星の涙

ならん

文字の大きさ
上 下
7 / 23

忘れられた城

しおりを挟む
旅の次の目的地は、図書館で見つけた古地図に記されていた「忘れられた城」。
その城はエルダナの北方に位置し、古い伝説や神秘に包まれているとされていた。

谷を出ると、広大な森を抜け、山々を越える道を選んだ。

その道は険しい山々を越えるもので、遠くには雄大な山脈が連なっていた。
山道は狭く、ところどころで岩が崩れかけていた。僕たちは慎重に一歩一歩を踏みしめながら進んだ。風は強く、時には僕たちを揺さぶるほどだったが、リトは勇敢にもその先を歩み続けた。

途中、高い崖の上から壮大な景色が広がっていた。雲が山々を覆い、その間からは太陽の光が差し込んでいた。僕はその美しさに立ち止まり、自然の壮大さに改めて圧倒された。
山の中では、様々な野生動物に遭遇した。鹿や山羊が遠くに見え、彼らは僕たちの姿に好奇心を示しながらも、静かにその場を去っていった。リトはこれらの動物たちに興味深く目を向け、時には軽く鼻を鳴らしていた。

山道を進む中、僕たちは小さな清流を見つけた。その水は冷たく、清らかで、僕たちはその水で喉を潤し、少しの休息を取った。リトは水の中で遊ぶように、足を浸していた。
夕暮れ時には、山の中腹にある平らな場所でキャンプを張った。夜は静かで、星々が空を埋め尽くしていた。キャンプファイヤーの周りに座り、僕たちは今日一日の旅を振り返り、明日の忘れられた城への到着に思いを馳せた。


◇◇◇


険しい山々を越えた後、僕とリトは一軒の小さな村にたどり着いた。山の自然に囲まれたこの村は、静かで平和な雰囲気を漂わせていた。村人たちは僕たちを温かく迎え入れ、夜を過ごす場所を提供してくれた。
夕食時、僕たちは地元の人々と一緒に食卓を囲んだ。彼らは地元の食材で作られた料理を振る舞ってくれ、山の新鮮な空気と自然の恵みが詰まった味わい深い食事を楽しんだ。

食事の後、村人たちは僕たちに忘れられた城の話をしてくれた。一部の村人は、城がかつて強大な力を持つ王族の居城だったと語った。彼らの言葉には古い伝説と敬意が込められていた。
また、別の村人は、城が長い間放置され、今では幽霊が住んでいるという不気味な伝説を話してくれた。その話には、少し身震いするような恐ろしさがあったが、同時に冒険心を刺激されるような興奮も感じた。

僕はこれらの話を聞きながら、忘れられた城への好奇心がさらに高まっていった。リトも村人たちの話に耳を傾け、時折、不思議そうに首を傾げていた。


◇◇◇


翌朝、僕は忘れられた城の遺跡に到達した。城は草木に覆われ、長い年月を経た痕跡が随所に見受けられた。城門をくぐると、かつての栄華と現在の寂寥感が混在する不思議な空気に包まれた。

彼は城内を慎重に探索し始めた。廊下は迷路のように入り組んでおり、彼は方向を見失いそうになりながらも、好奇心を抑えきれずに進み続けた。城の壁には、古代の戦いや神話の物語を描いた壁画が残っており、翔太はそれらを1つ1つ丁寧に眺めた。壁画の中には、星の涙に似た宝石が描かれているものもあり、彼の興味を引いた。

僕はその壁画に描かれた王と宝石について詳しく調べ始めた。壁画には、王が持つ宝石は国の繁栄と災厄の両面を司る力を持っていたことが示唆されていた。

城の内部には、豪華な彫刻が施された広間、古い書物が並ぶ図書室、そして荒れ果てた庭園があった。各部屋には、かつての王族の生活の様子を想像させる遺物が残されていた。翔太はこれらの遺物を慎重に調べ、古代の王族に思いを馳せた。

