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第十一章 金(ゴールド)と星(ランジェリー)

第七十九話 星熊童子の次元能力!

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 オレ達は、警察の目を盗み、宝石店に侵入する。
警察官など、オレ達の前にはいないにも等しい障害だった。
警察官数人を眠らせ、宝石のある部屋で待機する。

これ以上は、赤外線センサーなども設置されている為、素人には手が出せない領域だった。星熊童子が現れ、宝石を盗むのを黙って静観する。
そして、星熊童子が宝石を手に入れた時を狙うのだ。

宝石を盗むというスキルが無い以上、星熊童子を襲うのがセオリーだった。
たとえ星熊童子が変装しようと、ゆたかのエロベアソードにより一瞬で判断する事が出来る。一度は失敗しているが、不意を突けば何とかなるかもしれない。

オレ達はそう思い、ゆたかの武器に期待をかける。
仮に、失敗しても、星熊童子と特定できるので、次元能力を解明すれば勝機は出て来るのだ。
オレ達は、星熊童子が現れるのを待った。
目の前に、問題の宝石『真紅のルビー』が待ちくたびれている様だ。

 星熊童子はヘリコプターを使い、宝石店の手前まで来る。
さすがに、人気だけあって、登場方法も派手だ。
警察は大勢いて警戒しているが、星熊童子の鞭捌きに翻弄されている。

地面に降り立つかと思えば、鞭を使い、建物の一部に巻き付かせる事によって空中に停止したり、ブランコの様に高低差を利用して建物の中に入る。
ガラスを割って入るかと思いきや、音も無く静かに建物へ侵入した。

派手な登場から、音の無く侵入する様は、大勢の警官からは消えた様に見えた事だろう。彼女を見失い、宝石の前へ向かう。
しかし、そのタイミングでは、致命的な遅さになるのだ。

相手の行動をいち早く読み、先手を打ち続ける事が泥棒を捕らえる唯一の方法なのだ。
たとえ先手を取っても、予想外の事で逆転されるなら、泥棒逮捕は不可能なのだ。
宝石の前で待ち構え、捕らえようとする警官も数人いたが、彼女の鞭によって一瞬で気絶していた。
オレ達は気配を消し、彼女が宝石を盗むのを待つ。

ここでも登場するタイミングが鍵なのだ。
彼女が宝石を手にしていない内に出るなら、彼女に勝っても宝石は手に入らない。
逆に、彼女が宝石を手にして向かい打つタイミングを誤れば逃げられてしまう。

一秒や二秒が勝敗を左右する戦いが続いていた。
星熊童子は、あらかじめ用意していた鍵を使い、宝石を覆っているケースを開ける。
本来は、様々な防犯対策がしてあるにもかかわらず、難無く鍵を開けて宝石を取り出した。
オレ達には、本物かも分からないが、プロの彼女ならば、それが本物かどうかも分かるのだ。

彼女が鍵を開け、宝石を手にしたのを確認した真槍ちゃんは、槍を使い彼女の手を攻撃した。
星熊童子は、手の甲に小さな怪我を負うが、槍の一撃を避ける。
しかし、避けるのが精一杯で、宝石を床に落としてしまった。
オレ達は、それを奪い逃走する。

「痛、やってくれるじゃないですか!」

星熊童子は、オレ達を追おうとするが、その前にゆたかが立ち塞がっていた。
エロベアソードが負けた事へのリベンジも兼ねての事だろう。
服を切り裂く気満々だった。

オレ達は、三人いる。こうして一人を妨害相手にする事で、星熊童子の追跡を阻む作戦なのだ。
星熊童子は、慌てることなくゆっくり語る。

「ふーん、その変な刀のリベンジのつもりですか? 
その刀では、私の服を切り裂く事はできませんよ!」

星熊童子の挑発を受けたゆたかは、第三の秘剣『もう一つの意志』を使い、エロベアと共に服を切り裂こうとするが、どちらの武器も一瞬にして刃がボロボロになった。
普通の武器では、星熊童子を倒す事はできない。

ゆたかは二度目の敗北を知り、呆然と星熊童子が追跡するのを許した。
エロベアも身体の刃が壊れ、異常な動きをする機械と化していた。
星熊童子は、ゆたかを気にすることなく、オレ達を追跡する。

ゆたかが妨害できなかった為、あまり逃走の時間を稼ぐ事が出来なかった。
すぐに、オレ達の視界に星熊童子が現れる。
これが、素人とプロの実力の差だった。

「捉えたわ! 観念して、宝石を渡しなさい」

星熊童子は、宝石を持つ真槍ちゃんに狙いを集中する。
鞭を使い、手の甲や脚に鞭の痕が付き始めた。
これでは、真槍ちゃんが傷者になってしまう。

「星熊童子、オレが相手だ!」

オレは、真槍ちゃんを逃がし、星熊童子と対決する。
オレが彼女の次元能力を解明していなければ、ゆたかの二の舞になってしまうのだ。
星熊童子は、オレにターゲットを変え、攻撃し始めた。
鞭による攻撃を、子狐丸を使い防ぐ。その間に、真槍ちゃんの姿は見えなくなった。

