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ご機嫌なお兄様

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「……うーん」
 お父様とお兄様が書斎にこもって、かれこれ40分は経った。
 さすがにそろそろノックしてもいい頃合いじゃない?
 いや、でも大事な話っぽいし、出てくるまで待つべきよね。
 ……でも。
 ぐーぎゅるぎゅる。
 おなかの虫が鳴った。そろそろ私もお腹がすいてきたのだ。やっぱりご飯は、三人そろって食べたいし。
「うーん、どうすべきか」
「なにが、うーん、なの?」
「わぁ!」
 急にぽん、と肩をたたかれ、飛び上がる。
振り向くと、お兄様がにこにこした顔で後ろに立っていた。
「キルシュお兄様!」
「うん、そうだよ、セレス」

 お兄様は楽しそうにくすくす笑うと、私を抱き上げて、くるくる回った。
「お兄様!?」
 どうしたんだろう。
 普段こんなことしないのに。
 めちゃくちゃ機嫌がいいことだけは伝わるけど。……って。
「目が、めがぁー!!」
 お兄様回転しすぎだよ! お腹がすいてるところに、ぐるぐる回って、気持ち悪くなってきた。

「……ごめん、セレス。嬉しくて、つい」
 お兄様は回転を止めておろしてくれたけれど、悪びれるどころかにこにこしている。本当に楽しそうだ。
「おにーさま?」
 いったいどうしたのかな。
「セレスティア、キルシュ」
 お父様に名前を呼ばれた。そういえば、二人とも話があるって入っていたんだから、話が終わればお父様もでてくるよね。
 お兄様は、にこにこしたまま姿勢を正した。
「お父様?」
「いいか、セレスティア。自分の心を一番に大事にするんだぞ」
???
どういうこと? 私は、割と好き放題している自覚はある。
 これ以上好き放題してもいいってこと?
「それから、キルシュ。さっき言ったように、くれぐれも、手順を踏むことと、ひとつひとつ確認するように」
「はい!」

 ……?
 なぞだ。なぞすぎる。お話をしたお兄様とお父様は、通じ合ってるけど、私に至っては、なんの説明もない。
 心を大事になんて言われても、なんのことか、わかりっこないよ!

 そう主張しようとしたけれど……。

 ぐーぎゅるぎゅるぐぐーぎゅっるっるー。
「!!」
 しまった! おなかの虫が!! って、さっきよりも大きいし、長い!
 恥ずかしすぎるけど、仕方ない。待たせた、お兄様たちが悪いんだからね!!
「セレスは、本当にかわいいね」
「!?」
 お兄様は、あっまーく、そう微笑むと、私の頭をよしよしと撫でた。

「おおおおおお、おにいさま……?」
 今日のお兄様、ぜったい、絶対おかしいよ。何か変なものでも食べた?

「うん、かわいいセレス。今日は、お兄様のお膝の上で食べる?」
「キルシュ!!」
「はは、いやだなぁ。お父様ったら、冗談ですよ、冗談。ね、セレス」
 いやいやいや、お兄様。そのわりには、目がマジでしたよー。
 なぁんて、言えなかったので、うふふ、と笑ってごまかした。

 何はともあれ、ようやく家族そろって、ご飯だー!!
 いっぱい食べるぞー!!!!
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