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新たなライバル?

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 お兄ちゃんに好きになってもらうため、頑張るって決めたけど。具体的には、何をしたらいいんだろう。登下校をまた、一緒にする……のは、前とやってることがおんなじだし、とにかくお兄ちゃんの後ろをついてまわるのは、違う気がする。

 だったら。私がしなきゃいけないことは、まずはお兄ちゃんの好みの女の子になることじゃないかな。

 「なに、優の好きな女性のタイプ?」
「はい」
電話口で、聞き返した冴木先輩に頷く。
「ど、どうしたの、朱里ちゃん。急に。それに、朱里ちゃんには、彼氏がいるんじゃ……」
「別れました。私は、やっぱりお兄ちゃんのことが好きだと気づいたので」
私がそういうと、冴木先輩は何か嬉しいことがあったのか、声のトーンを高くした。

 「そうなの!?」
「はい」
「それなら……、俺が言うより、朱里ちゃんが優に直接聞いたほうが早いんじゃないかな。そしたら、誤解もないだろうし」
好きな女性のタイプに、誤解なんてあるのだろうか。疑問に思いつつも、冴木先輩の提案に頷く。

 「わかりました。ありがとうございます。冴木先輩」
「いやいや、俺はようやく胃薬に頼ることがなくなりそうでほっとしたよ。それじゃあ」
と、そこで電話は切れた。それにしても、胃薬に頼るなんて、よほど心労が絶えないことがあったのかな。冴木先輩の問題が解決することを祈りつつ、隣の部屋の扉をノックする。

 すると、当然だけれど、お兄ちゃんがでてきた。
「どうしたの、朱里」
お兄ちゃんは真剣な顔をした私に、不思議そうな顔をした。

 「あのね、お兄ちゃん一つ教えて欲しいことがあるんだけど、」
「何かな」
「お兄ちゃんの好きな女性のタイプは?」
私が聞くと、お兄ちゃんは盛大にむせた。

 「だっ、大丈夫? お兄ちゃん」
慌ててお兄ちゃんに駆け寄り、お兄ちゃんの背中をさする。

 「……ありがとう。もう、大丈夫だよ。それにしてもどうして急に?」
お兄ちゃんの疑問は尤もだ。でも、何て言おう。まさか、お兄ちゃんのことが好きだから、なんて言えないし。

 「ち、ちょっとした、アンケート。周りの人に調査してるの」

 自分でもどうかと思う、苦しい言い訳だ。けれど、お兄ちゃんはそれを信じてくれた。

「なるほど。僕の好きな女性のタイプは、僕より背が小さくて、僕の側にいてくれて、僕のちょっとした変化に気づいて、笑顔が素敵で、料理が上手で、少しおバカで、でもそこが可愛い子」

 や、やけに内容が具体的だ。普通そこは、優しい子、とか、明るい子、とか、スポーツが得意な子、とか。もっと短いのがくるかと思っていた。

「どう、参考になった?」

 首をかしげたお兄ちゃんに、頷く。
「うん、すごく参考になったよ。ありがとう」

 自室に戻り、息をつく。お兄ちゃんの好きな女性のタイプがやけに具体的だったのって、やっぱり、お兄ちゃんは誰かを思い浮かべて言ったからじゃないかな。

 そういえば、お兄ちゃん、愛梨ちゃんと別れてるんだよね。以前の流れからして、お兄ちゃんから別れを告げたみたいだし、お兄ちゃんにはやっぱり好きな人が愛梨ちゃんとは別にいるんだろうか。春に、彩月ちゃんや、冴木先輩が言ってた人かな。

 と、なると。私はその人とも戦わなくちゃいけないんだ。その人よりも、私のことを好きになってもらえるように。

 お兄ちゃんの好きなタイプもわかったし、新たなライバルもわかったし、今日は大きな収穫だったな。
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