次女ですけど、何か?

夕立悠理

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小学生編

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転んだ私は、後で放送係の先輩に、ありがとう。君のおかげでとても盛り上がったよ! と握手を求められる程度には、頑張って走り、一位ではなかったものの、二位を獲得した。だがしかし、
 ふはははは!
 夏休みの間に淳お兄様とのトレーニングを乗り越えた私にこの程度、造作ないわー!!

 ……などと、踏ん反り返って、扇をパタパタできるような状況ではなかった。

 「あの、大丈夫?」
「え?」
自分の順位の等旗のところまで誘導するお姉さんに心配、というよりは、戸惑った様子に驚いた。言いづらそうな声音に聞き返そうとしたところで、違和感に気付く。手で鼻の下を触ってみると、血がついていた。走っている最中は、必死だったので気がつかなかったけれど、地面と口付けを交わす前に何とか手をついた私は、ひざを擦りむいただけでなく、鼻血がでていたらしい。
 鼻血を流しながら走っている自分の姿を想像すると、寒気がした。先頭を走っていた女の子が後ろを振り返ったときに、ひぃ! と悲鳴をあげたのも頷ける。

 最悪だ。私の明日からのあだ名は、鼻血関連になってしまうに違いない。つい、先日下痢女を回避したばかりだというのに! まてよ、そういえば漫画の中の道脇楓わたしには前川の大魔王のように、二つ名がなかったか。それも、赤の女王とかなんとか。いや、まさかね。あれは、不思議の国のアリスの女王並みに、姉や妹に対する嫌がらせが苛烈だったからだ。でも、そうだとすると、赤じゃなくて、ハートの女王でないとおかしい。興奮すると鼻血が出ちゃう系女子だったなんて、そんなことないはず。今回は、こけたせいだから。鼻血とは無関係……無関係だと信じたい。 

  考えを巡らせている私にさらなる追い打ちがかかる。
「あの、本当に大丈夫? 救護係のテントに連れて行ったほうが……」
救護係、という存在を私は完全に失念していのだ。
 そうだよ、救護係!あって当たり前、どころかないほうがおかしい 

 思わずポケットを抑えた。じゃあ、この子たちが活躍することは……。
 涙目になって、返事をしない私にお姉さんは慌てて、私の腕を引いた。
「ごめんなさい、痛かったよね。すぐに、連れて行くから」
「あの、ちょ、ちが」
とりあえず、ポケットからティッシュを取り出した。鼻を抑えながら、私にはこの子たちがいるので大丈夫です、と絆創膏とハンカチを見せた。
 お姉さんには悪いけれど、その申し出は、丁重にお断りさせていただけ、なかった。
 意外と押しの強いお姉さんは、何を言っても、無理しなくてもいいんだよ、の一点張りで気が付けば救護係のテントに来ていた。

 「ええと、確かこの辺りに……」
 指先で鼻を圧迫して鼻血を止めたあと、もらった氷で鼻を冷やしながら答える。
 「ありがとうございました。足の傷のほうは、本当に大丈夫です。絆創膏ももっていますし」
「はい、これ」
そう言って差し出されたのは、かさぶたのように傷口を守るという例のアレだ。今回私が例のアレではなく、絆創膏を選んだのは別に、お金を節約したかったわけではない。価格を抑えることで、気軽さを演出しただけだ。それに、私が使わなくて誰がこの絆創膏たちを使うんだ!

「でも、こっちのほうが綺麗に治ると思うよ?」
救護係のお兄さんが、少し首を傾げて、私を見る。私は絆創膏の箱と、例のアレを交互に見つめた。

 ■  □  ■

 膝に貼った例のアレが白く膨らんだところで、護係のテントを後にした。等旗を運ぶために演技進行係のテントに行くと、怪我をしているのなら無理はしなくていい、代わりに私がしておくから、とボブのお姉さんにやんわりと断られてしまった。仕方ないので、自分のクラスのテントに行こうとして、立ち止まった。このままテントに行けば、間違いなく美紀ちゃんや遼子ちゃんは、慰めてくれるだろう。その勢いで、友達になって欲しいと申し込めば、もしかしたら、了承してくれるかもしれない。だが、そんな同情での友情はなんとなく嫌だ。

 どうしよう。自分のクラスのテントには行きたくないし、そうかと言って、係のテントは仕事を代わってもらって何もしていない私がいるわけにもいかない。
「で。……えで。楓?」
 唸っていると、後ろから肩にぽん、と手を置かれた。
 気のせいかもしれないが、私はこれに似た状況を一度夏休みに経験している。そして、悟った。このような状況下のときは、躊躇ってはいけない。小芝居を打つ暇があるのなら、全力で逃げるべきだ。

