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第三章 七人の赤い悪魔

第61話 オーガの怒りと本気

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 鈍い音が部屋内に響き渡り、自身が攻撃を喰らった事をアビナは悟る。
しかし、痛みは無い。
死ぬほどの怪我を負うと、痛みすらも感じないのだろうか、と思い辺りを見回す。

すると、赤い魔物の攻撃はアビナに届いておらず、オーガが左腕で止めていた。
アビナはオーガと目が合い、守られた事を悟る。

しかし、オーガは無事ではなく、左肩と腕から血が出ていた。
左腕は骨折しており、動かすことも出来ない。
なぜ、オーガがここにいるのかを不思議に思い、訊こうとするが、アビナの言葉はうまく出て来なかった。

「オノを持った奴と対決していたんじゃ……。どうしてここに?」

アビナを安心させるようにオーガは笑って言う。

「マモルが来た。おかげでお前を守る事ができた……」

「バカ……」

アビナは涙を流していた。

 オーガは怒りを表すように、赤い魔物を睨み付ける。
オーガの恐るべき表情に、赤い魔物でさえたじろぎ、後退りをし始める。
オーガは赤い魔物の棍棒を奪い取る。

右手で赤い魔物の棍棒を持っている手を掴み、握力をかけて握りつぶす。
オーガの握力により、赤い魔物は叫び声を上げ、棍棒を床に落とした。

 オーガも赤い魔物もお互いに傷付き、素手で戦う状態だ。
五分の状態になり、部屋の中で手を掴み合う。
お互いの力量はほぼ互角、どちらかの集中力が無くなった時が勝負の決着を意味する。

オーガは脚の力を使い、右肩を当てるようにして、魔物を押し出そうとしていた。
赤い魔物もオーガの弱点を付き攻撃しようとするが、オーガの攻撃を止めるのが精いっぱいの状態で攻撃できない。

赤い魔物の脚は、徐々に床の中に埋まっていく。
オーガの押す力が強く、脚が折れるのではないか、と思うほどの力をなんとか耐えていた。
もしも、体勢や力加減が変われば、一気に折れていただろう。

赤い魔物が負けを覚悟した瞬間、オーガから力を抜けるのを感じた。
棍棒の一撃は予想以上に強く、オーガを瀕死の状態に追い込んでいたのだ。

オーガは気力で赤い魔物をギリギリまで追い詰めていたが、攻撃が決まらなかったので、力勝負から持久戦に変わっていたのだ。

オーガは魔物を追い詰めたが、出血のショックで気絶していた。

オーガの力が緩んだ瞬間を狙い、赤い魔物は一気にオーガを壁に押し付ける。
オーガの巨体が部屋の壁をまるでウエハースにでもなったかのように簡単にぶち抜いた。
倒れ込むオーガを見て、赤い魔物レッドキャップは勝利の笑みを浮かべていた。

長年ライバルだと思っていた者を倒したからか、それとも邪魔者を排除したからなのか、満面の笑みを浮かべている。

しかし、この勝負はオーガがかなりの不利の状態であった。
赤い魔物は爆発を受けていたとはいえ、オーガほどダメージを受けてはいない。
赤い魔物はオーガを良く見ようと近付くと、アビナが棍棒を振り回し攻撃して来る。

「この、オーガに近づくんじゃない!」

赤い魔物は本来なら、アビナの攻撃など怖くもないのだが、オーガとの対決により脚をかなり疲労していた。
脚が震え、思うように動けない。さっきまでの立場と逆転したのだ。
今度はアビナが赤い魔物を追い詰める。アビナの鈍い一撃が床をへこませる。

アビナはふらふらしながらも棍棒で攻撃して来る。
それでも、今の魔物には脅威だった。

アビナは、赤い魔物がオーガから離れるのを確認すると、火炎魔法で止めを刺そうとする。女というのは時に合理的だ。

男のように勝負をしようなどとはせず、さっさと止めを刺そうという冷酷さも備えているのだ。
アビナの火炎攻撃により、赤い魔物は燃え尽きていった。
その後に、光る牙を残して……。
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