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エスコート
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ジュリアン殿下のエスコートに合わせて、ダンスを踊ります。
……なんというか。
事前に雑と言われていて、身構えていたのもあるのかもしれませんが。
わざわざ言いにこられるほど雑だとは感じませんでした。
むしろ、丁寧な部類に入ると思います。
このジュリアン殿下が雑に入るということは、比べる相手がよほどエスコートが上手いということでしょう。
アスノ殿下が比べるとすれば……。
「……なんだ、よそ見か?」
密着するシーンでジュリアン殿下が面白くなさそうに囁きました。
「ふふ、違いますよ。ジュリアン殿下のことを考えていました」
「!」
よほど動揺したのか、ジュリアン殿下はバランスを崩しました。
さりげなくそれをフォローしつつ、ダンスを続けます。
「私に媚びてもーー」
「存じております」
その次は必殺の鳴き声「愛さない」でしょうから、間髪入れずに頷きました。
ここまで頑なであるジュリアン殿下を惚れ込ませることができたなら。
想像するだけで胸がときめきますね。
……恋のときめきではありませんが。
それにしても。
「ジュリアン殿下」
「なんだ?」
くるっとターンしてからジュリアン殿下に近づきます。
「そこまで熱心に見つめられると、緊張します」
「私としか目が合わなければ、君も緊張せずに済む」
なるほど。夜会が始まる前に緊張するって私が言っていたから、その解決策として見つめてくださっていたのですね。
「ありがとうございます」
自然と微笑みます。
その方法で解決するかはともかく。
気持ちが嬉しかったから。
「! ……別に」
ジュリアン殿下の別に、は照れ隠しのことが多いと侍従のクロードより把握済みです。
「……ふふ」
また笑みが溢れます。
「なにか言いたいことでも?」
相変わらず視線は逸らさずに尋ねてくるジュリアン殿下が、可愛らしくて、胸に温かな何かが広がりました。
「ジュリアン殿下はお優しいですね」
「普通だと思うが」
あの鳴き声、一緒に食事を取らないのはともかくとして。
ジュリアン殿下は、案外素敵な方かもしれません。
……ところで。
ジュリアン殿下がお気付きかはわかりませんが、いまだに王太子殿下の視線も注がれています。
もうすぐ曲が終わるので、貴族や王族の方たちとの腹の探り合いのお時間になります。
少しでも王太子殿下のその視線の理由を探れたら良いのですが。
曲が終わりました。
2人で礼をして、ホールの中央から移動します。
「……ジュリアン殿下」
「どうした?」
私は、ジュリアン殿下を見つめて微笑みました。
「とっても素敵なエスコート、ありがとうございます」
「……雑なエスコートをわざわざ誉めなくてもいい」
表情を曇らせたジュリアン殿下は、本当にそう思っているようでした。
……なるほど?
ジュリアン殿下も、自分のエスコートを雑だと思っていたということはーー。
「ジュリアン」
ジュリアン殿下の名前が甘い声で呼ばれます。
すぐに、表情が明るくなったジュリアン殿下は、嬉しそうに微笑みました。
「……義姉上」
……なんというか。
事前に雑と言われていて、身構えていたのもあるのかもしれませんが。
わざわざ言いにこられるほど雑だとは感じませんでした。
むしろ、丁寧な部類に入ると思います。
このジュリアン殿下が雑に入るということは、比べる相手がよほどエスコートが上手いということでしょう。
アスノ殿下が比べるとすれば……。
「……なんだ、よそ見か?」
密着するシーンでジュリアン殿下が面白くなさそうに囁きました。
「ふふ、違いますよ。ジュリアン殿下のことを考えていました」
「!」
よほど動揺したのか、ジュリアン殿下はバランスを崩しました。
さりげなくそれをフォローしつつ、ダンスを続けます。
「私に媚びてもーー」
「存じております」
その次は必殺の鳴き声「愛さない」でしょうから、間髪入れずに頷きました。
ここまで頑なであるジュリアン殿下を惚れ込ませることができたなら。
想像するだけで胸がときめきますね。
……恋のときめきではありませんが。
それにしても。
「ジュリアン殿下」
「なんだ?」
くるっとターンしてからジュリアン殿下に近づきます。
「そこまで熱心に見つめられると、緊張します」
「私としか目が合わなければ、君も緊張せずに済む」
なるほど。夜会が始まる前に緊張するって私が言っていたから、その解決策として見つめてくださっていたのですね。
「ありがとうございます」
自然と微笑みます。
その方法で解決するかはともかく。
気持ちが嬉しかったから。
「! ……別に」
ジュリアン殿下の別に、は照れ隠しのことが多いと侍従のクロードより把握済みです。
「……ふふ」
また笑みが溢れます。
「なにか言いたいことでも?」
相変わらず視線は逸らさずに尋ねてくるジュリアン殿下が、可愛らしくて、胸に温かな何かが広がりました。
「ジュリアン殿下はお優しいですね」
「普通だと思うが」
あの鳴き声、一緒に食事を取らないのはともかくとして。
ジュリアン殿下は、案外素敵な方かもしれません。
……ところで。
ジュリアン殿下がお気付きかはわかりませんが、いまだに王太子殿下の視線も注がれています。
もうすぐ曲が終わるので、貴族や王族の方たちとの腹の探り合いのお時間になります。
少しでも王太子殿下のその視線の理由を探れたら良いのですが。
曲が終わりました。
2人で礼をして、ホールの中央から移動します。
「……ジュリアン殿下」
「どうした?」
私は、ジュリアン殿下を見つめて微笑みました。
「とっても素敵なエスコート、ありがとうございます」
「……雑なエスコートをわざわざ誉めなくてもいい」
表情を曇らせたジュリアン殿下は、本当にそう思っているようでした。
……なるほど?
ジュリアン殿下も、自分のエスコートを雑だと思っていたということはーー。
「ジュリアン」
ジュリアン殿下の名前が甘い声で呼ばれます。
すぐに、表情が明るくなったジュリアン殿下は、嬉しそうに微笑みました。
「……義姉上」
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