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第四章 白と黒の遭遇

第四章のプロローグ

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 求人広告は、真面目に仕事を捜そうとしている人にはとても便利だ。
中には、優良企業が張り出した給料高額、住み込みの賄い付きという仕事もある。
新しく越して来た女子高生や大学生には嬉しい仕事かもしれない。
しかし、注意して欲しい。
中には犯罪者や危険人物も仕事の募集をかけているのだから……。

 注意:社会人・山口美香の視点で物語は進みます。
素人なので、気になった点があったらアドバイスしてください。

光宮守(こうみやまもる)の子供ができて数年後、ある求人誌に求人の広告が張り出されていた。
とある社会人、山口美香(やまぐちみか)も高額で住み込み・賄い付きの仕事を捜していると、ある広告を見付ける。

 高級住宅地に住み込みで、賄い付き。
更に、高額の給料を支給。学生アルバイト大歓迎!
家の掃除や料理などの簡単なお仕事です!

 高校を卒業し、良い仕事を捜していた彼女には、魅力的な条件の仕事に思えた。
数度の面接に失敗している為、仕事内容を気にしている場合ではないのだ。

「うーん、メイド服でお仕事ってことは、レストランとか、メイドカフェの仕事かな? 
実際、バイトとかした事もないから不安なんだよね。
接客とかうまくできるかな……」

 彼女は、地元で就職活動をしたものの、うまく仕事先が決まらず、高校卒業後もうまくいかない。
さすがに田舎暮らしでは思うような仕事も決まらないと考え、少し遠くの都市に住み込みの仕事を捜していた。
二、三件ほどは面接まで行ったものの、面接官に気にいられなかったのか落とされている。

両親も自分のしたい事をしなさいと理解してくれるが、親の協力が得られないのでコネは無いに等しい。
何とか良い所に就職して、両親を安心させてあげたかった。
何より、自分でも出来る仕事があるんだと、自信を持って社会に出たかった。
そのため、自分の決めた範囲内であれば、どんどん電話をかけて面接する。
その日も、希望を抱いて面接先へ向かう。

 山口美香がやって来たのは、西洋風の大豪邸だった。
レストランも出来そうだが、明らかに厨房の仕事やウエイトレスではない。
大きなお屋敷で、旅館をしている様子もない。
おそらく住み込みのメイドを募集しているのだろう。

「まさか、今時メイドや執事を募集しているのか? 
どれほどお金持ちだよ……」

 そうは言ったが、やはりお金持ちの家には興味がある。
たとえここで働かなかったとしても、仕事を紹介してもらえる伝手があるかもしれない。
それに、十行自体もいないのか、割と静かだ。

仕事のライバルがあまりいないなら、雇ってもらえる可能性は高い。
ここで働けるのなら、もしかしたら毎日高級料理食べ放題なのかもしれないのだ。
はやる気持ちを押さえ、顔をしゃっきりとして門のベルを押した。

面接用のスーツとか用意できなかったので、高校の制服をそのまま着て来た。
これが唯一の正装なのだ。
お金持ちのボンボンにこの苦労を理解させ、面接に合格できるのだろうか?

「もしかしたら、西洋の貴族とかが日本に来て生活しているのかもな。
それなら、この仕事も悪くは無いのかも……」

海外でメイドを雇うというのは普通の事だが、日本ではあまり聞かない。
従業員の給料も高いし、盗難の危険もあるためだ。
親族や友人ならともかく、赤の他人を自分の家に住まわせようという感覚は無い。

雇い主が外国人だった場合、英語が必須条件となる。
しかし、求人広告にはそんな事、一言も書いてなかった。
期待と不安を抱えつつ、人が出て来るのを待つ。

山口美香は英語が苦手だったというより、就職できていないことから分かるかもしれないが、高校の成績は全く良くなかった。
かなり努力したのに平均点以下という悲しい現実を突き付けられていたのだ。

体育と先生の評価はいいものの、英語は苦手教科の一つだった。
まあ、日本に住んでいるんだから日本語も出来るだろ、と開き直って考えていた。
しばらくすると、黒いゴスロリ風の格好をした金髪美人が出迎えた。
黒いゴスロリ風の服を着た女性が優雅に傘をさして近付いて来る。

「ようこそ! 私がこの屋敷のオーナーです。
黒沢エレンと申します。では、こちらで面接いたします。
どうぞ付いて来てください」

「はあ、よろしくお願いします」

山口美香は不安になりがら、付いていく。
大きなお屋敷だが、使用人はごく少数の様だ。
辺りを見回しても誰にも出会わない。

「ふふふ、ここは私の研究所になっていますので、研究員以外はいないんですよ。
研究員と言っても、私と主人と娘の三人だけですけど……。
娘はまだ二十代にも満たない子供ですから研究員とは呼べず、いろいろ家事を覚えさせていますよ。

