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対面
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今!? まだ、心の準備が……。
いいえ、でも。引き受けた以上、いつだって同じよね。
「……わかりました」
「荷物だけ魔法で運んでおく」
「ありがとうございます」
ガロンさんが荷物を手放すと、マギリと同じようにふよふよと浮きながら荷物は廊下を進んで行った。……魔法、便利すぎるわ。
「それでは、行こう」
「はい!」
ガロンさんの後についていく。ガロンさんが止まったのは、大きな紫色の扉の前だった。
そして、扉をノックする。
「アギノ、開けるぞ」
『やだー!』
「!?」
闇獣って、しゃべるの!?
中から聞こえてきた、まるで幼い男の子のような声に驚く。
……というか、思いっきりやだ、って聞こえたのにガロンさんは構わずに、扉を開けた。
『やだ! っていったじゃん!! 聞こえてなかったわけ、このバカガロン』
扉が開かれると同時に、飛んできた罵倒をものともせず、ガロンさんは中に進んでいく。
慌てて、私もガロンさんを追いかける。
「アギノ、お前の世話係を連れてきたんだ」
『はいはい。まーた、余計なことして。そんなことより、ちゃんとした楽師つれてきてよね。マギリが連れてきたやつ、ほんとに聞くに耐えなかった』
ガロンさんが立ち止まったのは、ベッドの上だった。布団に潜り込んでいるようで、姿はまだ見えない。
「それは悪かった」
悪いと言いながら、もぞもぞと動いている布団と毛布を剥ぎ取る。
『うわー! やめろ、バカ!』
勢いよく剥ぎ取られ、ころん、とベッドから床に転がってきた。
アメジスト色に煌めく紫の瞳。そして、額に瞳とお揃いの小さなツノが二つが特徴的だ。
大きな三角の耳が二つで、それ以外の部分は、猫に似てる……ように見える。
「アギノ、こちらが今日からお前の世話係になる、ラファリアだ。ラファリア、こちらは闇獣のアギノ」
まじまじと観察してしまったわ!
慌てて、深くお辞儀をする。
「初めまして、ラファリアです」
『わ、かわいいー! もしかして、ガロンの彼女? あ、彼女でも変な演奏したら、容赦なく追い出すから』
そう言いながら、アギノは、私の周りをくるっと回った。
「違う!」
ガロンさんは、慌てて否定した後、はっと私を見た。
「いや……、別にあなたと恋人だと思われることが嫌なわけでなく……あなたに失礼だと思って。あなたは、とても魅力的だ」
「……ありがとうございます」
ただのフォローだとわかっているのに、なんとなく気恥ずかしい。
『それで? いちゃいちゃは、いいけど……。この子から、花の香りがするのは、なんで?』
瞳を輝かせて、アギノがガロンさんを見る。
「あ、あぁ。彼女は、アドルリアの花奏師だったんだ」
いいえ、でも。引き受けた以上、いつだって同じよね。
「……わかりました」
「荷物だけ魔法で運んでおく」
「ありがとうございます」
ガロンさんが荷物を手放すと、マギリと同じようにふよふよと浮きながら荷物は廊下を進んで行った。……魔法、便利すぎるわ。
「それでは、行こう」
「はい!」
ガロンさんの後についていく。ガロンさんが止まったのは、大きな紫色の扉の前だった。
そして、扉をノックする。
「アギノ、開けるぞ」
『やだー!』
「!?」
闇獣って、しゃべるの!?
中から聞こえてきた、まるで幼い男の子のような声に驚く。
……というか、思いっきりやだ、って聞こえたのにガロンさんは構わずに、扉を開けた。
『やだ! っていったじゃん!! 聞こえてなかったわけ、このバカガロン』
扉が開かれると同時に、飛んできた罵倒をものともせず、ガロンさんは中に進んでいく。
慌てて、私もガロンさんを追いかける。
「アギノ、お前の世話係を連れてきたんだ」
『はいはい。まーた、余計なことして。そんなことより、ちゃんとした楽師つれてきてよね。マギリが連れてきたやつ、ほんとに聞くに耐えなかった』
ガロンさんが立ち止まったのは、ベッドの上だった。布団に潜り込んでいるようで、姿はまだ見えない。
「それは悪かった」
悪いと言いながら、もぞもぞと動いている布団と毛布を剥ぎ取る。
『うわー! やめろ、バカ!』
勢いよく剥ぎ取られ、ころん、とベッドから床に転がってきた。
アメジスト色に煌めく紫の瞳。そして、額に瞳とお揃いの小さなツノが二つが特徴的だ。
大きな三角の耳が二つで、それ以外の部分は、猫に似てる……ように見える。
「アギノ、こちらが今日からお前の世話係になる、ラファリアだ。ラファリア、こちらは闇獣のアギノ」
まじまじと観察してしまったわ!
慌てて、深くお辞儀をする。
「初めまして、ラファリアです」
『わ、かわいいー! もしかして、ガロンの彼女? あ、彼女でも変な演奏したら、容赦なく追い出すから』
そう言いながら、アギノは、私の周りをくるっと回った。
「違う!」
ガロンさんは、慌てて否定した後、はっと私を見た。
「いや……、別にあなたと恋人だと思われることが嫌なわけでなく……あなたに失礼だと思って。あなたは、とても魅力的だ」
「……ありがとうございます」
ただのフォローだとわかっているのに、なんとなく気恥ずかしい。
『それで? いちゃいちゃは、いいけど……。この子から、花の香りがするのは、なんで?』
瞳を輝かせて、アギノがガロンさんを見る。
「あ、あぁ。彼女は、アドルリアの花奏師だったんだ」
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