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第五章
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五
「岸君から話を聞いて、僕は提案した。倉持君という人が疑われている。だから美幸さんに対して本当のことを言うべきだ、と。でも彼は反対した」
その理由は容易に想像がついた。岸君は、自分が手紙の“投函先”を間違えたことを知られたくなかったのだろう。
私がそう言うと、倉持君が答えた。
「優実ちゃんの言う通りだよ。それで、高柳は全部一人でかぶることにしたんだ」
「全部?」
「おお。岸に頼まれて手紙を“投函”したのは自分。そこで机を間違えたのも自分。で、それを後で入れ替えたのも自分だ──ということにしたんだ」
「よくやるわね」
岸君も不誠実である。ここまで友人を巻き込んでおいて、あくまでも保身に走ったのだ。
手紙に宛名を書かずに“投函“したことにも、ある種の狡さを感じる。彼は手紙を書いた段階でもまだ迷っていたのではないか。いったんは美幸さんの机に入れたが、やっぱり智子さんにしよう──と帰宅してから気が変わったのではないか。
と、そんな勝手な想像はともかく。
決断した高柳君は、さっそく五組へ行って美幸さんを連れ出したという。そして、倉持君がいる図書室へ向かった。
「おかしな話ね。探偵役が自分自身の有罪を立証して、他人の冤罪を証明しようとするなんて」
私が言うと、彼は軽く首を振った。
「探偵どころか、僕が犯人なんだからね。皆の記憶をすり合わせて、当時何が起きたのかをはっきりさせれば十分だった」
そこで倉持君が、
「これが俺と高柳の初顔合わせ。こいつが美幸ちゃんと一緒にやって来た時は何事かと思ったぜ。連れてこられた彼女も俺達二人と向き合いながら目を丸くしてた」
可笑しそうに回想している。
高柳君もまた、倉持君と同様に、稀有な美少年として名を馳せている。私などは正直もう見飽きた感があるが、いきなり呼び出されて心の準備もなしにこの二人と面と向かったら、大抵の女子は目を回すに違いない。
「それで。話はどう進んだの」
「まずこの件については、最初に一つはっきりさせる必要があった。さっき話した通り、僕が智子さんの机に手紙を入れた時、校内はもう停電していた。だが五組の教室の鍵はまだ開いていたし、周辺には誰もいなかった」
「そうね」
それはさっきも聞いた。周辺に誰もいなかったというのは初耳だが。
その時、倉持君はどうしていたのか。彼は「施錠する直前に停電が起きた」と言った。言い換えれば「停電の直後に施錠した」ことになるはずだが。
すると当の倉持君は言い訳するように、
「だからさ。俺が美幸ちゃんに『あの日はすぐ施錠した』って答えたのは、トラブルが起きてたなんて知らなかったからなんだよ」
「本当は施錠せずに帰ったの?」
「違うって。施錠するまで、少し間が空いたんだ」
その“間”に高柳君が来たということか。
「なぜそれを美幸さんに言わなかったの。貴方はどこに行っていたの」
「それはさ」
彼は口ごもる。高柳君が助け舟を出した。
「優実さん、君は覚えているか。雨の日に彼がコンビニへ送迎してくれたのを」
「私?」
すぐに思い出す。確かにそういう出来事はあった。
いつかの放課後である。図書室で本を読み終えて、私は帰ろうとした。しかし夕方から天気が崩れ始めたのだ。
傘を持っておらず、途方に暮れる私。そこで声をかけてきたのが倉持君だった。
(困ってるんだろう)
彼はそう言って傘を差し、強引に私を入れた。そして、真っ暗な夜道を途中まで一緒に歩いてくれた。
その頃はまだ、彼とまともに口を利いたこともなかった。緊張と動揺でろくに話もしないまま、私は親切だけに甘えて近くのコンビニまで送ってもらった。そこまで来れば街並みは明るく、傘も買えた。
