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二度目の召喚
47 困惑
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翌日。客室で寛いでいると、ガレンが訪ねてきた。
「魔王から聞きました。美香がカスアン神に狙われていると」
「心配してくれてありがとう。でも、今は私の世界を探しているみたいだから、大丈夫だよ」
こうして、心配されるのは素直に嬉しい。本当は、誰かと結婚してこの世界の住人になるのが一番いいのかもしれないけれど。
「美香、貴方は私が守ります」
「あ、ありがとう」
気持ちはとても嬉しいが、ガレンはこんなことをほいほい言うようなタイプだっただろうか……? まぁ、でもこの世界では5年も経ったし、変わったのかもしれない。私が戸惑っていると、ガレンは真っ直ぐ私を見つめた。
「……美香、覚えていますか。以前、私と共に隣国に逃げてほしいといったこと」
「覚えてるよ」
それが、どうしたのだろうか。
「私の気持ちは、変わっていません。今も、いえ、以前以上に、美香を愛しています」
「……え?」
あ、愛してるって……それって、つまり、私のことが好きってこと? 確かに、前の言葉はまるでプロポーズみたいだと思ったが、それは状況が状況だったし、やむを得ず、出た言葉だったと思っていた。
理解すると、一気に頬が熱くなる。
「美香、私と結婚して下さい」
「え……?」
ガレンは、私に花束を差し出した。花束は大輪の赤い薔薇で作られていた。薔薇の甘い香りと、プロポーズに一気に体の体温が上がる。
でも、ガレンは知らないはずだ。私が本当に安全になる方法が、結婚だということを。それなのに、なんで。
「美香がもう私を何とも思っていないこと、わかっています。けれど、私はもう二度と貴方を失いたくありません。必ず貴方を幸せにします。返事は今すぐでなくて構いません。だから、どうか、私との未来を考えてくれませんか……?」
■ □ ■
夜。ベッドに横になるが、ガレンに言われた言葉がぐるぐると頭の中を回って眠れない。
誰かと結婚してもしなくても、巫女の力がない今の私では、元の世界には帰れない。そうであるならば、幸い私と結婚してもいいといってくれたガレンと結婚することが、私の安全のためでもあるし、これ以上魔王たちに迷惑をかけないし、一番いい方法なのかもしれない。
でも。だけど。元の世界に置いてきてしまった大切な人たちとの縁を簡単に手放す気にはなれない。それにやっぱり、結婚なんて早すぎると思う。
一体どうしたらいいんだろう。
瞼を閉じても一向に眠気はやってこず、仕方がないので、散歩をすることにした。あまり音を立てないように気を付けながら、部屋を出る。
月明かりが綺麗だなと思いながら、廊下を歩く。すると、見覚えのある人影を見つけた。
「陛下?」
「巫女」
やはり、その人影は魔王だった。魔王は月を眺めていたらしい。
「こんな夜更けにどうした、まさか、カスアン神の夢でも見たのか?」
魔王が心配そうに私の顔を覗き混むので、慌てて否定する。
「そうではなくて、考え事をしていて、眠れなかったのです」
「そうか。一緒だな」
魔王は、若いが為政者だ。カスアン神の封印が解けてしまったし、私以上に、悩みごとは多いだろう。
暫く、二人で一緒に月を眺める。二人とも無言だったが、気まずい沈黙ではなく、心地よいものだった。魔王だったら、こんなときどうするだろう。月明かりに照らされた魔王は、白銀の髪がキラキラと輝いて、とても──
「どうした、巫女?」
ふと魔王の横顔を眺めていると、魔王の深紅の瞳と目があった。どこまでも深い紅に吸い込まれてしまいそうだ。
「──」
「巫女?」
再び、呼び掛けられてはっとする。
「な、なんでもありません」
つい、魔王に見惚れてしまっていた。どきどきとする胸を押さえながら、慌てて視線を逸らす。
「そうか?」
「はい」
