3 / 12
3
しおりを挟むラッセルの安全は確保出来るかもしれないけど、問題はロベルトとの婚約よね。
ロベルトは婚約解消を賛成するかもしれないけど、ロベルトの母親と王妃様は猛反対する可能性がある。
「私とロベルトの婚約解消はどこまで話が進んでたのですか?」
「妻とサレルノ侯爵夫人には、婚約解消の提案をしたところだったんだ。2人はどっち付かずって感じの返答だったな」
「そうなんですか?ラッセルが生まれたことで、跡取りになる可能性が低くなったので賛成すると思ってましたわ。あの人達は私個人を気に入ってる訳ではありませんでしたから」
ロベルトを溺愛してる2人は、ロベルトに近付く異性に良い感情がなかった気がする。
私に対しても棘々しかったのよね。
自分達が私を選んだくせに、私を嫌うって理不尽よね。
ロベルトを公爵家の当主にするために私は必要だけど、異性としては近づいて欲しくないって感じかしら?
「ローラとルークが後継者を公表してなかったから、エレーナとの婚約を完全に切り捨てることは出来なかったんだろうな。もしもエレーナが次期当主に選ばれたら、勿体ないって思ったんだと思う」
そう言うことなのね。
確かにお父様達はまだ次期当主を発表してなかった。
「何で公表しなかったんでしょうか?」
「ラッセルを当主にするのに迷ってたからだろうな」
伯父様はそう言って、ずっと黙って話を聞いてたラッセルの頭を撫でる。
ずっと大人しかったから忘れてたけど、この場にはラッセルも居たのよね。
ラッセルにも私の気持ちを知られてしまったんだわ。
「俺が頼りなかったせいなの?俺が強かったら姉上はアラン兄と結婚出来たの?俺が姉上を不幸にしてたの?」
ラッセルの顔が真っ青になる。
ラッセルは責任感が強いから、自分が許せないのかもしれない。
「ラッセル違うわ!!貴方は何も悪くないの。お父様は貴方に期待をしてたわ。ラッセルが自分の後を継いでくれたら、凄く嬉しいってよく言ってたのよ」
「でも父上は俺を跡取りにするのに迷ってたって」
「確かに迷っては居たよ。ラッセルは感受性豊かだから、もしもこのまま当主になったら、ラッセルが傷つく日が来るんじゃないかって、ルークとローラはとても心配してたんだ」
その気持ちよく分かる。
ラッセルは人の痛みも自分のことのように受け止めることがある。
人としては優しくて良いことだけど、当主になるならその優しさが邪魔になるときもある。
相手のことを考えすぎるせいで、大勢を助けるために1人の者を見捨てないといけない時に、優しすぎるラッセルでは見捨てることが出来ないかもしれない。
当主は時に冷徹じゃないといけない時がある。
「俺の性格では、当主は無理ってことなの?俺は父上みたいな当主になりたい。皆が笑顔で暮らせるように支える人になりたい」
「ラッセルの優しさは人としては長所なのよ。だけど当主になるには短所になってしまう可能性があるの」
でも当主として優しさを捨てて良いわけでもない。
優しい一面が一切ない人に人はついてこない。
当主として、領民に慕われることはないわ。
当主が暴君では絶対に許されない。
領民は恐怖から従うだろうけど、困った時に協力をしてもらえなくなる。
「なら俺はどうしたらいいの?今の俺ではダメなんでしょ?俺は自分のせいで姉上の人生を潰したくない。変わらないといけないなら、俺は今の性格だって変えてみせるよ。俺は男として姉上を守らないといけないんだ」
………この子はいつからこんなに頼もしくなったのかしら?
ちょっと前まで甘えん坊で、私の後ろに隠れて居たような弟だったのに、最近は反抗期で昔みたいに甘えてくれなくなっていたけど、辛いことや寂しい時は私のそばに来て安心してた弟だったのに、弟もちゃんと成長してましたのね。
「ラッセルは偉いな。でも焦る必要はない。人には向き不向きがあるんだ。ラッセルにはまだ5年はあるんだから、それまでにどうするかゆっくり考えなさい」
「それだと姉上をずっと束縛することになります。俺が継ぐかどうかで、姉上の結婚もガラッて変わりますよね?」
確かにラッセルの言うことは間違ってない。
もしも私が跡取りになるなら、婿を適当に選ぶのは良くない。
跡取りになるなら途中で離縁するわけではないから、死ぬまでずっと私の夫になる相手を選ぶ必要がある。
アランを完全に諦める必要もある。
アランの妻になる人と私の夫になる人が、愛人を賛成派なら問題ないかもしれないけど、そんな都合がいい話は少ない。
貴族は愛人が居て当たり前って考えではあるけど、それが内心で思ってるかは別問題ですもの。
逆にラッセルが継ぐまでの中継ぎだったとしても、相手選びは慎重に選ばないといけない。
離縁することは確実になるだろうから、その時に相手がゴネられたら困る。
離縁する時に相手のメリットが必要になる。
大抵は金銭面で何とかなると思うけど、相手が侯爵家の婿って地位に執着する可能性もあるのよね。
どちらを選んでも面倒臭いことに違いはないわね
58
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました
瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。
レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。
そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。
そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。
王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。
「隊長~勉強頑張っているか~?」
「ひひひ……差し入れのお菓子です」
「あ、クッキー!!」
「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」
第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。
そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。
ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。
*小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる