお茶会で見知らぬ令嬢達に嫌味を言われ、すっかり王都への苦手意識が出来上がってしまった。母に泣きついて予定よりも早く領地に帰ることになったが、五年後、学園入学のために再び王都を訪れなければならないと思うと憂鬱でたまらない。泣き叫ぶ兄を横目に地元へと戻ったウェスパルは新鮮な空気を吸い込むと同時に、自らの中に眠っていた前世の記憶を思い出した。 「やっば、私、悪役令嬢じゃん。しかもブラックサイドの方」 ウェスパル=シルヴェスターは三部作で構成される乙女ゲームの第二部 ブラックsideに登場する悪役令嬢だったのだ。第一部の悪役令嬢とは違い、ウェスパルのラストは断罪ではなく闇落ちである。彼女は辺境伯領に封印された邪神を復活させ、国を滅ぼそうとするのだ。 ヒロインが第一部の攻略者とくっついてくれればウェスパルは確実に闇落ちを免れる。だがプレイヤーの推しに左右されることのないヒロインが六人中誰を選ぶかはその時になってみないと分からない。もしかしたら誰も選ばないかもしれないが、そこまで待っていられるほど気が長くない。 ヒロインの行動に関わらず、絶対に闇落ちを回避する方法はないかと考え、一つの名案? が頭に浮かんだ。 「そうだ、邪神を仲間に引き入れよう」 闇落ちしたくない悪役令嬢が未来の邪神を仲間にしたら、学園入学前からいろいろ変わってしまった話。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

妹が寝取った婚約者が実は影武者だった件について 〜本当の婚約者は私を溺愛してやみません〜

葉柚
恋愛
妹のアルフォネアは姉であるステファニーの物を奪うことが生きがいを感じている。 小さい頃はお気に入りの洋服やぬいぐるみを取られた。 18歳になり婚約者が出来たら、今度は私の婚約者に色目を使ってきた。 でも、ちょっと待って。 アルフォネアが色目を使っているのは、婚約者であるルーンファクト王子の影武者なんだけど……。

王子に嫌われたい!

ひとみん
恋愛
風呂場で滑って転んだと思ったら・・・そこは異世界でした。 自立を目指す彼女と、何としても彼女を捕まえたい少し残念な王子との恋物語。 設定はかなりゆるゆるご都合主義です。 なろう様では完結済みの外部リンクしていますが、大幅加筆修正しております。

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

処理中です...