今日で、終わる

夕立悠理

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失われた恋心

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 恋を、していた。この恋は、永遠なのだと信じていた。
 冬の空のようなグレーの髪に、海よりも深い青の瞳。
 その青の瞳に見つめられただけで、幸福に包まれた。
「大好きよ」
 そういうと耳を赤くしながら、僕も、と答えてくれた横顔も。

 全部、全部、大好きだった。
 ──今日、までは。



 私たちは幼馴染みで、でも。それ以上にいい関係を築いていた。一つ年上のフィンが王都の学園に入学する歳になっても変わらないのだと、信じていた。

 それでも、手紙のやり取りだけでは、寂しくて。

 こっそり、学園を訪ねてみることにしたのだ。あと数ヵ月で私も通うことになる学園。校舎の雰囲気などを見てみたいというと、簡単に見学の許可は下りた。


 でも、フィンを探して歩いた中庭でまさか、信じられないものを目にすることになるなんて。

「フィン?」

 どうか私の震えた声で振り向いたその顔が、見知ったものと違えばいいと思う。けれど同時に、私があなたを見間違えるはずないと心のどこかで確信していた。

 振り向いたのは、やはり。

「……ド、ドロシー! なんで、こんなところに……!? っ、違うんだ、これは……」

 違う、なにが?

 私という恋人がいるのに、別の女性と口づけをしていたこと?

 それとも、私と付き合っていることが違ったのかしら。


 涙をこらえたのは、意地だっだ。
 あなたのせいで傷ついたことを後悔するほど、私の恋心は一瞬で冷めた。

 ドロシー、捨てないで、とか。愛しているのは、君だけなんだ。これは、出来心で。とか。

 私にすがり付いてくるフィンを振り切り、私は家に帰った。





 そして、私たちは別れた。
 友人たちは、男はフィンだけじゃない、新しい恋をしようと励ましてくれたけれど。

 私はすっかり恋と言うものに臆病になっていた。
 
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