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第十四章 過去と現在の対決!

第百四話 光宮マモル VS セイレーン

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 キメラカンパニーの男性科学者は、剣をオレの喉元に突き付け、動きを封じた気になっている。

そして、平衡感覚を失い、冷菓はいつもの様な戦闘ができていない。
このままでは、セイレーンとかいう化け物に負けてしまう。

「くっくっく、用心棒ともあろう人が情けないですね。
自分の不利な状況になったら、防戦一方ですか? 

所詮、牙と爪の折られたライオンなど、可愛い猫ちゃんと言ったところでしょうか? 
手も足も出ないじゃないですか!」

「くう、時間を稼いでいるというのに、彼女は寒くならないというのですか? 
氷に囲まれたこの空間ならば、もうとっくに寒くて動きが鈍るはずなのに……」

冷菓は、自分の氷攻撃が当たらないのを確認すると、部屋全体を吹雪で攻撃した。
壁と天井は凍り付き、温度はマイナス十度に達していた。

それにもかかわらず、セイレーンは平気で飛び回っている。
速度も大して変ってはいない。

「くっくっく、科学者を舐めないでください。
鳥類の中には、南極の様な極寒でも生活できる生物がいるでしょう。
例えば、可愛いペンギンとか……。

それらの特徴を観察し、極寒地帯でも戦えるように研究したのです。
それにより、数十時間はどんな環境でも戦い続ける事が出来るのですよ。

たぶん、貴女の方がスタミナ切れを起こすでしょうね。言ったでしょう? 
我々が欲しいのは、完璧な生物だと……」

「くっ、私以上の恒温機能を身に付けている敵がいるとは……」

「ふふ、我々の素晴らしさと美しさがようやく分かったようね♡ 
じゃあ、御休みなさいね!」

セイレーンは、冷菓の背中を狙い、トドメの一撃をお見舞いする。
白い背中に大きな傷ができ、背中全体が赤く染まり始めた。
誰がどう見てももう戦える状況ではない。

セイレーンは攻撃をやめ、倒れた冷菓を見下ろしていた。
男性研究員は、冷菓が負けたのを確認し、興奮しながらこう言う。

「おお、セイレーンの勝ちだ! 
勝つ事はあらかじめ予測していましたが、わずかに負ける危険もあったので心配していましたが、蓋を開けてみたらなんてことはない。我々の圧勝ですか。

まあ、大切なモルモットだ。背中の傷は、我々が治療しますよ。
キメラ化のついでにね!」

冷菓は傷を負って倒れたが、意識はまだ残っていた。
立ち上がろうと両手を付いてもがいている。

「まだ負けていませんよ」

「ふん、呆れた執念だね。なら、死体になってみるかい? 
我々は、アンデッドの研究もしている。上手く行けばまた会えるわよ!」

無抵抗に近い冷菓を、セイレーンは容赦なく襲おうとしていた。
オレは、危険な空気を感じ取り、冷菓を助けようとする。
しかし、男性研究員が邪魔しようとしていた。

「どこへ行こうというのです? ちょっとでも動けば、あなたも死体になりますよ?」

「冷菓を手当てする。邪魔をするな!」

「そうはいきません。やはり、二人とも死体になってもらいましょうかね?」

男性研究員が、オレに剣を刺そうとすると、刃先が空間を飛び抜け、男性研究員の背中を貫いた。オレがワープ能力を使い、刃先だけを男性研究員の真後ろに移動させたのだ。

「ふん、他人の痛みを知らない者など、自分の攻撃で傷付くが良い!」

慌てふためく男性研究員を尻目に、オレは冷菓を救助する為に行動する。
姫状瑠璃は、オレの実力を信頼してなのか、この状況下でも冷静にお茶を飲んでいた。
オレのワープ能力の使い方を淡々と語る。

「ふー、さすがはマモルですね。
火薬の爆発力をエネルギーとし、自由自在にワープ能力を使いこなすとは……。
マモルに任せておけば、ママは大丈夫ですよ。悟、御寿司を食べましょう。はい、アーン」