そういえばあの時は大雨で、外は真っ暗で──
「まさか、あれがその日だったの」
思わず声が大きくなる。怒っているように聞こえたのか、倉持君は弁明した。
「あの時、教室の鍵をかけようとして、優実ちゃんを見つけたんだ。それで、なんだあの子はこの雨の中一人で帰るのか──って思って。ちょっと様子を見たら昇降口でため息ついてたから、つい話しかけちゃったんだよ。それで施錠が後回しになった」
呆れた。それでは確かに、美幸さんに本当のことは言えまい。実は鍵をかけたのはずっと後だったんだ、女の子の後をつけてて後回しになったんだ──なんて。
「いわば、僕と倉持君はすれ違いだった。停電が起きたのは、彼が優実さんに声をかけた後だったんだろう。僕が智子さんの机に手紙を入れた時、校内は真っ暗で、明かりもつかない状況だった」
倉持君が肩をすくめる。
「こいつがそれを打ち明けたから、俺もめでたく美幸ちゃんに本当のことを言わざるを得なくなったさ」
「しかし美幸さんは納得しなかったね」
「おお。げに恐ろしきは女の思い込みなり」
処置なしと言いたげに首を振る倉持君。高柳君は私を見た。
「彼女は主張したんだ。倉持君の言うことが本当なら、彼がその場を離れて戻ってくるまでの間──つまり教室の鍵が開けっ放しで、停電もまだ起きていない間──は誰にでも“犯行”が可能だったことになる。だけど僕は先にこう言った。僕が智子さんの机に手紙を入れた時は、校内はすでに停電していた、と。だから少なくとも僕に手紙を探し出せるはずがない。ということは僕は倉持君をかばっていることになる。だから犯人は倉持君だ」
そうだ。結局それが障壁なのである。高柳君が一体どうやって暗闇の中で手紙を探し出したのか──その説明がつかない限り“高柳有罪説”は成り立たない。
「それで貴方は、美幸さんにどう反論したの」
「手紙のありかなら、目印さえあればすぐ分かる。そう答えたよ」
「目印? 岸君が、何か目印をつけていたの」
「いや」
訳が分からない。
「彼女からも同じように聞かれたよ。一体どんな目印があったのかと」
「それはそうよ」
「目印というのは実際には言葉の綾だ。でもそれは確かにあった。僕は、絶対に見失うことのない目印と手紙を一緒にしていたから、暗闇でも手紙を探し出す必要すらなかった。そこにある手紙を、ただ智子さんの机に入れればよかった」
「その目印って何なの」
「手だよ」
彼は即答した。
「どんなに暗くても、自分の手の位置は分かる」
あまりに単純で言葉もない。
「……待って。ちょっと待って。混乱しそう」
話にストップをかけ、ここまでの情報を脳内で整理する。
「停電した時点で、手紙はもう貴方の手の中にあったの?」
「そう」
「その時点で、すでに手紙を回収していた?」
「そうだよ。──僕は、停電する前に五組の教室に入って手紙を回収した。そして、しばらくしてからそれを智子さんの机に入れた。その時は校内は停電していたけれど、手に持っていたから真っ暗でも問題はなかった」
「回収した手紙を、すぐに智子さんの机に入れなかったのはなぜ」
「岸君から得た情報が間違っていたからだ」
「間違っていた?」
「僕は彼から、二人の女子の席の位置について、前から何番目で横から何番目──という形で教えられた。だが実際には、美幸さんの席として教えられた机に手紙は入っていなかったんだ」
記憶違いか。岸君という人はとことん粗忽者だ。
「悪いとは思ったけど、僕は急いでその周囲の机も覗いてみた。すると全く別の席で、クリアファイルに入っている手紙を見つけた。それが本当の美幸さんの机だったんだ。だがこれでは、智子さんの席の位置も正しいかどうか怪しくなってくる。僕は学校の外に出ると、公衆電話から岸君に連絡してもう一度確認した。そして改めて校舎に戻った」
ところが、戻ってみると校舎は停電していた。彼は、手探りで智子さんの机の位置を確認し、中に手紙を入れたのだ。
