星の涙

ならん

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決意

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光の渓谷を離れ、僕は次なる目的地に向けて歩を進めた。今度の目的地は「時の湖」と呼ばれる場所だ。図書館で見つけた文献によれば、この湖はエルダナの時間と空間に関わる不思議な力を持っているとされていた。

旅の道は、深い森を抜け、広大な草原を越えるものだった。途中、1つの村に立ち寄った。この村は小さくて穏やかで、周囲は豊かな自然に囲まれていた。

僕たちが村に到着した日は、村の人々が開催している小さな祭りの日だった。色とりどりの装飾が村を飾り、音楽と笑顔が空気を満たしていた。

祭りの賑わいの中、僕とリアナは村の広場で地元の人々と交流を始めた。村の中心に立っていたのは、色とりどりの布と花で飾られた大きな木だった。

「これはどういう意味があるのですか?」
僕は好奇心を持って近くの村人に尋ねた。

「ああ、これは豊作を願って毎年行う伝統的な祭りなんだよ。この木に飾り付けをすることで、自然の恵みに感謝を表しているんだ。」
と村の老人が優しく答えた。

リアナは興味深くその木を見つめながら言った。
「それは素敵な習慣ね。自然との共生を大切にしているのがよくわかるわ。」

僕たちは時の湖に向かう途中、魅力的な小さな村に立ち寄った。そこでは手作りの食べ物や工芸品の並ぶ露店が軒を連ねていた。色鮮やかな布製品や繊細な木工芸品、香り高い地元の料理など、村の文化がそこかしこに息づいていた。

露店の1つで、フレッシュなフルーツの山が僕たちの目を引いた。リトは特にその山に興味を示し、小さな足で忍び寄り、リンゴの1つをひょいとつまみ上げた。彼はそのリンゴをくわえ、無邪気な表情で僕たちを見つめた。

「リト、それはダメだよ」と僕は優しく叱りながら、彼にリンゴを返すように促した。しかし、リトはくるんと回転して私たちから距離を取り、小さな歯でリンゴをかじり始めた。彼の愛らしい様子に、僕とリアナも思わず笑顔になった。

露店の店主もリトの行動を見て、笑いながら「そのリンゴは君たちのものだ。」と言って、リトにそのリンゴをプレゼントしてくれた。

「この布はどうやって染めているんですか?」
リアナが布を手に取りながら露店の主に尋ねた。

「それはね、ここに自生する植物から抽出した天然の染料を使っているんだよ。私たちは自然のものを大切にして、それを生活の中に取り入れているんだ。」
露店の主が誇らしげに答えた。

僕たちはその日、多くの村の人々と話をし、彼らの生活や文化について深く学んだ。
夜には、村の広場で開かれた宴に参加し、地元の音楽とダンスに身を任せた。


◇◇◇


翌日、僕たちは村の古老と会う機会を得た。

彼の家は村の端にあり、古い木々に囲まれた静かな場所だった。古老は僕たちを暖かく迎え入れ、茶を入れながらゆっくりと語り始めた。

「この地域には古い伝説があるんだよ。特に時の湖にまつわる話は、子供の頃から聞かされてきたものだ。」

リアナが興味深げに尋ねた。
「時の湖の伝説とはどのようなものなのですか?」

古老は深く息を吸い込んでから答えた。
「時の湖は、時間が異なる流れを持つと言われている。湖の近くでは、過去や未来の断片が見えるとも言われているんだ。」

僕は興味を持って尋ねた。
「その伝説は本当ですか?時間が異なるとは、どういうことですか?」

古老は神秘的な笑みを浮かべた。
「本当かどうかは誰にもわからない。ただ、多くの旅人がその湖で不思議な体験をしたと話している。時間とは不思議なもので、時には私たちの理解を超えることもあるからね。」

リアナは思索的な表情でうなずいた。
「なるほど。それはとても興味深いわ。」

古老はさらに付け加えた。

「しかし、その湖には敬意を払うべきだ。自然の力は時に予測不可能で、私たちはその力を尊重しなければならない。」


◇◇◇


古老の家を後にして翔太は歩きながら考え込んでいた。
最近の魔物や盗賊との遭遇で、自分の力不足を痛感していた。彼はふとリアナに声をかけた。
「リアナ、僕、もっと強くなりたいんだ。僕を鍛えてくれないかな?」

リアナは驚いた顔で翔太を見つめた後、少し考えてから答えた。
「えっ、私が?うーん、戦闘訓練はきついよ。本当にやる気があるの?」

翔太は力強くうなずき目は決意で燃えていた。
「うん。僕は魔法を使えるようになりたいんだ。ただ自分を守るだけじゃなく、魔法の力を自在に操りたい。この異世界で生きるために、魔法が使えればもっと色んなことができるはずだから。」

リアナは翔太の熱い眼差しを感じながら、少し驚いた様子で頷いた。「そうか、本気なんだね。わかった、私が翔太を一人前の魔法使いに育ててみせる。だけど、私の訓練は容赦ないから、覚悟しておいてね。」

翔太は元気よく応えた。「うん!何でもやるよ。どうか厳しく指導してください。」彼の目には、新しい世界での挑戦への興奮が満ち溢れていた。

リトは二人のやり取りを見守りながら、わくわくした様子で彼らの隣に座った。これから始まる特訓への期待感が、キャンプファイヤーの明かりに照らされていた。
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