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聖女の誕生
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神殿の教壇の前で、二人の少女が祈りを捧げている。一人は、豊かな金髪が美しいカミラ・アメグランデ公爵令嬢。そして、もう一人は、流れるような銀髪が美しいアナ・リース侯爵令嬢。
実に絵になる二人に私は思わずほぅ、と息を漏らした。
ほんっとうに、綺麗だわ。
今宵、この国を守護する新たな聖女が選ばれる。その聖女となるのは、果たしてどちらだろうか。
小声で、隣の友人──サシャに話しかける。
「ねぇねぇ、サシャはあのお二人のどちらが選ばれると思う?」
「ニコラス殿下と親しいのはアナ様だから、アナ様じゃないかしら……。って、リノン、祈るふりくらいしなさいよ」
サシャに呆れたようにため息をつかれた。
「だって、私たちは聖魔法をつかえないんだから、聖女には選ばれないじゃない? だったら、祈っているだけなんて退屈だわ」
聖魔法。結界をはったり、邪気をはらったりできる歴代の聖女たちが使っていた魔法だ。そして現在聖魔法を使えるのは、あのお二人だけなのだ。
って、そんなことより、聖女が誕生した後で開かれる、新たな聖女を祝う夜会のメニューの方が気になるわ。
とっても美味しいのでしょうね。
思わず想像して口の端を緩ませていると、サシャに肘を小突かれた。
「リノン、一瞬でいいから祈りなさいよ。じゃないと、お兄様と踊らせてあげない」
「それは困る!」
サシャのお兄様──ルドルフ様はとってもかっこよくて私の憧れなのだ。
無駄だと思うけどなぁ、と思いながらも、目を閉じて手を組み、祈りを捧げる。
女神様もさっさと、どちらを聖女にするのか決めて、聖女の証である光輪を授けてくれないかしら。
女神様が聖女とした者には、七色に輝く光輪が頭上に現れる。
その光輪が誰かに現れれば、この儀式は終了だ。
そんなことを考えていると。
「?」
なんだか周囲が騒がしい。
もしかして、聖女が決まった?
「第五十三代の聖女が誕生しました」
神官長の声に、目を開ける。
ようやく、聖女が決まったのね。
さて、聖女に選ばれたのはどちらかしら──。
けれど、アナ侯爵令嬢にも、カミラ公爵令嬢にも光輪はなかった。
あれ? 私の聞き間違いかしら……。
辺りを見回すと、なぜかみんな驚いた瞳で私をみている。
どうしたんだろう?
驚いていないのは、神官長だけだ。
神官長は、私の前まで来ると、ひざまずいた。
「新代の聖女、リノン・ボールドに祝福を」
実に絵になる二人に私は思わずほぅ、と息を漏らした。
ほんっとうに、綺麗だわ。
今宵、この国を守護する新たな聖女が選ばれる。その聖女となるのは、果たしてどちらだろうか。
小声で、隣の友人──サシャに話しかける。
「ねぇねぇ、サシャはあのお二人のどちらが選ばれると思う?」
「ニコラス殿下と親しいのはアナ様だから、アナ様じゃないかしら……。って、リノン、祈るふりくらいしなさいよ」
サシャに呆れたようにため息をつかれた。
「だって、私たちは聖魔法をつかえないんだから、聖女には選ばれないじゃない? だったら、祈っているだけなんて退屈だわ」
聖魔法。結界をはったり、邪気をはらったりできる歴代の聖女たちが使っていた魔法だ。そして現在聖魔法を使えるのは、あのお二人だけなのだ。
って、そんなことより、聖女が誕生した後で開かれる、新たな聖女を祝う夜会のメニューの方が気になるわ。
とっても美味しいのでしょうね。
思わず想像して口の端を緩ませていると、サシャに肘を小突かれた。
「リノン、一瞬でいいから祈りなさいよ。じゃないと、お兄様と踊らせてあげない」
「それは困る!」
サシャのお兄様──ルドルフ様はとってもかっこよくて私の憧れなのだ。
無駄だと思うけどなぁ、と思いながらも、目を閉じて手を組み、祈りを捧げる。
女神様もさっさと、どちらを聖女にするのか決めて、聖女の証である光輪を授けてくれないかしら。
女神様が聖女とした者には、七色に輝く光輪が頭上に現れる。
その光輪が誰かに現れれば、この儀式は終了だ。
そんなことを考えていると。
「?」
なんだか周囲が騒がしい。
もしかして、聖女が決まった?
「第五十三代の聖女が誕生しました」
神官長の声に、目を開ける。
ようやく、聖女が決まったのね。
さて、聖女に選ばれたのはどちらかしら──。
けれど、アナ侯爵令嬢にも、カミラ公爵令嬢にも光輪はなかった。
あれ? 私の聞き間違いかしら……。
辺りを見回すと、なぜかみんな驚いた瞳で私をみている。
どうしたんだろう?
驚いていないのは、神官長だけだ。
神官長は、私の前まで来ると、ひざまずいた。
「新代の聖女、リノン・ボールドに祝福を」
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