翔太とリトが忘れられた城の暗い回廊を進んでいた時、突然、不気味な音が響き渡った。廃墟のような城の壁からは、幽かな光が漏れ、その中から、霧のように漂うお化けの姿が現れた。

お化けは、不定形の影のような存在で、静かに彼らの方へ漂ってきた。翔太はその幽霊のような姿に一瞬固まったが、すぐに恐怖が彼を襲った。「リト、急ぐんだ!」彼は声を上げ、リトを促した。

リトもまた、不安な鳴き声を上げながら、翔太と共に走り始めた。彼らは廊下を駆け抜け、曲がり角を曲がり、お化けから逃れようとした。城内は迷宮のように複雑で、どこに逃げればいいのか分からなかった。

翔太とリトは、お化けの恐ろしい存在から逃れるために必死で走り続けた。彼らの背後で、お化けの不気味な音と感触がいよいよ近づいてきていた。翔太は恐怖を抑えつつ、なんとか逃げ道を見つけようとあちこちを見渡した。

深い庭園を進む中、彼の目に隠された地下通路の入口が飛び込んできた。通路は暗く、曲がりくねっていたが、彼は迷うことなくその中に飛び込んだ。リトも彼に続いて通路に入り、二人はお化けからの逃走を続けた。

地下通路は狭くて暗く、足元も不安定だったが、翔太はどうにか前に進んだ。通路は迷宮のように複雑で、彼らは何度も方向を変えながら進んだ。後ろからはお化けの音が聞こえなくなり、徐々に安心感が彼らを包んだ。

通路の奥に神秘的な光に照らされた小さな部屋が現れた。部屋には何か特別な空気が漂っており、翔太はそこに隠された何か重要なものを感じ取った。彼らはお化けからの追跡を振り切ることに成功し、安堵の息をついた。

その部屋には、古い書物や王族の遺品が保管されており、そこで僕は古く黄ばんだ日記を見つけた。その日記は、かつてこの城を治めた王によって書かれたものだったが、その内容は謎に満ちていた。

日記のページをめくると、星の涙に関する断片的な言及があった。しかし、王がその力について何を知っていたのか、何を感じていたのかは明確には書かれていなかった。記述は極めて控えめで、何かを暗示するような、具体的なことは何も語られていない。

「星の涙にはある種の意味がある」というような曖昧な言葉が散見されるにとどまり、王がそれに何を感じ、どう対処したのかについては詳細が欠けていた。

日記の最後のページは、特に不確かな感情を表していた。そこには、「我々の知るべきではない事かもしれない」という言葉が書かれているだけだった。それは王が何か重要なことを悟ったかのようでありながら、具体的な内容は何1つ明かされていなかった。


◇◇◇


翔太が忘れられた城の内部を探索している間、彼に気づかれないように、一人の女性が陰から彼を静かに見守っていた。彼女は暗い廊下の影に隠れ、翔太の動きを注意深く観察していた。

女性は長い髪を束ね、身軽な服装をしており、彼女の表情には慎重さと好奇心が見て取れた。彼女の瞳は翔太の姿に釘付けになり、彼が城の謎を解き明かそうとする様子を興味深く見つめていた。

彼女は時折、壁に掛かっている壁画や彫刻に目をやり、その意味や価値を推測している様子だった。しかし、彼女の最大の関心は明らかに翔太と彼が持っている「星の涙」に向けられていた。

翔太が文書を見つけ、それを興奮して読み始めたとき、女性は一歩前に出て、彼の反応をさらに詳しく観察した。彼女の顔には、何かを企んでいるかのような微妙な表情が浮かんでいた。

翔太が文書に夢中になっている間、女性はそっと彼に近づき、彼の様子をさらに詳しく観察しようとした。しかし、彼女は自分の存在を明かすことなく、ただ静かに彼の動きを追い続けた。
しおりを挟む

処理中です...