上 下
34 / 76
二度目の生

34 巫女の日記

しおりを挟む
 今日も魔王は聖女対策に忙しいので、書類整理はお休みだ。最近あまり、忙しい魔王と話せていないので、少し寂しい。

 「陛下に何かできないかな……」
私を友と呼んでくれた魔王の力に私もなりたい。魔王はああいってくれたけど、一番はやっぱり私に巫女の力があればなぁ、と思う。巫女と聖女が一対なら、本当の意味で聖女に対抗できるのは、巫女だけのはずだ。

 「巫女とは、己の願いを叶えし者、か」
私の今の一番の願いは、魔王の助けになることだ。だから、聖女と戦える力が欲しい。

 何か巫女の力が現れる手がかりがあれば、と図書室に行き、本を探す。
 けれど、以前借りた『巫女と聖女』という本以外、目ぼしいものは見つからなかった。

 そういえば、私が一番初めに巫女だと言われたのは、ユーリンだ。ユーリンには何か巫女について知っているだろうか。

 サーラに時間をつくって欲しいという言付けを頼んだ、翌日、ユーリンは私の部屋を訪れた。

 「忙しいときに、ごめんなさい。ユーリンは、巫女について何か知っていることはありませんか?」
ユーリンに魔王の力になりたいのだと話すと、ユーリンは考え込んだ。
「俺自身はあまり詳しくはありませんが、代々魔王に伝わる初代巫女の日記なら、何か手がかりになることがかかれているかもしれません。兄上も、貴方になら許可するでしょう。兄上に話してみます」

 初代巫女の日記……どんなことが書かれているんだろう。

 ユーリンにお礼をいい、その日は別れた。

 その翌日、忙しい中、魔王自ら私の部屋を訪れてくれ、初代巫女の日記を手渡してくれた。魔王は忙しいのにこんなことを思うのは不謹慎かもしれないが、魔王の顔が見れて嬉しい。

 「すまない、貴方に関わることなのにこの日記のことを忘れていた」
「いいえ、大切なものを見せていただいて、ありがとうございます」

 魔王は私に日記を手渡すと、すぐに執務室に戻ってしまった。

 日記は何か保護魔法でもかけてあるのか、とても綺麗な状態だった。
 日記を開いてみる。

 ──気づいたら、異世界にいた。私の名前は、未琴みこ。いつか、私の他にも異世界に迷い込む日本人がいるかもしれないから、役に立つかはわからないけれども、ここに記すことにしよう思う。

 「日本語だ……」
それに、現代語だ。日本語の可能性は高いと思っていたけれど、まさか、現代語とは思わなかった。てっきり古文だと思っていた。もしかしたら、この世界と日本では流れる時間が違うのかもしれない。

 最初は、当たり障りのないことが書かれていた。この世界と日本の違うところ、似ているところ。そして、魔王と恋をしたこと。

 ページをめくっていくと、気になる部分を見つけた。


 ──私が、『力』に目覚めたのは、祠に行ってからだ。
 
 「祠……?」
そこにいけば、私も力に目覚めるだろうか。でも、今のところ有力な手がかりはこの日記だけだ。

 祠がどこにあるのかは、わからないが、とりあえず、いってみよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな
恋愛
エリック様と結婚して3年が経ちます。結婚するまでは、愛されているのだと思っていました。 あんなに優しかったエリック様が、次々と愛人を連れて来て、“彼女は大切な女性だ”と私に紹介する。我慢の限界を迎えた私は、離縁して欲しいとお願いしました。それがきっかけで、エリック様は豹変し、暴力をふるってきた。身も心もボロボロになったある日、私は永遠に彼から逃げようと決意した。 舞踏会が開かれた王城のバルコニーから身を投げ、私の人生は幕を閉じた……はずだった。 次の瞬間、何故か10歳の自分に戻っていたのです。 やり直す機会をもらった私は、もう二度と彼に人生を奪われない為に強くなる決心をする。 *巻き戻る前の話は、かなり気分の悪い話になっています。ご注意ください。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全44話で完結になります。 *感想は全て“ネタバレを含む”の仕様にはしていません。感想欄はネタバレの可能性があります。 いつもあたたかい感想を、ありがとうございます。

【完結】猛反した王子は、婚約破棄を頑張りたい。

❄️冬は つとめて
恋愛
婚約者を断頭台に送ってしまった王子。逆行し過去に戻って来てしまった。猛反省した王子は、婚約破棄へと頑張ります。 『氷の王、クラウス。』過去に戻る前の話を書き出しました。宜しければ、其方もどうぞ。 注)思い込みの激しい悲劇のヒーロー振る主人公がお嫌いな方は不快に感じる場合がありますので、おすすめできません。スルーをお願いいたします。

【完結】「離婚して欲しい」と言われましたので!