分かってみればどうということはない真相である。
「岸君から話を聞いて、僕は提案した。倉持君という人が疑われている。だから美幸さんに対して本当のことを言うべきだ、と。でも彼は反対した」
その理由は容易に想像がついた。岸君は、自分が手紙の“投函先”を間違えたことを知られたくなかったのだろう。
私がそう言うと、倉持君が答えた。
「優実ちゃんの言う通りだよ。それで、高柳は全部一人でかぶることにしたんだ」
「全部?」
「おお。岸に頼まれて手紙を“投函”したのは自分。そこで机を間違えたのも自分。で、それを後で入れ替えたのも自分だ──ということにしたんだ」
「よくやるわね」
岸君も不誠実である。ここまで友人を巻き込んでおいて、あくまでも保身に走ったのだ。
手紙に宛名を書かずに“投函“したことにも、ある種の狡さを感じる。彼は手紙を書いた段階でもまだ迷っていたのではないか。いったんは美幸さんの机に入れたが、やっぱり智子さんにしよう──と帰宅してから気が変わったのではないか。
と、そんな勝手な想像はともかく。
決断した高柳君は、さっそく五組へ行って美幸さんを連れ出したという。そして、倉持君がいる図書室へ向かった。
「おかしな話ね。探偵役が自分自身の有罪を立証して、他人の冤罪を証明しようとするなんて」
私が言うと、彼は軽く首を振った。
「探偵どころか、僕が犯人なんだからね。皆の記憶をすり合わせて、当時何が起きたのかをはっきりさせれば十分だった」
そこで倉持君が、
「これが俺と高柳の初顔合わせ。こいつが美幸ちゃんと一緒にやって来た時は何事かと思ったぜ。連れてこられた彼女も俺達二人と向き合いながら目を丸くしてた」
可笑しそうに回想している。
高柳君もまた、倉持君と同様に、稀有な美少年として名を馳せている。私などは正直もう見飽きた感があるが、いきなり呼び出されて心の準備もなしにこの二人と面と向かったら、大抵の女子は目を回すに違いない。
「それで。話はどう進んだの」
「まずこの件については、最初に一つはっきりさせる必要があった。さっき話した通り、僕が智子さんの机に手紙を入れた時、校内はもう停電していた。だが五組の教室の鍵はまだ開いていたし、周辺には誰もいなかった」
「そうね」
それはさっきも聞いた。周辺に誰もいなかったというのは初耳だが。
その時、倉持君はどうしていたのか。彼は「施錠する直前に停電が起きた」と言った。言い換えれば「停電の直後に施錠した」ことになるはずだが。
すると当の倉持君は言い訳するように、
「だからさ。俺が美幸ちゃんに『あの日はすぐ施錠した』って答えたのは、トラブルが起きてたなんて知らなかったからなんだよ」
「本当は施錠せずに帰ったの?」
「違うって。施錠するまで、少し間が空いたんだ」
その“間”に高柳君が来たということか。
「なぜそれを美幸さんに言わなかったの。貴方はどこに行っていたの」
「それはさ」
彼は口ごもる。高柳君が助け舟を出した。
「優実さん、君は覚えているか。雨の日に彼がコンビニへ送迎してくれたのを」
「私?」
すぐに思い出す。確かにそういう出来事はあった。
いつかの放課後である。図書室で本を読み終えて、私は帰ろうとした。しかし夕方から天気が崩れ始めたのだ。
傘を持っておらず、途方に暮れる私。そこで声をかけてきたのが倉持君だった。
(困ってるんだろう)
彼はそう言って傘を差し、強引に私を入れた。そして、真っ暗な夜道を途中まで一緒に歩いてくれた。
その頃はまだ、彼とまともに口を利いたこともなかった。緊張と動揺でろくに話もしないまま、私は親切だけに甘えて近くのコンビニまで送ってもらった。そこまで来れば街並みは明るく、傘も買えた。
そういえばあの時は大雨で、外は真っ暗で──
「まさか、あれがその日だったの」
思わず声が大きくなる。怒っているように聞こえたのか、倉持君は弁明した。
