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お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね?
とある一日
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バレンタインデーの日以来、私とお兄ちゃんは、結婚を前提とした彼氏、彼女として付き合うことになった。それは、別にいい……どころか、とても嬉しいことなのだけれど。
「……お兄ちゃん」
「うん? どうしたの、朱里」
付き合うことになった私たちは、以前のように登下校を共にするようになっていた。それも、別にいい……けど。けど!
「この手は、何かな?」
私が尋ねるとお兄ちゃんは不思議そうに、首をかしげた。
「何って? 手を繋いでる以外に何かある?」
「いやいやいや、それが可笑しいんだよ! お兄ちゃん」
そう、お兄ちゃんは登下校の度に手を繋ごうとするのだ! これが、デートならいい。デートとはそういうカップルらしいこともするものだと思うから。でも、登下校は登下校だ。そんな、いちゃいちゃするようなものではないし、それをわざわざ人に見られるようなことをするものじゃないと思う。私がそう指摘すると、お兄ちゃんはじっとりとした目で、私を見た。
「だって、こうしないと朱里に男がよってくるじゃないか」
「私はお兄ちゃんと違ってモテないから大丈夫だよ」
自分で言っていてなんだが、少し悲しくなった。
「ほら、朱里は自覚がない。そーいうのが、一番たちが悪いんだよ。それに、僕は大好きな朱里と手が繋ぎたい。……だめ?」
うっ。あまりの甘さに、吐きそうになる。お兄ちゃんは、付き合うようになってからこうしてストレートに聞いたり、言ったりするようになった。どうやら、私はお兄ちゃんなりに好意をアピールしていたことに全く気づいていなかったようで、それなら言葉を惜しまないとお兄ちゃんは決意したらしい。
それにしても好きな人に、そんな甘いこと言われて断れるはずないと思う。いや、でもTPOは弁えるべき……! さて、どうする。
「おはよう、朱里ちゃん、優」
私たちの姿を見て、かけてきた冴木先輩が顔をひきつらせた。
「ええと、その……仲睦まじいようで何よりだよ」
結局、私の左手はがっちりお兄ちゃんの右手に握られている。冴木先輩は、生暖かいものを見るような目で私とお兄ちゃんをみていた。……私も冴木先輩の立場ならそうすると思う。
と、そこで、たったった、という足音とともに、愛梨ちゃんが駆けてきた。直前で転んだ愛梨ちゃんは盛大にお兄ちゃんにぶつかりそうになったけれど、お兄ちゃんは華麗に避けた。
「あいたたた、どうして、私を避けるんですか、小鳥遊先輩」
起き上がった愛梨ちゃんが、頬を膨らませる。対して、お兄ちゃんは冷静だ。
「普通、突進してきた人のことは避けると思うよ」
けれど、愛梨ちゃんはその言葉には答えず、
「ふーん、手でも繋いでらぶらぶアピールですか。でも、知ってますか? 人前でそーいうことするカップルほど、別れやすいんですから! 私、諦めませんから! 小鳥遊先輩のこと」
そういって、私を睨み付けた。でも、私も負けない。
「私だって、愛梨ちゃんにお兄ちゃんを譲るつもりはないもん」
ばちばちと火花が飛び散る。
「ちょっと、優、止めなよ。俺、また最近胃の調子が最近悪いんだけど」
「なんで? せっかく朱里が独占欲を見せてくれたのに?」
「なに言ってる意味わかんない、みたいな顔してるんだよ!」
お兄ちゃんと冴木先輩が何やらこそこそと話している間に、ホームルーム開始前のチャイムが鳴ったので、愛梨ちゃんとのにらみ合いを切り上げて、学校内に入った。
「……お兄ちゃん」
「うん? どうしたの、朱里」
付き合うことになった私たちは、以前のように登下校を共にするようになっていた。それも、別にいい……けど。けど!
「この手は、何かな?」
私が尋ねるとお兄ちゃんは不思議そうに、首をかしげた。
「何って? 手を繋いでる以外に何かある?」
「いやいやいや、それが可笑しいんだよ! お兄ちゃん」
そう、お兄ちゃんは登下校の度に手を繋ごうとするのだ! これが、デートならいい。デートとはそういうカップルらしいこともするものだと思うから。でも、登下校は登下校だ。そんな、いちゃいちゃするようなものではないし、それをわざわざ人に見られるようなことをするものじゃないと思う。私がそう指摘すると、お兄ちゃんはじっとりとした目で、私を見た。
「だって、こうしないと朱里に男がよってくるじゃないか」
「私はお兄ちゃんと違ってモテないから大丈夫だよ」
自分で言っていてなんだが、少し悲しくなった。
「ほら、朱里は自覚がない。そーいうのが、一番たちが悪いんだよ。それに、僕は大好きな朱里と手が繋ぎたい。……だめ?」
うっ。あまりの甘さに、吐きそうになる。お兄ちゃんは、付き合うようになってからこうしてストレートに聞いたり、言ったりするようになった。どうやら、私はお兄ちゃんなりに好意をアピールしていたことに全く気づいていなかったようで、それなら言葉を惜しまないとお兄ちゃんは決意したらしい。
それにしても好きな人に、そんな甘いこと言われて断れるはずないと思う。いや、でもTPOは弁えるべき……! さて、どうする。
「おはよう、朱里ちゃん、優」
私たちの姿を見て、かけてきた冴木先輩が顔をひきつらせた。
「ええと、その……仲睦まじいようで何よりだよ」
結局、私の左手はがっちりお兄ちゃんの右手に握られている。冴木先輩は、生暖かいものを見るような目で私とお兄ちゃんをみていた。……私も冴木先輩の立場ならそうすると思う。
と、そこで、たったった、という足音とともに、愛梨ちゃんが駆けてきた。直前で転んだ愛梨ちゃんは盛大にお兄ちゃんにぶつかりそうになったけれど、お兄ちゃんは華麗に避けた。
「あいたたた、どうして、私を避けるんですか、小鳥遊先輩」
起き上がった愛梨ちゃんが、頬を膨らませる。対して、お兄ちゃんは冷静だ。
「普通、突進してきた人のことは避けると思うよ」
けれど、愛梨ちゃんはその言葉には答えず、
「ふーん、手でも繋いでらぶらぶアピールですか。でも、知ってますか? 人前でそーいうことするカップルほど、別れやすいんですから! 私、諦めませんから! 小鳥遊先輩のこと」
そういって、私を睨み付けた。でも、私も負けない。
「私だって、愛梨ちゃんにお兄ちゃんを譲るつもりはないもん」
ばちばちと火花が飛び散る。
「ちょっと、優、止めなよ。俺、また最近胃の調子が最近悪いんだけど」
「なんで? せっかく朱里が独占欲を見せてくれたのに?」
「なに言ってる意味わかんない、みたいな顔してるんだよ!」
お兄ちゃんと冴木先輩が何やらこそこそと話している間に、ホームルーム開始前のチャイムが鳴ったので、愛梨ちゃんとのにらみ合いを切り上げて、学校内に入った。
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