「良いのかよ、真槍ちゃんを追わなくても。
これ以上離されたら、見失っちゃうかもしれないぜ?」

「ご心配なく。
あなた達が三人で宝石を盗もうとするように、私にも金熊童子がいますからね。
彼が、姫野真槍の居場所を追跡し続けています。
あらかじめ、彼女とあなたの居場所は発見できるように発信機を取り付けてありますからね。
念には念を、というわけです」

彼女は余裕の笑みを浮かべる。
その表情で、その言葉が嘘でない事を悟る。

「良かったよ。あんたとは戦いたいと思っていたんだ。
本来は、女性を傷付けるのは嫌いだが、あんたには負けた借りがあるからね。
ここで捕らえて、借りを返させてもらうさ!」

「ふふ、そう簡単に行くほど、女の子の扱いは軽い物ではありませんよ? 
覚悟してくださいね!」

星熊童子は、真剣な顔になり、鞭を構える。
もはや遊びの時間は終わり、真剣勝負へ移った証拠だった。

星熊童子は、鞭でオレを攻撃する。
オレは、盾を使って鞭を防ぐ。
すると、星熊童子は毛糸の様な糸をオレの脚元に投げつけて来た。

毛糸は、針金の様に真っ直ぐ伸びたままオレの脚元に来るが、オレの脚に当たるとただの毛糸の様に脚に巻き付いて来る。
毛糸の先端に重りが取り付けてあり、オレの脚を絡め取った。

ただの毛糸と油断したオレは、警戒する事無く毛糸をそのままにする。
毛糸は緩くオレの脚に巻き付いたままだった。
星熊童子は、とたんにため息を吐き、こう言う。

「ふー、女の子だと思って油断しましたね。
これで、私は姫野真槍ちゃんを追う事が出来ますよ」

彼女がオレを無視して逃走しようとする。
オレは追い掛けようとするが、脚に絡み付いた毛糸が針金の様に硬くなっていた。
オレは倒れ込み、追跡する事が出来ない。

「じゃあね! 時間があったら相手をしてあげるわ!」

星熊童子は真槍ちゃんを追跡しようと走るが、所詮は女の脚だ。
オレの方が速く追いついてしまう。星熊童子は驚いた様な顔をした。

「どうして、こんなに早く追い付いて来たのかしら?」

星熊童子は、オレから逃げられないと悟り、また交戦する事に切り換えた。
オレは、彼女が立ち止ると説明を開始する。

「少しは焦りを感じているようだな。あんたの攻撃も罠も詰めが甘いぜ! 
オレの脚に毛糸を絡み付かせて足止めする方法は見事だが、オレはあんたの次元能力を多少見抜いていた。

だから、ちょっと大股で歩いていたんだ。
あんたの次元能力は、物の硬さを操る能力だ。
鞭を変幻自在の鉄の棒に変える、毛糸を針金に変える能力と言ったところかな? 

ゆたかのエロベアソードが効かなかったのも、この能力を使っていたからだ。
服を鋼鉄に変えてしまえば、エロベアソードでも切り裂けない。
服を切るほど鋭いという事は、逆にいえば相当繊細な鋭さという事だ。

人体はともかく鉄を切ろうとすれば、あの様にボロボロになる。
鉄を切るには、ある程度の強度も必要だからね。
エロベアソードは、鋭さを追求し過ぎた結果、本体自体が脆くなってしまったのさ。

本来は、人間の着ている服を切る為の物。しなやかさと鋭さが仇となったのさ。
オレも、服を切るという目的からあんたが傷付かない身体と勘違いしたが、実際には真槍ちゃんの槍で手の甲を怪我した。それは、あんたが人体を硬化出来ない証拠だ!」

「つまり、私の身体自身を攻撃すれば、あなたの勝ちという事になるのかしら?」

「まあ、そう言う事だ! 動きを止める場所を攻撃すれば、あんたの負けだ!」

オレは、星熊童子の脚を狙って攻撃する。
子狐丸に、鉄を切りつけたような感触を感じた。

「油断した! ストッキングを硬化して、オレの刃を防ぐとは……」

オレは、カウンターの鞭をまともに受ける。顔から血が流れていた。
オレもダメージを受けているが、星熊童子も焦っている証拠だった。
星熊童子は、不敵にオレに近付きながら言う。

「ふふ、賢い坊やね。そう、私の次元能力は、あらゆる物質を硬質化する事よ。
元々の金属類には応用が効かないけどね。私の全身は、全て服で覆われているわ。
それで全ての攻撃を防ぐ事が出来る。
でも、首と顔は別。そこを狙われたら、一巻の終わりよ。
私を止めたければ、容赦なくそこを攻撃する事ね」

星熊童子は、オレに無防備な体勢を見せる。
果たして、降参したのか、それとも罠なのだろうか?
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