「あの時、教室の鍵をかけようとして、優実ちゃんを見つけたんだ。それで、なんだあの子はこの雨の中一人で帰るのか──って思って。ちょっと様子を見たら昇降口でため息ついてたから、つい話しかけちゃったんだよ。それで施錠が後回しになった」
呆れた。それでは確かに、美幸さんに本当のことは言えまい。実は鍵をかけたのはずっと後だったんだ、女の子の後をつけてて後回しになったんだ──なんて。
「いわば、僕と倉持君はすれ違いだった。停電が起きたのは、彼が優実さんに声をかけた後だったんだろう。僕が智子さんの机に手紙を入れた時、校内は真っ暗で、明かりもつかない状況だった」
倉持君が肩をすくめる。
「こいつがそれを打ち明けたから、俺もめでたく美幸ちゃんに本当のことを言わざるを得なくなったさ」
「しかし美幸さんは納得しなかったね」
「おお。げに恐ろしきは女の思い込みなり」
処置なしと言いたげに首を振る倉持君。高柳君は私を見た。
「彼女は主張したんだ。倉持君の言うことが本当なら、彼がその場を離れて戻ってくるまでの間──つまり教室の鍵が開けっ放しで、停電もまだ起きていない間──は誰にでも“犯行”が可能だったことになる。だけど僕は先にこう言った。僕が智子さんの机に手紙を入れた時は、校内はすでに停電していた、と。だから少なくとも僕に手紙を探し出せるはずがない。ということは僕は倉持君をかばっていることになる。だから犯人は倉持君だ」
そうだ。結局それが障壁なのである。高柳君が一体どうやって暗闇の中で手紙を探し出したのか──その説明がつかない限り“高柳有罪説”は成り立たない。
「それで貴方は、美幸さんにどう反論したの」
「手紙のありかなら、目印さえあればすぐ分かる。そう答えたよ」
「目印? 岸君が、何か目印をつけていたの」
「いや」
訳が分からない。
「彼女からも同じように聞かれたよ。一体どんな目印があったのかと」
「それはそうよ」
「目印というのは実際には言葉の綾だ。でもそれは確かにあった。僕は、絶対に見失うことのない目印と手紙を一緒にしていたから、暗闇でも手紙を探し出す必要すらなかった。そこにある手紙を、ただ智子さんの机に入れればよかった」
「その目印って何なの」
「手だよ」
彼は即答した。
「どんなに暗くても、自分の手の位置は分かる」
あまりに単純で言葉もない。
「……待って。ちょっと待って。混乱しそう」
話にストップをかけ、ここまでの情報を脳内で整理する。
「停電した時点で、手紙はもう貴方の手の中にあったの?」
「そう」
「その時点で、すでに手紙を回収していた?」
「そうだよ。──僕は、停電する前に五組の教室に入って手紙を回収した。そして、しばらくしてからそれを智子さんの机に入れた。その時は校内は停電していたけれど、手に持っていたから真っ暗でも問題はなかった」
「回収した手紙を、すぐに智子さんの机に入れなかったのはなぜ」
「岸君から得た情報が間違っていたからだ」
「間違っていた?」
「僕は彼から、二人の女子の席の位置について、前から何番目で横から何番目──という形で教えられた。だが実際には、美幸さんの席として教えられた机に手紙は入っていなかったんだ」
記憶違いか。岸君という人はとことん粗忽者だ。
「悪いとは思ったけど、僕は急いでその周囲の机も覗いてみた。すると全く別の席で、クリアファイルに入っている手紙を見つけた。それが本当の美幸さんの机だったんだ。だがこれでは、智子さんの席の位置も正しいかどうか怪しくなってくる。僕は学校の外に出ると、公衆電話から岸君に連絡してもう一度確認した。そして改めて校舎に戻った」
ところが、戻ってみると校舎は停電していた。彼は、手探りで智子さんの机の位置を確認し、中に手紙を入れたのだ。
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