2 / 6
2
しおりを挟む
死んだと思った。実際、死んだ、はずだ。
「……ん」
「……様! お嬢様!」
ゆっくりと目を開ける。ここは、死後の世界かしら。そう思いながら瞬きをすると、心配そうな顔をした侍女のセリーが目に入った。
「あぁ、お嬢様! 良かった。お嬢様は木から落ちて3日も寝込まれていたんですよ」
木から? 神殿ではなく? あぁ。そういえば、そんなこともあったかもしれない。なんだか、キラキラ光って綺麗な木だったのよね。セリーと一緒に森に散策にでたときに、私が木に登りたがって。それで。でも、3日も寝込んだかしら? せいぜいが、一時間くらいだった気がする。もしかして、セリーも死んだのかと思ったけれど、これは走馬灯というやつかしら。
「すぐに、旦那様と奥様をお呼びしますね」
お父様とお母様はすぐにやってきた。
「シエンナ、本当に良かった!」
「お前が目を覚まさなければ、どうしようかと」
お父様とお母様は涙ぐんでいる。でも。走馬灯ならわがままになってもいいわよね。
「イーディスのことよりも、私の方が大切ですか?」
イーディス。私の弟。私はこの弟のことが嫌いだった。もっというと、憎かった。跡取りの彼が産まれてから、お父様とお母様は彼に夢中になったから。おかげで、私の婚約者の話もたち消えになったし。そんなことを考えながら、意地悪な質問をなげかけると、お父様たちは顔を曇らせた。
「すまなかった。そんなことを聞かせるほど私たちは、シエンナに寂しい想いをさせていたんだな」
「イーディスのことは愛してるわ。でも、シエンナ、それはあなたもよ」
愛してる。その言葉は、イーディスが産まれてから、聞けなくなった言葉だった。
あぁ、なんだ。そっか。これは私の願望から見ている夢かもしれないけれど。私はとっくに、特別だったんだ。それなのに、死ぬなんて馬鹿なことをしてしまったかもしれない。
「──お父様、お母様、ごめんなさい」
寂しかったの。ずっと。だからって、なにも言わずに死んでごめんなさい。涙が、零れる。
でも、最後に特別な私になれて良かった。私は満ち足りた気分になりながら、目を閉じた。
次に目を開けたとき、そこは死後の世界だろう。
そう思って、目を開ける。
相変わらず、心配そうなお父様とお母様がいた。
……走馬灯、長くない?
「……ん」
「……様! お嬢様!」
ゆっくりと目を開ける。ここは、死後の世界かしら。そう思いながら瞬きをすると、心配そうな顔をした侍女のセリーが目に入った。
「あぁ、お嬢様! 良かった。お嬢様は木から落ちて3日も寝込まれていたんですよ」
木から? 神殿ではなく? あぁ。そういえば、そんなこともあったかもしれない。なんだか、キラキラ光って綺麗な木だったのよね。セリーと一緒に森に散策にでたときに、私が木に登りたがって。それで。でも、3日も寝込んだかしら? せいぜいが、一時間くらいだった気がする。もしかして、セリーも死んだのかと思ったけれど、これは走馬灯というやつかしら。
「すぐに、旦那様と奥様をお呼びしますね」
お父様とお母様はすぐにやってきた。
「シエンナ、本当に良かった!」
「お前が目を覚まさなければ、どうしようかと」
お父様とお母様は涙ぐんでいる。でも。走馬灯ならわがままになってもいいわよね。
「イーディスのことよりも、私の方が大切ですか?」
イーディス。私の弟。私はこの弟のことが嫌いだった。もっというと、憎かった。跡取りの彼が産まれてから、お父様とお母様は彼に夢中になったから。おかげで、私の婚約者の話もたち消えになったし。そんなことを考えながら、意地悪な質問をなげかけると、お父様たちは顔を曇らせた。
「すまなかった。そんなことを聞かせるほど私たちは、シエンナに寂しい想いをさせていたんだな」
「イーディスのことは愛してるわ。でも、シエンナ、それはあなたもよ」
愛してる。その言葉は、イーディスが産まれてから、聞けなくなった言葉だった。
あぁ、なんだ。そっか。これは私の願望から見ている夢かもしれないけれど。私はとっくに、特別だったんだ。それなのに、死ぬなんて馬鹿なことをしてしまったかもしれない。
「──お父様、お母様、ごめんなさい」
寂しかったの。ずっと。だからって、なにも言わずに死んでごめんなさい。涙が、零れる。
でも、最後に特別な私になれて良かった。私は満ち足りた気分になりながら、目を閉じた。
次に目を開けたとき、そこは死後の世界だろう。
そう思って、目を開ける。
相変わらず、心配そうなお父様とお母様がいた。
……走馬灯、長くない?
10
お気に入りに追加
736
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる