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ガーデンパーティー

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ようやく、なんとか宥めようとする使用人たちを振り切り、ベッドから、起き上がることを許された。

 鏡を見る。

 そこに映っていたのは、やはり幼い私だった。何気なく、使用人に尋ねる。
「ねぇ、今日は何年の何日だったかしら?」

 高熱でうなされて、日付を忘れてしまったのだろうか、と考えたのか使用人は特に疑うことなく答えてくれた。
 
 その答えを聞いて、安堵する。

 使用人の教えてくれた日付によると、私は12才で、もうすぐ、ガーデンパーティに見せかけたルーカス殿下の婚約者を決める会があるのだ。

 つまり、私はまだルーカス殿下と婚約していない。

 だったら、まだやりようはあった。私は、今度こそ幸せに、なりたい。

 

 件のガーデンパーティの日になった。私は、まずこのガーデンパーティを欠席するため、ありとあらゆる仮病を使おうとしたのだけれども、仮病を盛りすぎて、家のなかが大混乱になったので、断念した。

 なので、仕方なくガーデンパーティに参加している。

 以前の私が経験したガーデンパーティのことは、鮮明に覚えている。

 そこではじめて私はルーカス殿下と出会ったのだ。そして、ダンスを申し込まれた。ルーカス殿下の美貌に釘付けになった私は、頷き、ルーカス殿下の手を取った。

 そのガーデンパーティ後、私はルーカス殿下の婚約者となり、そのガーデンパーティで見初められたのだと噂され、有頂天になるのだけれど、今ならわかる。

 真実は違ったのだ。あらかじめ、私がルーカス殿下にダンスを誘われることは決まっていたのだ。婚約者とするために。

 つまり、このガーデンパーティでルーカス殿下と踊らなければ──ルーカス殿下が別の誰かと踊らざるを得ないような状況を作ればいいのだ。

 私は、パーティが始まる前に、お花を摘みにいく、と父と母に告げた。
「パーティが始まるまでには戻ってくるのよ」

 という言葉に頷いてはみたものの、そんなつもりは毛頭ない。

 パーティが終わるまで、トイレにこもるつもりだった。そのことにより、不名誉な噂がたてられるかもしれないけれど、背に腹は代えられない。

 ──この時の私の選択が、後に影響をもたらすことになるなんて、この時の私は、思いもよらなかった。
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