「ふぐっ!」
 急に走りだそうとしたせいか、つんのめって再び地面とこんにちはしそうになったところで、右腕を後ろにぐい、とひかれた。

 「楓、大丈夫?」
全て幻聴、ということにしたくても、助けてもらった手前、そんな真似はできない。深呼吸して、振り返った。
 案の定、そこには淳お兄様が立っていた。憂い顔さえ、ため息をつきそうなほど綺麗なのは、これ如何に。世は得てして不公平である。

 「はい。助けてくれて、ありがとうございます。淳お兄様、いらっしゃっていたんですね」
徒競走の前に手を振られたことには、気付かなかった振りをして、今気付いた風を装った。
「うん。ああ、そういえば、少し早いけれど、預かってきたお弁当があるんだけど、食べる?」
淳お兄様もそのことを指摘せずに、首を傾げた。

 午前中のプログラムが終わるまで、二、三個まだ競技が残っていたけれど、周りを見れば、すでに保護者たちと一緒にお弁当を食べている子たちもいた。お弁当を食べる時間は、保護者が忙しい子が多いせいか、自由で、自分がでる種目に間にあえば、いつでも食べていいらしい。お弁当は食べたいけれど、何か用事があるのなら淳お兄様はそちらを優先するだろうから、時間には余裕がありそうだ。それなのにこんなに早くからお弁当を食べていたら、食い意地が張っていると思われないだろうか。

 ――ぐるっぎゅるうううう

 慌ててお腹を押さえた。わいわいと楽しそうにお弁当を食べていた子たちが一斉に振り返った。無関係を装うために、淳お兄様に、今日は好いお天気でよかったです、と笑いかけると、振り返った子たちは、不思議そうに首を傾げて、またお弁当を食べ始めた。危なかった。だが、安心は出来ない。初期微動の次は主要動が来るものと決まっている。
「今すぐお弁当を食べましょう」
さぁ、早く。と私が腕をぐいぐいと引っ張ると、淳お兄様が苦笑した。

 ■  □  ■

 「桜ちゃんも一緒に食べられたら良かったのだけど。係で忙しくて、お弁当を一緒に食べる時間がないようだから、お弁当は渡しておいたよ」
「そうですか」
淳お兄様が、はい、お茶、と水筒から冷えたお茶を、私と運転手の樋口さんに注いだ。

 もちろん淳お兄様もまだ小学生なので、淳お兄様は保護者になれない。なので、樋口さんにも保護者代わりとして、来てもらったようだ。そういえば、父が光成こうせいの方の運転手の方に頼んだとか、なんとか言っていたと思い出した。光成こうせいとは、父の弟であり、淳お兄様のお父様、つまり私にとって叔父にあたる。忙しい方なので、あまり言葉を交わした記憶はないが、その容姿が、淳お兄様に生き写しだからというのが、理由の大部分を占めるだろうけれど、優しいイメージがある。

 「ごめんね、場所取りをお願いしてしまって」
「いえ、大丈夫です」 
お茶を受け取る樋口さんの額には、脂汗が浮かんでいる。その汗は、決して気温のせいだけではないだろう。そもそも、場所の確保は、すでにシートがひいてあるので必要ない。
 そうではなく――。

 ちらりと横を見た後、サッと視線を元に戻した。シートの中に入ってくることはないものの、外にはお姉さま方がひしめいている。道脇家の次期当主がいるのだ。お近づきになりたいと思うのは自然なことだ。それに加えて、淳お兄様には現在婚約者と呼べるような方はいない。あわよくば――……、といったところだろう。

 気にしたら負けだ。なるべくシートの外に視線を向けないようにして、他愛もない話をしながら三人でお弁当を食べた。
 「あの、淳お兄様」
一息ついたので、箸を置いて淳お兄様に切り出した。一応確認すると、ひしめき合っていたお姉さま方の姿は消えていた。おそらく、お弁当を食べに行ったのだろう。
 淳お兄様の口から、徒競走の話題がでることはなかった。さっき徒競走前のことを言わなかったのも、淳お兄様の優しさだろう。だけど今はその優しさが、痛い。淳お兄様に、転んで、しかも鼻血まで流した姿を見られてしまったことは、かなりショックだけど、そろそろ限界だ。やるなら一思いに刺してくれ。それに、私は気付いてしまった。シートの端に銀色の光を放ついかにも性能のよさそうな彼奴( ビデオ )の姿があることに。

 「ん?」
「淳お兄様は、いつから運動会にいらっしゃっていたのですか?」
「ちょうど、楓が走り終わった頃だよ。残念だったなぁ。
 そういえば、楓は二位だったそうだね。よく頑張ったね」