その後他愛もない話をして、魔王と別れ部屋に戻る。魔王と話して、少し気持ちは落ち着いたが、未だ問題は解決していない。
……どうしよう。
「魔王から聞きました。美香がカスアン神に狙われていると」
「心配してくれてありがとう。でも、今は私の世界を探しているみたいだから、大丈夫だよ」
こうして、心配されるのは素直に嬉しい。本当は、誰かと結婚してこの世界の住人になるのが一番いいのかもしれないけれど。
「美香、貴方は私が守ります」
「あ、ありがとう」
気持ちはとても嬉しいが、ガレンはこんなことをほいほい言うようなタイプだっただろうか……? まぁ、でもこの世界では5年も経ったし、変わったのかもしれない。私が戸惑っていると、ガレンは真っ直ぐ私を見つめた。
「……美香、覚えていますか。以前、私と共に隣国に逃げてほしいといったこと」
「覚えてるよ」
それが、どうしたのだろうか。
「私の気持ちは、変わっていません。今も、いえ、以前以上に、美香を愛しています」
「……え?」
あ、愛してるって……それって、つまり、私のことが好きってこと? 確かに、前の言葉はまるでプロポーズみたいだと思ったが、それは状況が状況だったし、やむを得ず、出た言葉だったと思っていた。
理解すると、一気に頬が熱くなる。
「美香、私と結婚して下さい」
「え……?」
ガレンは、私に花束を差し出した。花束は大輪の赤い薔薇で作られていた。薔薇の甘い香りと、プロポーズに一気に体の体温が上がる。
でも、ガレンは知らないはずだ。私が本当に安全になる方法が、結婚だということを。それなのに、なんで。
「美香がもう私を何とも思っていないこと、わかっています。けれど、私はもう二度と貴方を失いたくありません。必ず貴方を幸せにします。返事は今すぐでなくて構いません。だから、どうか、私との未来を考えてくれませんか……?」
■ □ ■
夜。ベッドに横になるが、ガレンに言われた言葉がぐるぐると頭の中を回って眠れない。
誰かと結婚してもしなくても、巫女の力がない今の私では、元の世界には帰れない。そうであるならば、幸い私と結婚してもいいといってくれたガレンと結婚することが、私の安全のためでもあるし、これ以上魔王たちに迷惑をかけないし、一番いい方法なのかもしれない。
でも。だけど。元の世界に置いてきてしまった大切な人たちとの縁を簡単に手放す気にはなれない。それにやっぱり、結婚なんて早すぎると思う。
一体どうしたらいいんだろう。
瞼を閉じても一向に眠気はやってこず、仕方がないので、散歩をすることにした。あまり音を立てないように気を付けながら、部屋を出る。
月明かりが綺麗だなと思いながら、廊下を歩く。すると、見覚えのある人影を見つけた。
「陛下?」
「巫女」
やはり、その人影は魔王だった。魔王は月を眺めていたらしい。
「こんな夜更けにどうした、まさか、カスアン神の夢でも見たのか?」
魔王が心配そうに私の顔を覗き混むので、慌てて否定する。
「そうではなくて、考え事をしていて、眠れなかったのです」
「そうか。一緒だな」
魔王は、若いが為政者だ。カスアン神の封印が解けてしまったし、私以上に、悩みごとは多いだろう。
暫く、二人で一緒に月を眺める。二人とも無言だったが、気まずい沈黙ではなく、心地よいものだった。魔王だったら、こんなときどうするだろう。月明かりに照らされた魔王は、白銀の髪がキラキラと輝いて、とても──
「どうした、巫女?」
ふと魔王の横顔を眺めていると、魔王の深紅の瞳と目があった。どこまでも深い紅に吸い込まれてしまいそうだ。
「──」
「巫女?」
再び、呼び掛けられてはっとする。
「な、なんでもありません」
つい、魔王に見惚れてしまっていた。どきどきとする胸を押さえながら、慌てて視線を逸らす。
「そうか?」
「はい」
その後他愛もない話をして、魔王と別れ部屋に戻る。魔王と話して、少し気持ちは落ち着いたが、未だ問題は解決していない。
……どうしよう。
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