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しおりを挟む目を覚ますと私はベッドの上に居た。
起き上がろうと体に力を入れるけど、何故か体に力が入らない。
自分の体の変化に混乱しながら、近くにメイドが居るのが見えて、メイドに話しかけるけど、ガラガラの声しか出てこなかった。
「エレーナ様!?目覚められたのですね。良うございました。お水をどうぞ」
メイドに体を起こすのを手伝ってもらい、ゆっくりと咽ないように水を飲み、やっとひと息つくことが出来た。
「私はどれぐらい寝ていましたの?」
「エレーナ様がお倒れになられてから5日が経っております。全く目が覚める様子がなかったので、陛下とラッセル様が心配しておりますよ。お二人を呼んできますね」
「ありがとう。お願いするわ」
両親の葬儀から5日が経ってるのね。
夢の中の感覚だと数時間って感じだったから、5日も経ってるなんてビックリするわね。
暫くしてから、ラッセルと伯父様が部屋に飛び込んできた。
2人の目の下には濃い隈が出来ていて、2人にとても心配かけてしまったことを伺える。
私の横に立ったラッセルは涙をポロポロ流して、嗚咽まじりに話し始めた。
「姉上の……バカ野郎~~、姉上まで俺をおいて行くかと思っただろ!!」
甘えん坊ではあるけど、泣く姿を決して人に見せないラッセルをこんなに泣かせてしまったわ。
「ラッセル、伯父様、心配かけてごめんなさい」
「生きた心地がしなかったよ。目を覚まさないから悪い想像ばかりしてしまったよ」
伯父様は普段は隙を見せない人なのに、今の伯父様は別人みたいね。
それほど今回は心配させてしまったのね。
「姉上、1人で何でもかんでも抱え込もうとしないでくれ、俺はまだまだ頼りないかもしれないけど、姉上の隣に堂々と立てるように頑張るから、姉上の主治医が、姉上が倒れたのは心労で精神状態が耐えられなくなったからだって言ってたんだぞ」
そうね。
前世の記憶を思い出す前の私の心は不安で一杯になってた。
「ラッセル心配してくれてありがとう、でも貴方に望むのは立派に成長してくれることだけよ。それまでは私がステファン家を守るのが私の役目なのよ」
ラッセルの安全を保証するためとはいえ、信頼しているラッセルと遠くに離れないといけない、陛下である伯父様に頼り切ることは難しい、そんな状態で1番信頼出来ないロベルトと結婚しないといけないのかと考えたら、私の心は不安で一杯になっていた。
ロベルトと結婚して、ロベルトが我が家で暮らすようになったら、私が心休まる場所はなくなってしまう。
どうにかロベルトと結婚しない方向に持ち込めないかしら?
今の私はロベルトの恋人に嫌がらせをしてないから、断罪は出来ないはずだけど安心は出来ない。
もしも私の予想通りでヒロインが転生者なら何をしてくるか分からない。
ロベルトと結ばれることに満足してくれれば良いけど、もしも小説通りに私が断罪されるのを望んでいたら、冤罪などで貶められる可能性がある。
その為に彼女が何を考えてるのか知る必要があるわね。
「伯父様にお願いしたいことがありますの」
「なんだい?私に出来ることなら何でもしよう」
「王家の影をお2人お借りしたいです」
「何故か聞いてもいいかな?余程の理由がないと流石に難しい」
そうよね。
「王家の影にロベルトとロベルトの恋人の動向を調べて欲しいんです」
内密に調べるなら王家の影ほど頼もしい存在はない。
「婚約破棄する為に不貞の証拠でも集めるのかい?」
「婚約破棄する為に調べてもらうのは確かですけど、不貞の証拠を集めるわけではありません。そんなものを集めても意味ありませんから、私もアランと不貞をしてることになりますから、そのことを言い返されたら反論出来なくなりますから」
自分から墓穴を掘るようなことはしないわ。
ロベルトは気がついてないかもしれないけど、王妃様やロベルトの母親は、私とアランの関係に気が付いてる可能性がある。
それぐらい把握出来てないと、王妃や侯爵夫人なんてやっていけないわ。
「ではどうするつもりなんだい?」
「王家の影には、ロベルトとロベルトの恋人を監視してもらって、2人がおかしい行動をしてたら報告してほしいんです」
「エレーナは2人が何かしてくると思ってるってことかい?」
伯父様は不思議そうに私に聞いてくる。
伯父様の耳には、私と彼らの噂話は入ってきてないのかもしれないわね。
誰が聞いても出鱈目だと分かるから、噂を聞いた人も伯父様に話そうとは思わないわよね。
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