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 ここは何処だろ?

 私は初めて見る場所なのに、何故か懐かしく感じる部屋に佇んでいる。

 部屋の中を見回してると、ドタドタと階段を上ってかる足音が聞こえてきて、私は慌てて隠れる場所を探す。

 今の私って絶対に不法侵入よね?

 公爵家の娘である私が不法侵入で捕まるなんて、家に泥を塗ってしまうわ。

 これから家を継ぐことになるんだから、そんなことが起きては絶対に駄目よ。

 隠れる場所が見つからないまま、部屋のドアが開いてしまう。

 部屋に見慣れない服を着た女の子が2人入ってくる。

 終わった…………

 目を瞑って叫ばれるのを覚悟するけど、何時まで経っても叫び声は聞こえてこない。

 それどころか2人の会話が続いていた。

「ねぇ~、紹介した小説どこまで読んだ?」

「私はロベルトが婚約破棄を決意したところだよ」

「じゃあ終盤に差し掛かってるね。あの小説のアニメが始まったけど見た?」

「まだ見てないよ~~。だって小説より先にアニメが進んだらやだもん」

「大丈夫だよ。アニメの最新話はロベルトがモニカへの気持ちを自覚した場面だから、まだまだだから小説を読み終わるほうが先だよ」

「じゃあ見ようかな?」

 ロベルト?

 モニカ?

 それって私の婚約者と婚約者の恋人と同じ名前だわ。

 偶然でもすごいわね。

 それと2人には私の姿が見えていないみたいだわ。

 何がどうなってるのかしら?

 自分がどこに居てどうなってるのか理解できずに、何処に向かえば帰れるのか分からないから、何かヒントがあるかもしれないと思い2人の観察を続けてると、手のひらサイズの何かを大きい箱に向けると、大きい箱から人の姿が浮かび上がる。

 絵のようだけど絵では決してなかった。

 私の知ってる絵はあんなふうに動いたりはしない。

 ここは一体何なの?

 見たこと無いものばかりあって、見たこと無い服を着てる女の子たち。

 私は不思議な世界に迷い込んでしまったの?

「梨花はもうアニメ見てるんでしょ?」

「見たよ~」

「今回は当たり?小説のイメージ通りだった?たまに外れがあるでしょ」

「私はイメージ通りかな?モニカは可愛いし、ロベルトもカッコいいよ。声も理想通りかも」

「へぇ~、じゃあ、悪役令嬢のエレーナはどうなの?」

 私の名前?

 悪役令嬢って何?

 こんなに偶然って重なるの?

「無駄に美人過ぎかな?悪役令嬢なのに儚げな美人だよ。セクシー系かな?」

「セクシー系なのに儚げな美人なの?ちょっと矛盾してるよね?儚げな美人ってセクシー系とは程遠いイメージなんだけど?」

「それが矛盾してないの!!色白で華奢だから儚げな美人なんだけど、胸は大きいし、左目の下に泣き黒子があるからセクシー系なの」

「あ~~、それなら理解できるかも。泣き黒子があるだけでセクシー系に見えるよね。華奢なのに胸が大きいのもポイントかも」

 …………胸が大きくて、左目の下に泣き黒子。

 名前も一緒で容姿も一致するなんて、どれぐらいの確率なのかしら?

「これこれこれ!!どう?タイトル画面だけでも理想通りじゃない?これで性格も良かったらエレーナもモテると思うんだよね~」

「確かにそうかも~~、でもエレーナの気持わかるな~、自分の婚約者に女がベタベタしてたら、普通は苦言ぐらいは言うよね?虐めや嫌がらせがヤバすぎるけど」

「それはそうかも。でも好きな人に婚約者が居て、婚約者と仲悪いって有名だったら、近付きたいってモニカの気持ちも分かるんだよね~、一般庶民の私には婚約者と仲悪いって言うのが理解できないけど~」

「そうなんだよね。婚約してるならお互いに好きって言うのが普通だもんね。お金持ちとかだとよくある事なのかな?」

 彼女達の話を聞きながら、私は大きい箱にうつる絵から目が離せなくなった。

 箱には私とロベルトとロベルトの恋人の絵が写し出していた。
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