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二度目の恋
72 朧月夜
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「離縁は、双方の合意がないとできない。私は、したくない」
魔王はきっぱりと言い切った。
「オドウェル様は、私のことを愛しているわけではないでしょう」
私は、魔王のことを愛しているが、魔王は私を愛していない。それなら、離縁することに躊躇いを覚える必要はないはずだ。
「貴方のことをまだあまり知らないが、知りたいと思っている。だから、嫌だ。離縁以外の方法を考える」
「オドウェル様。離縁、しましょう」
私が再びそう言うと、魔王は子供のように首を降った。
「オドウェル様」
サリー嬢は言っていた。よい后とは、王が間違ったときに正す者だと。たとえ僅かな間であったとしても、私はよい后でありたい。
「私が好きになったのは、他の何よりもクリスタリアを愛しているオドウェル様です。今のオドウェル様は、違うのですか」
魔王は、本来なら、私ごときで悩んだりしない。クリスタリアのことを一番に考える。私のように恋一つのために、世界を捨てられないひと。でも、そんなひとだからこそ、好きになった。
魔王を真っ直ぐに見つめる。暫く無言で見つめあった後、先にそらしたのは魔王だった。
「……わかった。二日後、離縁式を行う」
結婚してから、一週間も立たないうちに、離婚するとは我ながら波乱万丈な人生だ。
離婚するといっても、現代のようにただ書類にサインをするのではなく、離縁式を行わなければならないらしい。ちなみに、代々の魔王で、離縁式を行った魔王はいないそうだから、私は、魔王の汚点になってしまうことは確実だった。巻き戻し後は、サリー嬢に会っていないが、会えばかなりの鞭を受けることになるだろう。
でも、魔王と離婚して、巫女の力を取り戻して、カスアン神を倒して。その後は──?
この世界では、同一人物との再婚はできない。
魔王の、あ、愛人になるとか?
いや、だから、そもそも、魔王は私を愛していないのだ。
それに、クリスタリアにとって、后の座が空になることは、好ましくない。魔王はいずれ、他の女性を娶るだろうし、そのときに、愛人などという不誠実なことはしないだろう。
だから、離縁して、カスアン神を倒したら、魔王とはお別れだ。
魔王のいる、世界に残ろうと思った。だから、私にとって、魔王のいない世界は、残る意味がない。魔王と離縁すれば、巫女の力が戻るのなら、私は、私の世界に帰ることもできる。
いっそ、元の世界に帰ろうか。
何だか、それもいい気がした。私は元々、この世界にとっての異分子だ。やっぱり、本来のあるべき場所へ戻るのがいいのかもしれない。
そんなことを考えながら、月を眺めていると、ガレンが、私の部屋を訪ねてきた。
「ガレン、どうしたの?」
私を見ると、ガレンは苦しそうな顔をした。
「ガレン……?」
「私は、魔王が、美香を幸せにするのなら、諦めても良いと思いました。ですが、魔王が美香の手を離すならば。カスアン神を倒した後、私の元へ来ませんか?」
「……ガレン」
「美香が、魔王を好きでも構いません。いつか、振り向いてくれるまで、待ち続けます。だから、考えてもらえませんか?」
それだけ言うと、ガレンは、去っていってしまった。ガレンの考えは、どこまでも私を思いやってのことだった。だって、自分のことが好きじゃない人と一緒にいたって、辛いだけだ。でも、ガレンの優しさに甘えちゃだめだ。魔王がだめだったから、ガレンのところに行く、なんて不誠実なことはできない。
──やっぱり、全部終わったら、元の世界へ帰ろう。
そう決めて、ベッドで眠った。
魔王はきっぱりと言い切った。
「オドウェル様は、私のことを愛しているわけではないでしょう」
私は、魔王のことを愛しているが、魔王は私を愛していない。それなら、離縁することに躊躇いを覚える必要はないはずだ。
「貴方のことをまだあまり知らないが、知りたいと思っている。だから、嫌だ。離縁以外の方法を考える」
「オドウェル様。離縁、しましょう」
私が再びそう言うと、魔王は子供のように首を降った。
「オドウェル様」
サリー嬢は言っていた。よい后とは、王が間違ったときに正す者だと。たとえ僅かな間であったとしても、私はよい后でありたい。
「私が好きになったのは、他の何よりもクリスタリアを愛しているオドウェル様です。今のオドウェル様は、違うのですか」
魔王は、本来なら、私ごときで悩んだりしない。クリスタリアのことを一番に考える。私のように恋一つのために、世界を捨てられないひと。でも、そんなひとだからこそ、好きになった。
魔王を真っ直ぐに見つめる。暫く無言で見つめあった後、先にそらしたのは魔王だった。
「……わかった。二日後、離縁式を行う」
結婚してから、一週間も立たないうちに、離婚するとは我ながら波乱万丈な人生だ。
離婚するといっても、現代のようにただ書類にサインをするのではなく、離縁式を行わなければならないらしい。ちなみに、代々の魔王で、離縁式を行った魔王はいないそうだから、私は、魔王の汚点になってしまうことは確実だった。巻き戻し後は、サリー嬢に会っていないが、会えばかなりの鞭を受けることになるだろう。
でも、魔王と離婚して、巫女の力を取り戻して、カスアン神を倒して。その後は──?
この世界では、同一人物との再婚はできない。
魔王の、あ、愛人になるとか?
いや、だから、そもそも、魔王は私を愛していないのだ。
それに、クリスタリアにとって、后の座が空になることは、好ましくない。魔王はいずれ、他の女性を娶るだろうし、そのときに、愛人などという不誠実なことはしないだろう。
だから、離縁して、カスアン神を倒したら、魔王とはお別れだ。
魔王のいる、世界に残ろうと思った。だから、私にとって、魔王のいない世界は、残る意味がない。魔王と離縁すれば、巫女の力が戻るのなら、私は、私の世界に帰ることもできる。
いっそ、元の世界に帰ろうか。
何だか、それもいい気がした。私は元々、この世界にとっての異分子だ。やっぱり、本来のあるべき場所へ戻るのがいいのかもしれない。
そんなことを考えながら、月を眺めていると、ガレンが、私の部屋を訪ねてきた。
「ガレン、どうしたの?」
私を見ると、ガレンは苦しそうな顔をした。
「ガレン……?」
「私は、魔王が、美香を幸せにするのなら、諦めても良いと思いました。ですが、魔王が美香の手を離すならば。カスアン神を倒した後、私の元へ来ませんか?」
「……ガレン」
「美香が、魔王を好きでも構いません。いつか、振り向いてくれるまで、待ち続けます。だから、考えてもらえませんか?」
それだけ言うと、ガレンは、去っていってしまった。ガレンの考えは、どこまでも私を思いやってのことだった。だって、自分のことが好きじゃない人と一緒にいたって、辛いだけだ。でも、ガレンの優しさに甘えちゃだめだ。魔王がだめだったから、ガレンのところに行く、なんて不誠実なことはできない。
──やっぱり、全部終わったら、元の世界へ帰ろう。
そう決めて、ベッドで眠った。
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