「うん、パパ頑張って!」

呑気な二人を後にし、今にも冷菓を攻撃しようとしているセイレーンを止める。
セイレーンは、男性研究員の叫び声を聞き、オレの攻撃に備える。
研究所のガラスごとオレを貫こうと、羽毛の刃で攻撃してきた。

ピンポイントでオレだけを攻撃してきたが、オレはナイフを使い、全ての攻撃を受け止めていた。ガラスだけが、容赦なく無残に砕け散っている。

「さすがは、光宮マモル。戦闘ですんなりと勝たせてくれるわけはありませんか。
なら、光宮冷菓同様に、私の美声で狂ってもらいましょう!」

「ふん、やってみろよ!」

セイレーンは、標的をオレに変更して、冷菓への攻撃をやめた。
冷菓は、背中の傷が酷いのか、動く事さえできない。
セイレーンは、オレに近付きながら飛行し、歌声を出し始める。
本人は気付いていないようだが、すでにその攻撃は役立たずに成っていた。

「どうです? そろそろ気分が悪くなってきたのでは?」

「いや、全く! お前はどうなんだ?」

「あれ、そう言えば声が変な気が……」

セイレーンは、声の調子がおかしくなった事で違和感を覚えた。
何度も発声練習をするが、元の声に戻らない。
まるで、匿名希望者の証言の様に声が分かり辛くなっていた。
男性の声なのか、女性の声なのかも解らない。

「これは、この声は……」

「そう、ヘリウムガスを吸ったような声だろう。
小学生でも知っている科学の実験さ。機械の音ならともかく、生物で声を発生しようとしたのが仇になったな。超音波を操る美声も、その声じゃあ出せないだろう?」

「くっ、いつの間に……」

「オレの次元能力は、ワープ能力だ。
研究所にあったヘリウムガスを貸してもらい、お前に吹きかけたのさ。
なかなかびっくりしただろう?」

「くっそ! だが、戦闘力では私の方がはるかに上のはず……。
制空権という圧倒的強さをじっくり味わいなさい!」

セイレーンは、オレを爪で引き裂こうと急接近するが、一瞬にして研究所の壁に貼り付けになった。オレがワープ能力を使い、ナイフで攻撃したのだ。

「馬鹿な! こんな事が……」

「ふん、もう身動きすらとれまい。
一応、女性なので手加減はしておいた。
そこで、自分の無力を噛み締めるが良い!」

ワープ能力がチートすぎる為、姫状瑠璃が悟に説明する。
おそらくセイレーンも何が起こったのか分かっていないだろう。

「さすがは、マモルですね。
まず、最初のヘリウムガス攻撃は、マモルの持っていた火薬を爆発させ、そのエネルギーを使いワープしたのです。

数メートルほどならワープ能力で移動する事も可能ですが、体の一部分だけをワープした事で、エネルギーを節約したのです。そして、ヘリウムガスだけを相手の口元にワープさせた。一見簡単ですが、この次元能力を操るのは、相当難しいのです。

そして、ナイフで磔にした攻撃ですが、火薬の爆発力を使い、相手を攻撃するナイフを用いています。爆発の一部を推進力に使い、残りをワープ能力に用いています。それによって、セイレーンが壁に引き寄せられるように磔になったのです。

肉体を攻撃して、トドメを刺す事も出来ましたが、マモルの手加減により生かされましたね」

「パパ、すごい!」

悟は、オレを尊敬の目で見ていた。
息子の能力が高くなるにつれて、尊敬のまなざしは消えていく。
強い父親でいるのもかなり大変だ。

十代前はまだ良いが、十五歳くらいになるといろいろな部分で息子の方が上手くできるようになってしまう。
老化とかもあるし、休みの日に努力するのも辛い。

若い皆さん、御父さんが役立たずだと感じても、やさしく接してあげてください。
すでに、かなり努力しているんです。

セイレーンは、ヘリウムガスを吸った事で一時的に、歌の攻撃ができないでいるだけだった。その為、最後に催眠ガスで眠らせる。まだ男性研究員が無事なのだ。
油断するわけにはいかない!
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