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謎の信頼
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「……はぁ」
「どうしたんだ? ため息なんてついて」
学食でお昼ご飯を食べていると、グレイさんがトレーをもって、私を見つめていた。
そして、そのまま私の向かい側の席に座る。
「今日は、初めての授業だったのです」
「ああ、そういえばそうだったな」
グレイさんが、納得したような顔をした。
「さては、アリサ、魔法が使えなかったんだろう?」
にやにやと得意気に聞いてくるグレイさんに、驚く。
「どうして、わかったんですか!」
そう、今日は魔力を魔法に変換する、初めての授業、だったのだった。
「誰だって、最初はうまくいかないものさ」
「……ですが、殿下は既に魔法を使いこなしておられました」
私がため息をつきながら、そういうと、へぇ、と片眉を上げる。最も、今日魔法として形になっていたのは、ルーカス殿下だけだけれども。
「殿下が、ねぇ。一般的に魔法にたけているのは、女性なんだが、意外だな」
「そうなんですか?」
「ああ。一般的に魔法が使いたければ、魔法学園に通うだろう? だが、中には学園に通わずとも魔法が使えるようになる者もいる。その者たちの多くは、女性だ。まぁ、そういう場合多くは、人から外れた魔法──所謂黒魔法に魅入られるんだけどな」
そうなんだ。知らなかった。でも、この学園に通っている女性は圧倒的に少ない。女子生徒が多いのは、それこそ救護科と植物科くらいだった。女性に魔法適正があるのなら、もっと女子生徒が多くてもいいはずだ。
「貴族の女性は、別に魔法で身を立てなくても、食べていけるだろ。旦那の稼ぎがあればいいんだから」
なるほど。海の向こうの国は違うらしいが、この国では、特に貴族の間では、夫が妻を養うべき、となっている。
「そういや、なんでアリサはこの学園に来たんだ? 欲しいもの──があるんだったよな」
「はい」
血よりも濃い絆。絶対に私を裏切らない人。それがほしくて、この学園に入った。
私がそういうと、グレイさんは面白そうに笑う。
「それなら、とっくに持ってそうじゃないか」
「持ってませんよ」
「殿下は、あれほど、お前に執着するんだ。裏切ることはないだろう」
「殿下が、私に執着──?」
何かの間違いではないだろうか。ルーカス殿下に執着される理由もないし、第一、以前の生でルーカス殿下は私を信じてくださらなかった。
私が首をかしげると、グレイさんはなお楽しげに笑う。
「ふぅん、なるほど。本人には気づかれないようにしているわけか、面白いな」
「グレイさん、今なんて──」
ぼそりと、呟いた言葉は私の耳には届かなかった。聞き返すと、グレイさんは私の頭の上にぽん、と手をおいた。
「まぁいい。それなら、俺がなってやるよ。『血よりも濃い絆』とやらに」
「グレイさんが?」
「俺は、お前を裏切らない。絶対に」
「──それ、は」
それは、私が一番欲しい言葉だった。でも、なんで、そこまで言い切れるんだろう。私たちはまだ、会って数日だ。
「たとえ、私が国中から疑われても?」
「ああ。お前を、アリサを信じる」
銀の瞳は真っ直ぐに私を見つめていた。
「魔獣との戦闘になれば、お互い命を預けることになるんだ。信頼しないとやってられないだろ」
確かに。私たちは、〈エルターン〉と〈キンダー〉だから、魔獣との戦闘は何度も共に行うことになるだろう。
「それとも、俺じゃ不満か?」
「いっ、いいえ!」
でも、そういう絆ってそれこそ、戦ううちに自然と芽生えるものじゃないんだろうか。なる、っていってできるものではないのでは? 若干疑問に感じつつも、慌てて首を振る。それに、本当に理由はそれだけなんだろうか?