つくも茄子
恋愛
伊集院桃子は、短大を卒業後、二年の花嫁修業を終えて親の決めた幼い頃からの許嫁・鈴木晃司と結婚していた。同じ歳である二人は今年27歳。結婚して早五年。ある日、夫から「離婚して欲しい」と言われる。何事かと聞くと「好きな女性がいる」と言うではないか。よくよく聞けば、その女性は夫の昔の恋人らしい。偶然、再会して焼け木杭には火が付いた状態の夫に桃子は離婚に応じる。ここ半年様子がおかしかった事と、一ヶ月前から帰宅が稀になっていた事を考えると結婚生活を持続させるのは困難と判断したからである。 最愛の恋人と晴れて結婚を果たした晃司は幸福の絶頂だった。だから気付くことは無かった。何故、桃子が素直に離婚に応じたのかを。 12/1から巻き戻りの「一度目」を開始しました。

【完結】 いいえ、あなたを愛した私が悪いのです

冬馬亮
恋愛
それは親切な申し出のつもりだった。 あなたを本当に愛していたから。 叶わぬ恋を嘆くあなたたちを助けてあげられると、そう信じていたから。 でも、余計なことだったみたい。 だって、私は殺されてしまったのですもの。 分かってるわ、あなたを愛してしまった私が悪いの。 だから、二度目の人生では、私はあなたを愛したりはしない。 あなたはどうか、あの人と幸せになって --- ※ R-18 は保険です。

狂おしいほどに君を愛している

音無砂月
恋愛
スカーレット・ブラッティーネ ブラッティーネ公爵家の妾腹であり、傲慢で我儘。息を吸うように人を貶める歴代最高の悪女 そう歴史書に記載されている彼女だがバットエンドを迎えるたびに時間が巻き戻り何度も同じ、しかし違う結末を迎えていたことを知るものはいない。

【完結】旦那様に隠し子がいるようです。でも可愛いから全然OK!

曽根原ツタ
恋愛
 実家の借金返済のため、多額の支度金を用意してくれるという公爵に嫁ぐことを父親から押し付けられるスフィミア。冷酷無慈悲、引きこもりこ好色家と有名な公爵だが、超ポジティブな彼女は全く気にせずあっさり縁談を受けた。  公爵家で出迎えてくれたのは、五歳くらいの小さな男の子だった。 (まぁ、隠し子がいらっしゃったのね。知らされていなかったけれど、可愛いから全然OK!)  そして、ちょっとやそっとじゃ動じないポジティブ公爵夫人が、可愛い子どもを溺愛する日々が始まる。    一方、多額の支度金を手に入れたスフィミアの家族は、破滅の一途を辿っていて……? ☆小説家になろう様でも公開中

【完結】愛に溺れたらバッドエンド!?巻き戻り身を引くと決めたのに、放っておいて貰えません!

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢ジスレーヌは、愛する婚約者リアムに尽くすも、 その全てが裏目に出ている事に気付いていなかった。 ある時、リアムに近付く男爵令嬢エリザを牽制した事で、いよいよ愛想を尽かされてしまう。 リアムの愛を失った絶望から、ジスレーヌは思い出の泉で入水自害をし、果てた。 魂となったジスレーヌは、自分の死により、リアムが責められ、爵位を継げなくなった事を知る。 こんなつもりではなかった!ああ、どうか、リアムを助けて___! 強く願うジスレーヌに、奇跡が起こる。 気付くとジスレーヌは、リアムに一目惚れした、《あの時》に戻っていた___ リアムが侯爵を継げる様、身を引くと決めたジスレーヌだが、今度はリアムの方が近付いてきて…?   異世界:恋愛 《完結しました》  お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

婚約破棄した殿下が今更迫ってきます!迷惑なのでもう私に構わないで下さい

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のリリアーナは、王太子でもある婚約者、アレホから “君を愛する事はない。惨めな生活を送りたくなかったら、僕と婚約破棄して欲しい” と迫られた。隣にはアレホが愛する伯爵令嬢、マルティの姿も。 1年もの間、アレホから一方的に攻められ、マルティからは酷い暴言や暴力を受け続けていたリリアーナ。父親でもある公爵にアレホとの婚約破棄を懇願するが“もう少し辛抱してくれ”と、受け入れてもらえなかった。 絶望し生きる希望すら失いかけていたリリアーナは、藁をもすがる思いで修道院へと向かった。そこで出会った修道長の協力のお陰で、やっと両親もアレホとの婚約破棄に同意。ただ、アレホはマルティから魅了魔法に掛けられている事、もうすぐで魔法が解けそうだという事を聞かされた。 それでも婚約破棄したいと訴えるリリアーナの気持ちを尊重した両親によって、無事婚約破棄する事が出来たのだった。 やっとこれで平和に暮らせる、そう思っていたリリアーナだったが、ある出来事がきっかけで完全に魅了魔法が解けたアレホは、あろう事かリリアーナに復縁を迫って来て…

処理中です...