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溢れる嘘を隠すには
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(レガレス視点)
ラファリアが、私を——?
世界が、止まった。
マーガレットの緑の瞳から零れ落ちる涙も、涙に濡れた声も、まるで全てが止まったように、遅く流れる。
ラファリア、マーガレットの友人。
淑やかで、お転婆なマーガレットとは対照的な、侯爵令嬢。
そんな、彼女が、私に恋をしていたという。
だとしたら、私は……。
「……陛下?」
「!」
は、と息を吐く。
世界が急速に動き始めた。
不安げに緑の瞳を揺らすマーガレット。君を不安にさせたいわけじゃない。
そう、伝える代わりに、その背をまた撫でる。
「やはり、嫌われてしまいましたか……?」
だが、行動では、マーガレットには伝わっていなかったようだ。
「いや、そんなことは……」
「そうですわよね。友人の気持ちを知っていながら、ずっと黙っていた私なんか」
震えてまた、涙を零すその姿。
雨に打たながら孤独に耐える、捨て犬のような姿は、庇護欲を誘う。
思わず引き寄せて、頭を撫でた。
「泣かないでくれ、マーガレット」
泣かないで、あの日私が恋した君。
「でも、でもっ、私……ずる、しました」
ドレスの裾をぎゅっと握り、マーガレットは告白した。
「ラファリアも、陛下のこと好きだって、気付いたのに! 何も……言わなかった」
だって、あなたのことが、好きだから。
初めて、出会った日からずっと。
唇を震わせ、時に、止まりながら、マーガレットはそっと、吐き出した。
「ラファリアは、私みたいなよくある金髪じゃなくて、綺麗な銀髪で……」
マーガレットは、そっと、自分の髪に触れる。
「私よりも、ずっとずっと美人だったし」
あの日見た、『君』以上に、美しい存在を、私は知らない。
「それに、花奏師の腕だって、私よりずっと上で……」
あの日の君以上に、聖花を輝かせた存在を、私は知らない。
「それに、それにっ、ラファリアのこと、いつも花奏師長は、褒めていて。……私だって、頑張ってるのに、一度も褒められたことないわ」
ぽろぽろと涙を零して、マーガレットは俯いた。
「ラファリアに、負けたくなかったんです。花奏師として、勝てなくても。ラファリアみたいに、歩くたびに見惚れられなくても。でも、ずるをしても、どうしても、レガレス陛下。あなただけは……」
あなただけは、取られたく、なかったの。
「!」
あぁ。
密やかに告げられた言葉は、私の胸を打った。
「……マーガレット」
私は、静かにマーガレットの、あの日聞けなかった君の名前を呼んだ。
「……」
マーガレットは、子供のように、首を振る。
「聞きたく、ないっ、です」
必死に耳を塞いで、逃げようとする君を、胸の中に閉じ込める。
「私は……」
「いやっ、聞きたくない。離して!」
身を捩って、逃げようとするマーガレット。
でも、逃がさせない。
「……聞いてくれ、マーガレット」
なるべく、聞き入れやすいように、声を落として、マーガレットを見つめる。
「私は、『君』に——恋をしている。あの日、出会った君に。あの日から、ずっと。君だけに恋、してる」
ラファリアが、私を——?
世界が、止まった。
マーガレットの緑の瞳から零れ落ちる涙も、涙に濡れた声も、まるで全てが止まったように、遅く流れる。
ラファリア、マーガレットの友人。
淑やかで、お転婆なマーガレットとは対照的な、侯爵令嬢。
そんな、彼女が、私に恋をしていたという。
だとしたら、私は……。
「……陛下?」
「!」
は、と息を吐く。
世界が急速に動き始めた。
不安げに緑の瞳を揺らすマーガレット。君を不安にさせたいわけじゃない。
そう、伝える代わりに、その背をまた撫でる。
「やはり、嫌われてしまいましたか……?」
だが、行動では、マーガレットには伝わっていなかったようだ。
「いや、そんなことは……」
「そうですわよね。友人の気持ちを知っていながら、ずっと黙っていた私なんか」
震えてまた、涙を零すその姿。
雨に打たながら孤独に耐える、捨て犬のような姿は、庇護欲を誘う。
思わず引き寄せて、頭を撫でた。
「泣かないでくれ、マーガレット」
泣かないで、あの日私が恋した君。
「でも、でもっ、私……ずる、しました」
ドレスの裾をぎゅっと握り、マーガレットは告白した。
「ラファリアも、陛下のこと好きだって、気付いたのに! 何も……言わなかった」
だって、あなたのことが、好きだから。
初めて、出会った日からずっと。
唇を震わせ、時に、止まりながら、マーガレットはそっと、吐き出した。
「ラファリアは、私みたいなよくある金髪じゃなくて、綺麗な銀髪で……」
マーガレットは、そっと、自分の髪に触れる。
「私よりも、ずっとずっと美人だったし」
あの日見た、『君』以上に、美しい存在を、私は知らない。
「それに、花奏師の腕だって、私よりずっと上で……」
あの日の君以上に、聖花を輝かせた存在を、私は知らない。
「それに、それにっ、ラファリアのこと、いつも花奏師長は、褒めていて。……私だって、頑張ってるのに、一度も褒められたことないわ」
ぽろぽろと涙を零して、マーガレットは俯いた。
「ラファリアに、負けたくなかったんです。花奏師として、勝てなくても。ラファリアみたいに、歩くたびに見惚れられなくても。でも、ずるをしても、どうしても、レガレス陛下。あなただけは……」
あなただけは、取られたく、なかったの。
「!」
あぁ。
密やかに告げられた言葉は、私の胸を打った。
「……マーガレット」
私は、静かにマーガレットの、あの日聞けなかった君の名前を呼んだ。
「……」
マーガレットは、子供のように、首を振る。
「聞きたく、ないっ、です」
必死に耳を塞いで、逃げようとする君を、胸の中に閉じ込める。
「私は……」
「いやっ、聞きたくない。離して!」
身を捩って、逃げようとするマーガレット。
でも、逃がさせない。
「……聞いてくれ、マーガレット」
なるべく、聞き入れやすいように、声を落として、マーガレットを見つめる。
「私は、『君』に——恋をしている。あの日、出会った君に。あの日から、ずっと。君だけに恋、してる」
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