 淳お兄様に聞いても優しい嘘で隠されてしまうだけだ。今度は、樋口さんの目をじっと見つめた。しかし、樋口さんが僅かにたじろいだ瞬間、タイミングよく邪魔が入ってしまった。

 「もうすぐ一年生の玉入れがあるので、一年生は入場門の近くに並んでください」
つい競技のことを忘れてしまう子がいるので、こうして、迎えに来てくれるのだ。

 「ほら、楓」
淳お兄様に促されて渋々立ち上がった。あのビデオには、姉の姿も撮られているだろうから、壊すのは無理そうだ。母と父は別に見ないとおもうけれど、後でどうにかして、徒競走のぶんは消しておこう。


 ■  □  ■

 『続いての競技は、一年生男女による玉入れです』
放送と同時に入場する。後半はほとんど上級生たちの種目が占めているし、そもそも私が出る種目は徒競走と玉入れだけなので、これで最後になる。前世の学校では恒例だった学年ごとにするダンスのようなものはないようだ。覚えるのが大変だったから、少しうれしい。

 みんな定位置につき、後は開始の合図であるピストルが鳴るのを待つだけだ。この間に、お手玉を触ってもいいことになっているので、散らばったお手玉を山のように抱えて準備している子もいる。私も近くのお手玉を一つ手に取り、握りしめた。
 『ちなみに、今回の玉入れで使用するお手玉はかの有名な――……』
続く言葉にぎょっとして思わずお手玉をガン見してしまった。確かに、綺麗な柄だとは思ったけれども。そんな布を使っていたなんて。お手玉一個でデリシャス棒が何百個も買えてしまう。この学校、有り余るほどのお金の使い方を絶対に間違っている。

「それでは、競技を始めます。よーい」
 動揺する私をよそに、ピストルの音が鳴り響いた。みんなが一斉にお手玉を投げ始める。
 だめだ、今度こそ頑張らないと。終わり良ければ総て良し、という先人たちの言葉もある。初めよりも終わりのほうが案外印象に残ることも多い。今回、活躍して玉入れ界のヒーローになれれば、運動会で私がこけたという記憶を綺麗さっぱり塗り替えてしまえるはず。
 それに、私には勝算がある。前世では、ソフトボール部が試合の度に助っ人として来てくれないかと、頼み込まれたのは数知れず。その都度、女子からの人気はうなぎ登りだったのに、男子からはどんどん遠巻きに。そもそも今世では女子からも遠巻きにされている気がする。そこから先は考えてはだめだ! 

 とにかく、今こそその腕を発揮する時だ。それに美紀ちゃんや遼子ちゃんたちと友達になることが目的なわけで、少々周りの目が生暖かくなるくらい構わない。

 ああ、でも欲を言えばやっぱり友達はたくさん欲しい。食べ歩きとか、パフェ食べ放題とかみんなでしてみたい。その為にも、まずはここで活躍しないと。そして今度こそ、珊瑚色スクールライフを……!

 そんな風に邪心を抱きながら投げたのがよくなかったのか、お手玉は当時のスピードとまではゆかずとも、なかなかの速さでまっすぐ前に進んだ。私の腕もまだ衰えていなかったようだ、と喜びかけ、そもそも玉入れは玉の速さを競う競技ではないことに気付いた。

 「あっ」
そこまで思い至ったところで、私の放ったお手玉は鈍い音を立てて、ある男子生徒の後頭部を直撃した。
 すぐさま謝ろうとして、ふと思う。あれほど綺麗な紫烏色しうしょくの髪の男子生徒が、他にいただろうか。しかも、位置はクラスごとで決まっているはずだから、私と同じクラスに。いたはずだと信じたい。必死に脳内を検索するけれど、何度検索しても、該当するのは一人しかいない。一瞬で静まり返ってしまったグランドが何よりも雄弁に語っている。背中を冷たい汗がつう、と流れた。

 どうか違っていて欲しいと思うのに、すぐさま状況を察知したらしい放送係が蛍の光を流し始めた。
 おい、やめろ! 僅かばかりの希望までもが消えて行く。緊迫した空気の中で、蛍の光だけが鳴り響いている。

 ついに、ぎぎ、と音がしそうなほどゆっくりと男子生徒が振り返った。果たして予想は、残念ながら外れていなかったようだ。いくら悪役とはいえ、あまりにも生き急ぎすぎである状況に声が震えた。いつにも増して、眼光が鋭い。その姿はまさに、 
「ま、まえまえまえまえまえ」

 大魔王――――――!!!!
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