ただ、掃除が苦手で苦労しているようです。
あなたには将来、彼女の世話をしてもらいたいものですね。
私や主人は、忙しくて構ってやれないもので……」

「はあ、でも、家族の方が世話をした方が娘さんも喜ぶのでは? 
確かに、親子より第三者の方が仲良くできる時もありますが、親と子の絆は比べ物にならないほど深いものですから……。
空いた時間には、娘さんを構ってあげた方が良いですよ。
子供に必要なのは、親と一緒に過ごす時間ですから」

「まあ、素晴らしい教養ですね。
確かに、親子の過ごす時間は大切ですわね。
でも、私にはもっと大切な物があるのです。

若い女性なら、いつまでも美しく若若しくいたいものでしょう。
その夢を実現できかけているのです。後、数日で完成します。
あなたもずっと若く、美しくいたいものでしょう!」

「はあ、それはそうですけど……。でも、親子の時間も大切だと思いますが……」

「ふふふ、そうですね。
あなたは不老長寿を手に入れていないからそう言えるのかもしれませんね。
時間に限りがある。
だから、子供の世話をしなければならない、親子の絆を大切にしなければならないと……。

私と主人は、すでに不老長寿の妙薬を完成させたのです!
そして、娘も遺伝により、自然と長生きする身体になりました。
まだまだ研究の段階ですけど、あなたにもその薬を処方してあげましょう! 
この屋敷で暮らすなら、必須の条件ですよ!」

「はあ、まあ、長生きする事は良い事ですよね。
そうですか、ここはそういう研究をしている場所だったんですか」

「そうです。試作品をすぐに処方してあげましょう! 
実験体が増える事は良い事ですからね!」

エレンさんという女性は、山口美香を一点に見つめ近付いて来た。
金縛りにあったかのごとく山口美香は動けなくなる。
恐怖で身を震わす。まるで、蛇に睨まれたカエルだ。

「何ですか? 何をする気なんですか?」

「ふふふ、実験体になってもらうと言ったはずですよ。
私と娘は、その薬を扱えているのですが、主人がうまく扱えていなくてね。
あなたも同じ身体になってもらい、いろいろデーターを採らせて欲しいのです。
給料は高額にしておきますよ!」

エレンさんは山口美香にフレンチキスをして、謎の薬を飲ませた。

「ふっう……。顔が可愛かったから即採用しちゃったわ♡ 
この薬は、私の体内で生成しているから、どうしてもフレンチキスが必要なのよ。
もしかして初めてだったかしら♡」

「ふっぐ、ひっく……。酷いですよ……」

「ふふふ、ファーストキスを失った事を嘆いている暇はないわよ。
ほら、身体が変化し始めているでしょう? 
何とかしないと、日常生活も送れませんよ♡」

山口美香の身体は、一部が欠けた状態になっていた。
手はあるのに、腕が無くなっている。脚はあるのに、太ももは消し去っている。
そんな状態だった。

「きゃああああ、私の腕と足が……」

身体は無くなっているのに、地面に立つ事は出来ている。
まるで、空中を浮いているような感じになっていた。

「なるほど。あなたは私の娘と同じ風属性の様ね♡ 
火・水・風・土とあるけど、身体が透明に成って消えた様になるのは、風属性の特徴よ。
まあ、属性と言っても優劣があるわけじゃないけどね。
ただ、得意な物に成り変われるってわけよ。
これなら、私の娘とも仲良くなれるわ!」

エレンさんの喜びとは逆に、山口美香は悲しい顔で泣いていた。

「私はどうしたら元の身体になれるんですか? 
このままじゃあ、外に出歩く事も出来ない……」

「ふふふ、不安? 私はそういう可愛い子が困っているのを見るのが好きなの♡ 
ああ、ぞくぞくして来ちゃう♡」

エレンさんは顔を赤くし、恍惚の表情を浮かべる。しばらくすると、こうアドバイスした。

「幻獣のウンディーネやシルフをご存知かしら? 
ウンディーネには魂は無いが、人間と恋をする事で魂を得られるという。
それと同じで、この屋敷から出て、最初に見た男性と両想いになれば、あなたは元の身体に戻れるの。
ただし、その人物に他の恋人や妻がいた場合は、必ず殺さなければならないのよ! 
分かったかしら♡」

女性はしばらく泣き続けていたが、エレンさんが危険人物と悟ると泣くのを止めた。
なんとか、元の姿に戻り、誰かに救助を求めなくては……。
そのため、従う素振りをして言う。

「はい。何とか両想いになって来ます!」

山口美香は、よろけながら屋敷の外に出て行った。
エレンさんの言葉を信じたようだ。
この人以外に薬の使い方が分からない以上、従うほかない。
エレンさんは、山口美香が見えなくなってから微笑を浮かべてこう言う。

「まあ、両想いになれば良いだけなんだけど、戦闘用のデーターも欲しいわね♡ 
しばらく観察してみましょう。
うまく妻子持ちか、彼女のいる男性に会えれば、データー収集としては良い事なんだけど……」

エレンさんは風状態になって、山口美香を追い掛けた。
これから何が起こるのであろうか? 

次からは、主人公(光宮守)視点に戻ります。
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