何だか、他に理由があるような気がしたけれど、追求できず、午後の授業の開始のベルがなったため、その場は結局お開きとなった。
「どうしたんだ? ため息なんてついて」
学食でお昼ご飯を食べていると、グレイさんがトレーをもって、私を見つめていた。
そして、そのまま私の向かい側の席に座る。
「今日は、初めての授業だったのです」
「ああ、そういえばそうだったな」
グレイさんが、納得したような顔をした。
「さては、アリサ、魔法が使えなかったんだろう?」
にやにやと得意気に聞いてくるグレイさんに、驚く。
「どうして、わかったんですか!」
そう、今日は魔力を魔法に変換する、初めての授業、だったのだった。
「誰だって、最初はうまくいかないものさ」
「……ですが、殿下は既に魔法を使いこなしておられました」
私がため息をつきながら、そういうと、へぇ、と片眉を上げる。最も、今日魔法として形になっていたのは、ルーカス殿下だけだけれども。
「殿下が、ねぇ。一般的に魔法にたけているのは、女性なんだが、意外だな」
「そうなんですか?」
「ああ。一般的に魔法が使いたければ、魔法学園に通うだろう? だが、中には学園に通わずとも魔法が使えるようになる者もいる。その者たちの多くは、女性だ。まぁ、そういう場合多くは、人から外れた魔法──所謂黒魔法に魅入られるんだけどな」
そうなんだ。知らなかった。でも、この学園に通っている女性は圧倒的に少ない。女子生徒が多いのは、それこそ救護科と植物科くらいだった。女性に魔法適正があるのなら、もっと女子生徒が多くてもいいはずだ。
「貴族の女性は、別に魔法で身を立てなくても、食べていけるだろ。旦那の稼ぎがあればいいんだから」
なるほど。海の向こうの国は違うらしいが、この国では、特に貴族の間では、夫が妻を養うべき、となっている。
「そういや、なんでアリサはこの学園に来たんだ? 欲しいもの──があるんだったよな」
「はい」
血よりも濃い絆。絶対に私を裏切らない人。それがほしくて、この学園に入った。
私がそういうと、グレイさんは面白そうに笑う。
「それなら、とっくに持ってそうじゃないか」
「持ってませんよ」
「殿下は、あれほど、お前に執着するんだ。裏切ることはないだろう」
「殿下が、私に執着──?」
何かの間違いではないだろうか。ルーカス殿下に執着される理由もないし、第一、以前の生でルーカス殿下は私を信じてくださらなかった。
私が首をかしげると、グレイさんはなお楽しげに笑う。
「ふぅん、なるほど。本人には気づかれないようにしているわけか、面白いな」
「グレイさん、今なんて──」
ぼそりと、呟いた言葉は私の耳には届かなかった。聞き返すと、グレイさんは私の頭の上にぽん、と手をおいた。
「まぁいい。それなら、俺がなってやるよ。『血よりも濃い絆』とやらに」
「グレイさんが?」
「俺は、お前を裏切らない。絶対に」
「──それ、は」
それは、私が一番欲しい言葉だった。でも、なんで、そこまで言い切れるんだろう。私たちはまだ、会って数日だ。
「たとえ、私が国中から疑われても?」
「ああ。お前を、アリサを信じる」
銀の瞳は真っ直ぐに私を見つめていた。
「魔獣との戦闘になれば、お互い命を預けることになるんだ。信頼しないとやってられないだろ」
確かに。私たちは、〈エルターン〉と〈キンダー〉だから、魔獣との戦闘は何度も共に行うことになるだろう。
「それとも、俺じゃ不満か?」
「いっ、いいえ!」
でも、そういう絆ってそれこそ、戦ううちに自然と芽生えるものじゃないんだろうか。なる、っていってできるものではないのでは? 若干疑問に感じつつも、慌てて首を振る。それに、本当に理由はそれだけなんだろうか?
何だか、他に理由があるような気がしたけれど、追求できず、午後の授業の開始のベルがなったため、その場は結局お開きとなった。
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