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一周目
神の子の影武者
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泣きつかれて眠った翌朝。
私は、ベッドに寝かされていた。傍らには、お母さんのブローチがある。ああ、悪い夢じゃなかったんだ。
「……っう、っ」
それを見るとまた、涙がこぼれた。暫く泣いていると、扉がノックされた。
「はい」
入ってきたのは、年配の神官さんだった。
「ああ、泣いていたのですね、おいたわしい」
そういって、そっと私の目尻を拭ってくれる。
「ですが、そんな貴女にもっと残酷なことを言わなければありません」
「ざんこくな、こと?」
お父さんとお母さんがいないこと以上に、悲しいことなんてあるはずない。
「貴女には他の町や村には親戚や知り合いはいないのですよね」
「……はい」
私と血が繋がっているのは、お父さんとお母さんだけだ。
「貴女の魔力はとても多い。なので、それ相応の訓練をしなければ、暴走してしまいます。わかりますか」
「……はい」
貴族と違い、庶民の魔力はたかが知れている。暴走させることなんてまずないので、学校に通う必要もない。
けれど、貴族や稀に庶民に魔力量の多い子供が生まれることがある。そんな子供たちは、学校に通わなければならない。
けれど、学校にはお金がかかる。庶民場合は、教育費は国が出してくれるけれど、制服などは、自分で用意しなければならない。
でも、私に家族や親戚はいない。
ぎゅっと強く手を握りしめると、神官さんがふわりと私の手を包んだ。
「貴女の生活の全てを神殿は保証しようと思っています」
「……えっ?」
「代わりに貴女にお仕事を頼みたいのです。これは、生涯にわたる仕事ですが、するつもりは、ありますか?」
魔力を暴走させ、多くの人を殺し、処刑された人の話を知っている。
──エルマリー、貴女は幸福な子よ。
そういってくれたお母さんは、きっと、そんな私を望まないだろう。
「わかりました。やらせてください」
「まだどんな仕事か言っていないのに?」
神官さんは笑みを深くした。
「はい」
「命に関わるときもあります」
「それでも、やります」
死ぬことじたいは、怖くない。お父さんとお母さんのところにいくだけだから。
「──貴女の決意はわかりました。貴女には、フィオーレ様、〈神の子〉の影武者になってもらいます」
私は、ベッドに寝かされていた。傍らには、お母さんのブローチがある。ああ、悪い夢じゃなかったんだ。
「……っう、っ」
それを見るとまた、涙がこぼれた。暫く泣いていると、扉がノックされた。
「はい」
入ってきたのは、年配の神官さんだった。
「ああ、泣いていたのですね、おいたわしい」
そういって、そっと私の目尻を拭ってくれる。
「ですが、そんな貴女にもっと残酷なことを言わなければありません」
「ざんこくな、こと?」
お父さんとお母さんがいないこと以上に、悲しいことなんてあるはずない。
「貴女には他の町や村には親戚や知り合いはいないのですよね」
「……はい」
私と血が繋がっているのは、お父さんとお母さんだけだ。
「貴女の魔力はとても多い。なので、それ相応の訓練をしなければ、暴走してしまいます。わかりますか」
「……はい」
貴族と違い、庶民の魔力はたかが知れている。暴走させることなんてまずないので、学校に通う必要もない。
けれど、貴族や稀に庶民に魔力量の多い子供が生まれることがある。そんな子供たちは、学校に通わなければならない。
けれど、学校にはお金がかかる。庶民場合は、教育費は国が出してくれるけれど、制服などは、自分で用意しなければならない。
でも、私に家族や親戚はいない。
ぎゅっと強く手を握りしめると、神官さんがふわりと私の手を包んだ。
「貴女の生活の全てを神殿は保証しようと思っています」
「……えっ?」
「代わりに貴女にお仕事を頼みたいのです。これは、生涯にわたる仕事ですが、するつもりは、ありますか?」
魔力を暴走させ、多くの人を殺し、処刑された人の話を知っている。
──エルマリー、貴女は幸福な子よ。
そういってくれたお母さんは、きっと、そんな私を望まないだろう。
「わかりました。やらせてください」
「まだどんな仕事か言っていないのに?」
神官さんは笑みを深くした。
「はい」
「命に関わるときもあります」
「それでも、やります」
死ぬことじたいは、怖くない。お父さんとお母さんのところにいくだけだから。
「──貴女の決意はわかりました。貴女には、フィオーレ様、〈神の子〉の影武者になってもらいます」
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