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君は不幸だ

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 それから数日後。
 わたしとアカツキ殿下の結婚式が行われる日になった。

 仮にも、元聖女と第一王子の結婚式にも関わらず、式は、とても簡略化されたものになるらしい。

 結婚が決まって、すぐに結婚式をあげるのだから、そうもなる。
 本来なら前もって準備されるべきことだろうけれど。

 サイズの合っていないウエディングドレスを身に纏ったわたしは、式場の控え室の鏡を見つめた。

「……まさか、顔合わせすらないなんて」

 そう。
 わたしは、結婚が決まってからまだ一度もアカツキ殿下と顔を合わせていなかった。

 さすがに今日は、お会いすることになるだろうけれど……。

 アカツキ殿下は、第一王子の生まれながら、王位継承者がもつ、オレンジの瞳を持って生まれてこなかった。その名の通り、明け方の空のようなグラデーションがかった紺色の瞳をしている。

 それに、王族の特徴である、金色の髪。

 紛れもなく王族なのに、疎まれているのは瞳のせいらしい。

 噂や肖像画でわかることは、それくらいだ。

 どんな性格の方かは、知らない。

 それでも、わたしはアカツキ殿下の妻となる。
 出来うる限りのことをして、アカツキ殿下のお役に立とう。

「花嫁様」

 呼ばれた。どうやら、準備が整ったみたいだ。

「はい」

 立ち上がり、長すぎるウェディングドレスを踏まないように注意しながら、控え室を出る。

 ホールに入れば、わたしの旦那様と初の対面だ。



 けれど、式では、一言も話せないまま終わった。

 雑な進行の簡素な式は、なぜかはわからないけれど、とにかく時間を巻くことを重要視されていた。

 気づけば誓いの言葉と婚姻届にサインだけさせられ、わたしは、ユキノシア・バークレイから、ユキノシア・レイナルドになっていた。

 そして、体を隅々まで磨き上げられーー誰かに体を洗われるのは初めてだーー王城の一角に与えられた、第一王子夫妻の寝室に放り込まれた。

「……ええと」


 つまり、あとは夫婦でごゆっくり、とのことなのだろうけれど。
「緊張、するわね」

 まだアカツキ殿下は、来ていない。
 式で見た、暁色の瞳はとても綺麗だった。……一度も目は合わなかったけれど。
 その瞳を思い出しながら、ベッドの端に座っていると、アカツキ殿下の部屋側の扉が開いた。


 思わず息を飲み込む。

 そんなわたしを見て、アカツキ殿下は、扉の前から一歩も動かず、こういった。
「君は、不幸だ」

 そう言って、扉が閉められる。

「……え?」
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